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朝の鍛錬にて

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 木剣令嬢の朝は早い。
朝の日課は多く5キロミリア
(1ミリア=1メートル)ほど走り込みをして素振りを1000回した後、風呂場で汗を洗い流してから身を着飾り食事をとる。
 そして、学校に行くまでの時間は自分の勉強に励んだり、ミサキに勉強を教えたりする。

 今までは一人でこれをこなしていたが、今日からは4人に増えた。

「姐さん。いっつもこんなに走ってるんすかぁ。やばっ昨日のステーキがっ」

「はぁ、はぁ、胸が揺れてジャマですぅ」

「ぜぇぜぇ、誰よ、おばさんって言ったの」

 なぜこんなことになっているかと言うと、昨夜の作戦会議の解散間際に

「そういえば姐さんっていい体してますよね。あたしも痩せようかなぁ」

「そうですね。お嬢様は肌もきれいですし、何をなさっているんですかぁ」

「なになに、アンチエイジング⁉ ちょっと詳しく聞かせてちょうだい!」

 という騒ぎがあったからだ。

 皆、寝不足ではあったがマイアに叩き起こされ走り込みが始まった。

 毎日こなしているマイアにとっては呼吸も同然なので、涼しい顔で3人の姿を後ろに見る。

「あらあら、情けないわね。ミサキ、あなたは運動神経はいいけど最近食べてばっかりだからかしらね。アメリアはその無駄な脂肪のせいね。メリルは……歳かしらね」

 楽し気に毒を吐きながら4人は走り込みを終え、マイア以外の3人は地面にへたり込んでいる。

 そんな様子を見てマイアも3人の近くに腰を下ろす。

「ちょっと休憩しながら昨日の話の続きをしましょうか」

「さんせーい」「はいぃ」「ぜぇ、ぜぇ」

 三者三様の返事を聞いたところでマイアは話始める。

「魔石と魔族の話まではしたわよね、ミサキ」

「はい、確か月からの隕石には2種類あって、ひとつは魔石でもうひとつは魔族が入ったやつって感じでしたよね」

「大体、合ってるわ。じゃあ今日はその続きからね」

 マイアは朝日に反射した美しい金髪を耳にかけ、木剣で地面に絵を描き始めた。

「魔族の他に魔獣と呼ばれる者もいるの。魔族は比較的、人間に近い外見をしているのに対して魔獣は獣の姿をしている。魔獣は基本的に魔石を体内に取り込んだ獣のことを指すの。だから魔石の性質によって魔獣の個体は様々な変化をするわ」

「魔石の性質? って何ですか」

「あぁ、そういえば言ってなかったわね。魔石には【火】【水】【風】【土】の4種類があって、それぞれ赤、青、緑、黄の色をしているわ。それぞれの魔石の使い方は、まぁ今度にしましょうか。息も整ってきたみたいだし、皆素振りしましょう」

 マイアの一言にビクッと体を震わせる3人。

「あ、そういえば、今日は生垣アートを作ってなかったなぁ」
「わ、私も掃除をしなきゃいけません~」
「私も、食事を準備しなくてはいけないので……」

 三者三様の言い訳を披露し、3人は俊敏な動きでその場を立ち去った。

「あら、残念だわ。でも3人の体力は大体わかったし、次はもっとギリギリを責めようかしら」

 鬼教官を生み出してしまった3人だった。 

 
 
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