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「これ、ちぇんちぇんむし」
「うんっ……そこ置いて~」
中庭に出たルゥは花には目もくれずに地面をほじくり返している。なお、ちゃんちぇんむしがなんなのかはよく分からないが、ランの見た限りではみみずである。
「なんで子供は虫とか平気なんだろ」
ランは可哀想に引きずり出されたみみずを地面に返してやっていた。
「あれっ、ルゥ?」
そして顔を上げるとルゥの姿が無い。狭い中庭である。そんな馬鹿な、とあたりをキョロキョロする。
「うぉるーっ!」
すると生け垣の向こうからルゥの声がした。どうやら隙間から脱走したらしい。
「まったく……」
ランは中庭の小さな戸を開いて、続く王城の庭に出た。
「あ……」
「ママ、うぉる!」
そして顔をあげると、そこにはウォルがいて、その足元にはルゥがまとわりついていた。
「え、やっぱりルゥくんか!」
「ウォルさん」
ウォルは間抜けな顔でルゥとランの顔をキョロキョロと見比べると、ポンと手を叩いた。
「え、なんでここに居るんです?」
「それは……」
ランはどう説明したらいいかと頭を巡らせた末に、そのまま説明することにした。どっちにしろアレンには事の顛末を説明する義理があるだろうと思ったからだ。
「――という訳で王城で暮らしてるんです」
「はぁ……ルゥくんの父親はレクス様だったのか。私はてっきりアレン様が父親かと」
「すいません」
「謝ることでもないですよ。分かりました。アレン様には私から伝えておきます」
ウォルはそう言って、ランをじっと見つめた。
「大変でしたね」
「いや……」
「もし……何もかも嫌になったら私に声かけてくださいね」
相変わらず温かく包み混むようなウォルの優しさに、ランは少し泣きそうになる。
「ウォルさん……」
居たたまれなくなってランが視線を逸らした、その時だった。
「ラン!」
見ると、レクスが険しい顔をしてこちらを睨んでいた。
「レクス……」
「何をしてる」
「何って……ウォルさんは知り合いで……」
ランがそう説明しようとすると、レクスはウォルとランの間に割って入ってきた。
「誰だお前は」
「……私はウォル。アレン様の部下です」
「アレン……」
その答えに、さらにレクスの眉根が不機嫌そうに寄せられた。
「アレンは無関係だ。部外者は去れ」
「ちょっと! レクス……!」
レクスの威嚇するような強い口調をランは慌てて諫めた。
「ランとルゥに触れるな……!」
「……はい、では私はお暇しますね。ではランさん、また」
「またなど無い!」
去って行くウォルの後ろ姿に、レクスは大声で怒鳴りつけた。
「まったく油断も隙もないな」
「レクス……なんてこと言うんだよ」
ランからしてみれば、三年間アレンとその部下ウォルの手助けがあってこそ暮らして行けたのだ。それを無礼な態度で追い返したレクスの態度は到底許せるものでは無かった。
「そっちがそういう態度なら、オレにも考えがあるからな」
ランはそう言うと、ルゥを抱きかかえて部屋へと戻った。
「うんっ……そこ置いて~」
中庭に出たルゥは花には目もくれずに地面をほじくり返している。なお、ちゃんちぇんむしがなんなのかはよく分からないが、ランの見た限りではみみずである。
「なんで子供は虫とか平気なんだろ」
ランは可哀想に引きずり出されたみみずを地面に返してやっていた。
「あれっ、ルゥ?」
そして顔を上げるとルゥの姿が無い。狭い中庭である。そんな馬鹿な、とあたりをキョロキョロする。
「うぉるーっ!」
すると生け垣の向こうからルゥの声がした。どうやら隙間から脱走したらしい。
「まったく……」
ランは中庭の小さな戸を開いて、続く王城の庭に出た。
「あ……」
「ママ、うぉる!」
そして顔をあげると、そこにはウォルがいて、その足元にはルゥがまとわりついていた。
「え、やっぱりルゥくんか!」
「ウォルさん」
ウォルは間抜けな顔でルゥとランの顔をキョロキョロと見比べると、ポンと手を叩いた。
「え、なんでここに居るんです?」
「それは……」
ランはどう説明したらいいかと頭を巡らせた末に、そのまま説明することにした。どっちにしろアレンには事の顛末を説明する義理があるだろうと思ったからだ。
「――という訳で王城で暮らしてるんです」
「はぁ……ルゥくんの父親はレクス様だったのか。私はてっきりアレン様が父親かと」
「すいません」
「謝ることでもないですよ。分かりました。アレン様には私から伝えておきます」
ウォルはそう言って、ランをじっと見つめた。
「大変でしたね」
「いや……」
「もし……何もかも嫌になったら私に声かけてくださいね」
相変わらず温かく包み混むようなウォルの優しさに、ランは少し泣きそうになる。
「ウォルさん……」
居たたまれなくなってランが視線を逸らした、その時だった。
「ラン!」
見ると、レクスが険しい顔をしてこちらを睨んでいた。
「レクス……」
「何をしてる」
「何って……ウォルさんは知り合いで……」
ランがそう説明しようとすると、レクスはウォルとランの間に割って入ってきた。
「誰だお前は」
「……私はウォル。アレン様の部下です」
「アレン……」
その答えに、さらにレクスの眉根が不機嫌そうに寄せられた。
「アレンは無関係だ。部外者は去れ」
「ちょっと! レクス……!」
レクスの威嚇するような強い口調をランは慌てて諫めた。
「ランとルゥに触れるな……!」
「……はい、では私はお暇しますね。ではランさん、また」
「またなど無い!」
去って行くウォルの後ろ姿に、レクスは大声で怒鳴りつけた。
「まったく油断も隙もないな」
「レクス……なんてこと言うんだよ」
ランからしてみれば、三年間アレンとその部下ウォルの手助けがあってこそ暮らして行けたのだ。それを無礼な態度で追い返したレクスの態度は到底許せるものでは無かった。
「そっちがそういう態度なら、オレにも考えがあるからな」
ランはそう言うと、ルゥを抱きかかえて部屋へと戻った。
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