先生、いい加減諦めてください!

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第19話

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「…鬱陶しいだけだけどな」

 その言い方は、ぶっきらぼうで、いつも通り。

 でも、ほんの少しだけ、照れているようにも見えた。

 目を逸らすタイミングとか、声のトーンとか。

「そんなこと言わずに仲良くしようぜ?」

 そう言って、藤崎くんが陽真の肩を組む。

「なんで俺が」

 そう言って、その手を下ろす。

 拒絶というより、慣れたやり取りのようにも見えた。

 藤崎くんにだけ冷たい態度。
 それは逆に、仲のいい証明にも思えた。

 私にはまだ、そんなふうに誰かとぶつかれる関係がない。

 私には、少しだけ、遠い世界。

「お前と仲良くしてたら、ずっちゃんとも仲良くできるだろ?」

 わ、私…?

 急に名前が出てきて、心臓が一瞬だけ跳ねた。

 本気で私と仲良くなる気なんだろうか。

 仲良くなるって、そんなに簡単なことじゃない。
 私にとっては、時間がかかる。

 少しずつ、少しずつ、距離を測りながら、ようやく心を開けるかどうかの話なのに。

 彼は、まるで扉をノックする前に勝手に開けて入ってくるみたいで。

 その無邪気さが、眩しくて。
 …時々、苦しくなる。

「ていうか、さっきからそのずっちゃんって何なの?」

 紬の声が、空気を少しだけ変えた。
 その問いに、肩の力が少しだけ抜ける。

「可愛くない?」

 返す言葉が見つからなかった。

 分からないけど、すずりんとかもっと呼び方あると思う。

 言わないけど。

「あだ名で呼んでいいのは私だけなんですけど!?」

 紬の声が、少しだけ強くなった。
 その言い方に、思わず笑いそうになった。

 その間に、陽真が小声で声をかけてくる。

「大丈夫?」

 その一言が、まるで空気の隙間に差し込む光みたいだった。

 誰にも聞かれないように、誰にも見られないように、そっと差し出された言葉。

「え?」

 声が少しだけ上ずった。

「グイグイ来るやつ苦手だろ?」

 何も言えなくなった。
 図星だった。

 気づいてくれてたんだ。
 その優しさに、胸の奥がじんわりと温かくなる。

「まぁ、悪い人じゃないと思うから」

 それが、精一杯だった。

 藤崎くんのことを、嫌いなわけじゃない。

 ただ、距離の詰め方が早すぎて、心が追いつかないだけ。

 それに、こんなふうに来るのは今だけ。
 時間が経つと飽きて、なかったことになる。

 誰かが急に近づいてきて、急に離れていく。
 その繰り返しに、もう疲れてしまった。

 それに…
 出会ってしまえば、別れが怖くなる。

 あんな思い、もう二度としたくないから。

 だから、期待しないようにしてる。
 傷つかないように、最初から距離を置いてる。


 でも、陽真の声だけは、
 なぜか、少しだけ信じられる気がした。



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