「最強令嬢、ついに本気を出す!正体バレ!?偽りの令嬢、もう演じない

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第699話 守村人、抱山

第699話 守村人、抱山

車が海市の外れにある村へと入ったのは、一時間後のことだった。

玉霊(ユーレイ)の話によれば――
かつて彼女の主人が自殺した後、すぐには発見されなかったという。

作業場の中は、砕け散った玉石の破片が一面に散乱していた。
その中で、彼女――一株の玉白菜だけが、まるで別世界のように静かに佇んでいた。

やがて、一人の男が血の跡を辿って作業場へと現れた。

そのとき彼女の本体の中を、ひどく濃厚な霊気が巡ったのを感じた。

玉霊はその瞬間に意識を得た。

そして彼女は、その男の声を聞いた。

「私の到着が遅かったようだな……せめて彼への借りを返すとしよう。
もしお前が霊を得て化けることができたなら、花被村へ行け。そこにいる“守村人”が、私のもとへ導いてくれる」

――それからどれほどの時間が経ったのか。

彼女は霊となり、やがて人の姿まで得た。

だがその約束を果たすことなく、先に年似诡(ネン・シーグイ)が彼女の前に現れたのだった。



高級車が村口に入った瞬間、周囲の村人たちの視線が一斉に集まった。

年配の者たちは車に詳しくないが、それでも“高そうなもの”だということは本能的に分かる。

車から降りた姜栩栩(ジャン・シュイシュイ)たちを見て、胡荔枝(フー・リージー)が少し身をすくめ、小声で尋ねた。

「“守村人”って……村長のことですか?直接その人を探せばいいんでしょうか?」

玉霊は分からず視線を向ける。すると姜栩栩が説明した。

「村によっては、“五弊三缺”を背負って生まれる人がいる。
狂っているように見えたり、知恵遅れに見えたりするけど、村のことをすべて分かっている存在」

「その人が村にいるだけで、災いを防ぐことができる。
そういう存在を、昔の人は“守村人”って呼んでいたの」

「村中の家から食事をもらって育てられて、一生その村から出ない」

胡荔枝は半妖ゆえにこういう話に疎く、ようやく納得して頷いた。

「じゃあ、見つけるのは簡単そうですね」

姜栩栩も頷きかけた――そのときだった。



村道の向こうから一人の男が走ってきて、村役場の前で日向ぼっこをしていた老人たちに何かを叫ぶ。

かすかに聞こえた言葉は――

「抱山(バオシャン)がいなくなった!」

その一言で、場の空気が一変した。

のんびりしていた老人たちの顔が一斉に強張り、慌ただしく人を集め始める。

鹿南星(ルー・ナンシン)がすぐに職員を捕まえて事情を聞き、戻ってきて言った。

「その“抱山”って人、たぶん私たちの探してる守村人だよ」

胡荔枝が思わず姜栩栩に聞く。

「守村人がいなくなったら……どうなるの?」

姜栩栩はわずかに目を細め、静かに答えた。

「村はすぐには何も起きない」

「でも――守村人は、死ぬ」

その言葉に、玉霊すら青ざめる。

来たばかりで、いきなり“死ぬ”?



守村人は村を守る存在だ。

しかも、その人物はもう一人の玉霊へ繋がる重要な手がかりでもある。

見捨てる理由はどこにもなかった。

一行はすぐに村人たちと合流し、捜索に加わることにした。



そのとき、システム亀がまた百物箱から顔を出す。

黒い霧をまとい、空へ飛び上がろうとする。

【俺が探す!】

だが――

パシッ。

姜栩栩に首根っこを掴まれて引き戻された。

村の中で空飛ぶ亀など、ただのホラーである。

「却下」

そのまま強制収容。

代わりに姜栩栩は胡荔枝を見る。

「あなたが行って」

胡荔枝は素直に頷いた。

「匂いを特定できれば追えます」



鹿南星が村人から抱山の家を聞き出し、胡荔枝が中に入ってすぐに嗅ぎ取る。

「こっち!」

彼女はそのまま村の裏山へ向かって走り出した。

一行も続く。

途中、村の子どもたちが大声で叫びながら探していた。

「抱山叔ーー!!」

その声は澄んでいて、心の奥まで届くようだった。

これは村の神婆が教えた呼び方だという。

この村では守村人は尊ばれており、子どもたちも決して“バカ”などと呼ばない。

もし言えば――午前中に罵って、午後にはサンダルで叩かれる。

それがこの村のルールだった。



やがて、古木を過ぎ、松鼠にまで道を聞き――

ついに見つけた。

村裏の山中、落とし穴のような窪みの中。

そこに、抱山が転がっていた。

……寝ていた。



村人たちが駆け寄る。

「抱山!こんなとこで寝てたのか!!」

「朝からいないと思ったら!」

慌ただしく人が集まり、上下から引っ張って救出。

抱山は三十代ほどの大柄な男で、どこかぼんやりしているが、身なりは悪くない。

地面に上げられると、彼はただヘラヘラと笑った。



ようやく村人の一人が姜栩栩たちに気づく。

「あなたたち、どこから来たの?抱山に何の用?」

姜栩栩は迷わず指をさした。

「この人に用があります」

空気が変わる。

警戒。

「抱山は村から出たことないぞ?」

「何しに来たんだ?」

そのとき――



ずっと笑っていた抱山が、突然ぴたりと動きを止めた。

そして――

姜栩栩たちを見た。

正確には、その中の一人を。

彼は指をさして叫んだ。

「狐!狐!!」

全員が固まる。

胡荔枝は目を見開いた。



村人が慌ててフォローする。

「ごめんね、この子、頭がちょっと……悪気はないから!」

「“狐精”って意味じゃないからね!」

胡荔枝「……」

彼女は別に怒ってはいなかった。

ただ――

なぜ分かった?

自分が“本当に狐”だと。
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