ごめんね、足りなかったよね。

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3章 こんな私でも

157話 見舞い

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 俺は本当にノクティス家へ行った。門前払いだったが。俺がしつこく尋ねたら、やっと情報を吐いた。ローレンティアは今怪我を負って、病院にいるとのこと。どんな症状なのか、どの程度の怪我なのかは聞き出せなかった。病院のメモは手に入れたから、早速向かう。
 受付にセレリス総合高等学院の学生証を見せたら、クラスメートとしてお見舞いに行けた。安心して肩の力が抜ける。
 彼女になんて言おう。エレベーターに乗っているほんの数秒、ぼんやりと考え事をした。

Laurentia Side
 私は治療を受けて安静にしていた。どこにも異常はなかったらしい。一応、経過観察のために数日ここにいるとのこと。
 移り変わる外の景色を見ていた。昨日の夜の雪がまだ残っている。気温は少し上がった。防寒具は手放せそうにない。私は、温かい室内でのんびりと過ごした。窓に触れると本当に冷たくて、指先が一瞬で氷になる。慌てて手を引っ込め、毛布にくるまった。寝溜めできたらいいのに。
 受付から連絡が届いた。同じクラスのオーレリアンがお見舞いに来ると。最悪のタイミングだった。頭に包帯が巻かれ、髪は乱れ顔も作っていない。だけど、もう受付は通してしまった。知っている人だからこそ、怖い。今の格好は情けない。恥ずかしい。私の手元にあるものは、くしや鏡くらい。そんなに長い時間ここにいるわけじゃないから、家のものなんて持ってこなかった。コスメ、普段着、アイロン、全部ない。情報を手に入れるスマホすら、持っていない。
 唯一あるのは、編みかけの……。
 ドアをノックする音。今からくしでとかしても遅い。仕方ないから、毛布を引っ張って顔を隠した。
「こんにちは。オーレリアン・ヴェントルです」
「どうぞ」
 一瞬顔を出し、すぐに隠した。ドアが開けられると、オーレリアンが部屋の中に入ってくる。
「……失礼します」
 ……怒っているのかもしれない。私が何時間も返信しなかったから。今日の授業を休んでまで、こんなところに来させたから。合わせる顔がない。今の私は毛布を頭にかぶり、何も見えない。声や香水からオーレリアンだとわかるけれど、それだけ。オーレリアンはしばらく言葉を失っていた。私がハロウィンのお化けみたいに見えたかも。
「ローレンティアで合ってるよね? 俺、オーレリアンだけど……」
 と、恐る恐る尋ねるオーレリアン。コートを脱ぎ、私の横に置いてあった丸椅子に座った。
「合ってるよ! 受付の人から聞いた。突然で驚いたの」
「連絡がなかったから心配で」
「なんでここがわかったの?」
「ティアのお父さんから。最初、連絡しても繋がらなくて。やっと出たと思ったらお父さんだった」
 スマホがここにないということは、家にある。意図しない形で出会い、今は毛布越しに話しているとは、信じられない。
「お父さんから?」
「うん。何があったの?」
「……それが」
 どうやって、言おう。
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