氷の艶やかな青年

はなおくら

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 たとえ用のない茶色い瞳、どこにでもある茶色い髪の女の子、とある子爵家で生まれた子は、ハンナと名付けられた。

 ハンナは神殿の調べにより、魔力は治癒魔法のみが使えた。

 しかし、この世界では治癒魔法は誰にでも使え寧ろその一種類しか使えないというのは、恥ずべき事であった。

 他の子供達は生まれつき、少なくても2種類、多くて5種類の魔力を身につけて生まれてくる。

 ハンナの両親は、この事実に涙した。神殿に助けを求めるが、神に祈る事しかできなかった。

 そうしてハンナは幼い頃から、からかいの対象として攻撃されることがあったが、次第に相手にもそれなくなりどこにも馴染めなくなっていった。

 そんな寂しい生活の中、ハンナも16歳になり、魔力を鍛える学園へ行くことになっている。

 使用人が制服を用意してくれているが、期待もせずにすぐにベッドに横になった。

「どうせいつもと変わらない日常…。」

 瞳を閉じて、何も期待しない明日の事を忘れて夢に入った。

 翌朝、期待もせず制服を着て、朝食を食べ、馬車に乗り込み学園へと向かった。

 早すぎたせいか学園は誰もいなかった。少し散策しようと、廊下を歩いていたその時、どこからか視線を感じた。

 気怠げな表情で横を向くと、そこには息をのほど美しい青年がこちらを射抜く様に見つめている。

 髪はアッシュかかったブルーに瞳は今にも凍りつきそうなほどつららを連想させるスカイブルーの瞳がハンナを見つめている。

 青年はハンナと目があっても逸らすことはせずこちらを見つめている。

 ハンナも何故か時間が止まったかの様に動けずにいた。

 だが不思議と胸が熱く、この感情をどう表現していいのか分からなかった。

 何かこの青年と変わることで何かが変わることは予感していた。

 その瞬間、学園のベルが鳴り響いた。

 時間が来ていたのだ。

 青年に少し頭を下げると、ハンナは急いで自分の教室に入った。

 ここでも遅く入ったハンナに誰も気にせず、話しかけてくることもない。

 いつものことだと、ハンナは前を向いた。

 教室の説明が終わると、すでに出来上がっていたグループがヒソヒソと話出した。

「ねぇねぇ!今日お会い出来た?」

「えぇ!遠くからだけど、お見えになりましたわ!…氷のプリンス!」

 頬を赤らめてキャーキャーと騒いでいた。

「本当に素敵よね…。魔力も最高5種…いえそれ以上よ!」

 誰のことを言っているのか分からないがその話が尽きることはなかった。

「でも彼の方は誰にも興味を示さないから本当に残念よ…。」

「そうなのよね…。」

 どこか落胆した様に話す女子生徒にハンナは無関心にも何も感じていなかった。


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