ごめんね、足りなかったよね。

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3章 こんな私でも

161話 最初からこうすれば良かったのよ!

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 妹はそんなことじゃ怯まない。やられたら倍以上にして返す。私はもう打ちのめしたから、今度は邪魔なクラスメートの舌でも縫いつけてやる。そんなふうに強い怒りを込め、両目をかっ開いた。
「お前らの気持ちなんて知ったことか!」
「だから、こうでもしないとわからないでしょ?」
「一度痛い目を見るといいよ」
「随分世間知らずみたいだからね」
「あんたは私たちのこと忘れたみたいだけど、私たちは、あんたにされたことずっと忘れないから」
「恨み続けるから」
「ああ。好きなだけそうしてるといいさ」
「あんたがどれほど嫌われているか、身を以て知るといいわ」
「あははははははははは! それだけ? そんだけのことしかできないの!? 私ひとり相手に? バカらしい。お前らはどうせ虫けらの集まり。数を集めたって無駄よ」
「そう。あなたはそう思うのね」
「何か文句でも?」
「教えてくれてありがとう。あんたはこの世界でだれよりも要らない人間だわ。確認できてよかった」
「あんたを気が済むまで痛めつけられる」
「やってみろよ! お前ら全員殺してやる!」
 どうしてこんなことになってしまったのか。
 クラスメートのほとんどが妹に恨みを抱いていた。乱暴な言動は目に余っただろう。我慢の限界だ。彼女たちも大概だけど、痛みを実感しないと気づけないところまで悪化した妹が格好の的だった。妹はもう人間じゃない。化けの皮を剥いで、舞台上から引きずり下ろさないと、まただれかが犠牲になる。
「見るなよ!」
「どけ!」
 妹は立ち上がり、ひとりの女の子の首をつかむ。すると、横から別の子が現れ、妹を引きはがそうとする。
「きゃあああ!」
「何!?」
「正気じゃない!」
 中には穏便派もいるから、こうした争いに嫌悪感を抱く。血の気の盛んなクラスメート数人と妹の戦い。どちらも容赦せず、想いをぶつける。最初に、妹に話しかけたツインテールの女の子が率先して前に出る。そのほかの子たちは、妹を押さえつけようと必死だった。
「お前を突き落としてやる!」 
「やれるもんなら……!」
 休み時間だったから、寒かったけど窓を開けていた。換気のために。一面の雪。今は、傘の必要はなさそう。本当に優しく降っている。
「早く先生を呼んで!」
「本気で死んじゃいそう!」
 取っ組み合いをする妹とクラスメートたち。妹は形勢逆転を狙って、殴ったり蹴ったりして力で押そうとする。も、数の差に勝てるわけなかった。ツインテールの女の子は、妹の首根っこを引っ張って窓際に持っていく。抵抗する手足は別の人がつかみ、壁にぶつける。妹は押し返したかったけど、足が絡まってコケてしまった。
「……最初からこうすれば良かったのよ!」
 ……妹は床を滑り、真っ逆さまに落ちていく。FPSで鍛えられた動体視力と素早い指の動きが染み付き、シミュレーションも成功するはずだった。
「きゃあああああ!」
「なにするの!?」
 現実はゲームじゃない。妹は負けた。開いていた窓から、雪の上へと落ちていく。
 ここは2階。積もった雪が多少クッションになるけど、何も痛みがないわけじゃない。クラスメートの顔は主に3つに分かれた。暴力への怯え、過去の恨み、そして……無関心。争っていた子たもそうだった。
 先生が駆けつけたころには既に終わっており、授業の始まるチャイムが鳴った。
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