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Ep.20 興味深い
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Ep.20 興味深い
Atlas Side
些細なことがきっかけだった。JHSに進学して、仲良くなったヤツが悪だった、それだけ。彼は色々なことを教えてくれた。酒、煙草、無免許で飲酒運転、違法な薬物、不正な売買、ギャンブル、裏社会の闇(それでも一部)。一通り体験してみて、全部退屈でつまらなかった。どれもくだらない。ハイリスクでローリターン。やる意味がわからない。いっときの楽しみのためだけに、人生を棒に振ってきたヤツを山ほど見てきた。どうせ大人になれば、酒浴び放題煙草吸い放題。依存症になっても、だれも止めてくれない。そして、病気を抱えて苦しんで死ぬだけ。早々に手を引き、少し遠いところから愚かな彼らを眺めていた。いちおう顔だけ出しておいて、文句を言わせないようにして。バカらしいと気付いて、ただ高いところに立ちたかったからかもしれない。
家庭環境は割と平凡で、俺は目立たない人だった。全然泣かない、すぐ寝付く、いい意味で手のかからない子だと言われた。姉と妹ふたりの我が強く、存在感のない真ん中の男の子。両親の目や期待は大したことなくて、朝から夜まで働き、子供に構っている様子などなさそうだった。
(喧嘩か……。今どきそんな人がいるんだな)
ポケットに手を突っ込んで河川敷を歩いているとき、大きな奇声に気がつく。川に近いところで、細身の女子5人が倒れた女子ひとりを囲んでいる。口から血を吹き、頬が真っ赤に腫れた、ひどい状態だ。ぴくりとも動かない。そんなグロテスクな光景を見て、肩に力が入った。てっきり死んだと思っていた。5人は捨て台詞を吐き、バイクに乗ってその場を離れた。それでも気になって、倒れた女子ひとりを見つめる。僅かに睫毛が動き、切り傷だらけの唇が開いた。
「しに……たくない……しに……た……くな……」
落ちてきた死を前にして、ぶつりと言葉が切れた。
俺は何をするべきかわからず、彼女の姿を目に焼き付けて立ち去った。
彼女、ユリシア・ヴェントルの恐ろしさ。驚異の生命力と、生死の渇望、心の奥底にある怒り、裏に隠した虚無。彼女が見せる表情と、仮面の中の本音。
もし、表と裏が重なったらどうなる? 発狂するのか? 手を下すのか? 殻に閉じこもるか?
純粋な、いや……ちょっと変わった興味が湧いた。そんな人見たことがなかったし、暇潰し程度に軽んじていた。
俺は少し勉強して、時間が経って彼女を観察した。一見意味不明な、彼女の言動にも何かしらの意味がある。それがわかれば、興味の正体を紐解けるかもしれない。
適当に路地を歩いていたら、骨が折れる音と罵声が響いた。廃れた階段に上ると、彼女が他校の女子生徒3人をボコボコにした後だった。3本離れた通りで、ひとりで地面にうずくまる。ヘアゴムで髪を高く結ぶと、首筋がよく見えた。
「死んでやる……絶対……死んでやる……」
風が吹いて、涙の粒を運んだ。
泣いている彼女を少し遠くから見て、起伏のない感情が揺れ動くのを感じた。
Atlas Side
些細なことがきっかけだった。JHSに進学して、仲良くなったヤツが悪だった、それだけ。彼は色々なことを教えてくれた。酒、煙草、無免許で飲酒運転、違法な薬物、不正な売買、ギャンブル、裏社会の闇(それでも一部)。一通り体験してみて、全部退屈でつまらなかった。どれもくだらない。ハイリスクでローリターン。やる意味がわからない。いっときの楽しみのためだけに、人生を棒に振ってきたヤツを山ほど見てきた。どうせ大人になれば、酒浴び放題煙草吸い放題。依存症になっても、だれも止めてくれない。そして、病気を抱えて苦しんで死ぬだけ。早々に手を引き、少し遠いところから愚かな彼らを眺めていた。いちおう顔だけ出しておいて、文句を言わせないようにして。バカらしいと気付いて、ただ高いところに立ちたかったからかもしれない。
家庭環境は割と平凡で、俺は目立たない人だった。全然泣かない、すぐ寝付く、いい意味で手のかからない子だと言われた。姉と妹ふたりの我が強く、存在感のない真ん中の男の子。両親の目や期待は大したことなくて、朝から夜まで働き、子供に構っている様子などなさそうだった。
(喧嘩か……。今どきそんな人がいるんだな)
ポケットに手を突っ込んで河川敷を歩いているとき、大きな奇声に気がつく。川に近いところで、細身の女子5人が倒れた女子ひとりを囲んでいる。口から血を吹き、頬が真っ赤に腫れた、ひどい状態だ。ぴくりとも動かない。そんなグロテスクな光景を見て、肩に力が入った。てっきり死んだと思っていた。5人は捨て台詞を吐き、バイクに乗ってその場を離れた。それでも気になって、倒れた女子ひとりを見つめる。僅かに睫毛が動き、切り傷だらけの唇が開いた。
「しに……たくない……しに……た……くな……」
落ちてきた死を前にして、ぶつりと言葉が切れた。
俺は何をするべきかわからず、彼女の姿を目に焼き付けて立ち去った。
彼女、ユリシア・ヴェントルの恐ろしさ。驚異の生命力と、生死の渇望、心の奥底にある怒り、裏に隠した虚無。彼女が見せる表情と、仮面の中の本音。
もし、表と裏が重なったらどうなる? 発狂するのか? 手を下すのか? 殻に閉じこもるか?
純粋な、いや……ちょっと変わった興味が湧いた。そんな人見たことがなかったし、暇潰し程度に軽んじていた。
俺は少し勉強して、時間が経って彼女を観察した。一見意味不明な、彼女の言動にも何かしらの意味がある。それがわかれば、興味の正体を紐解けるかもしれない。
適当に路地を歩いていたら、骨が折れる音と罵声が響いた。廃れた階段に上ると、彼女が他校の女子生徒3人をボコボコにした後だった。3本離れた通りで、ひとりで地面にうずくまる。ヘアゴムで髪を高く結ぶと、首筋がよく見えた。
「死んでやる……絶対……死んでやる……」
風が吹いて、涙の粒を運んだ。
泣いている彼女を少し遠くから見て、起伏のない感情が揺れ動くのを感じた。
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