その魔法が解ける前に

hayama_25

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第26話

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 レストランの入口に立った私は、煌びやかな建物の外観に圧倒されていた。

 胸の奥では緊張がじわじわと広がり、手のひらが汗ばんでいるのが分かる。

 こんな素敵な場所に来るなんて…
 もっと見た目に気を使うべきだったかも。

「行こうか」

 壱馬様の穏やかな声が耳に届き、ハッと我に返った。

「は、はい」

 声が少し震えているのが自分でも分かり、恥ずかしさが胸の奥に広がる。

 緊張してるのがバレてないといいけど…

 足取りはまだ緊張していて、壱馬様の後ろを慎重に歩いていく。

 大きな扉を開けると、中から柔らかな照明と洗練された空気があふれてきて、自分が特別な空間に足を踏み入れたことを感じる。

 ────こんなとこ、初めてきた。


 壱馬様の隣に立つ自分がどこか場違いに思えてしまう。

 彼の背中を追いかけるようにしてレストランの中に入った。

 中に足を踏み入れると、さらに息を呑んだ。

 高い天井、柔らかな照明、大理石の床。

 すべてが完璧で、この場所に自分がいることがどこか夢のように感じられた。

 壱馬様はきっとこんなところに慣れているんだろうな…。

 私はどう見られているんだろう。

 藤原家に恥じないように、最低限の食事マナーは覚えているつもりだ。

 だけど、それを実践する機会はほとんどなかった。だいたい私はお留守番だったから…。

 壱馬様が受付に向かい、レストランの係の方と話を進めている。

 私はその姿を少し離れたところから見つめていた。

 周りの目が気になって仕方ない。
 チラチラ見られている気がする。

 やっぱり、こんな格好できたから馬鹿にされてるんだ。

「こちらへどうぞ」

 穏やかな声で係の方が案内を始めた。
 壱馬様の後に続きながら、静かに足を運ぶ。

 一歩一歩進むたびに、胸の鼓動が速くなる。

 この空間に自分が馴染んでいなさすぎて、今すぐ逃げ出したい衝動を抑えていた。

 席に着くと、係の方が丁寧に椅子を引いてくれる。

 小さな声でありがとうございますとお礼を言いながら、慎重に椅子に腰を下ろす。

 姿勢を正し、壱馬様と目が合わないように少しだけ視線を伏せる。

 ちゃんとした振る舞いをしなきゃ…壱馬様に恥をかかせないように。

 心の中で繰り返しながら、静かに深呼吸をした。

「嫌いな食べ物とかある?」

 一瞬その質問に驚き、気遣いが感じられるその言葉に胸の奥が暖かくなる。

「ないです」

「良かった。それじゃあ予約した通りコースで」

 壱馬様がスタッフに話を進める。

 予約してくださってたんだ。


 すべてが彼の手配で進められていることに感謝を感じながらも、自分が何もできないことに少し申し訳なさを覚えた。


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