氷の艶やかな青年

はなおくら

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 数日後、セジャ・オクスワールとの面会が開かれた。

 ハンナは居心地の悪い感覚だった。何故自分なのか…。

 目の前にはこちらに視線を合わせず紅茶を楽しんでセジャ・オクスワールがいる。

「あの…もう体長は大丈夫なのですか?」

「あぁ。」

 そう言ってセジャ・オクスワールは微笑んだ。

 何故か彼はこの面会の時からどこか機嫌が良かった。

 そしてケーキを食べるハンナを見て嬉しそうに見つめている。

 それが不気味で、身に覚えもなくどう対応していいのか分からなかった。

「婚約の事ですが…。その…。」

 ハンナはこの際、何故婚約を申し込んだのか聞こうと思うが、実際どう聞いていいのか分からず、言葉に詰まった。

「僕の意思だよ。」

 そう言って、セジャ・オクスワールは紅茶を口に含んだ。

 その一言でも、意味が分からず首を傾げた。

 そんな様子にセジャは微笑みハンナの手を握り言った。

「君は覚えていないと思うが、僕と君は今世結ばれる運命なんだ。」

 頬を赤くさせて嬉しそうに、この日を待っていたという様な表情でこちらを見つめてくる。

「えっ…!」

 ハンナは意味が分からず、握られた手を引っ込める事もできないまま、セジャの顔を凝視していた。

「セジャ様…それはどういう事でしょうか?私には…意味がわかりません。」

 そう返すとセジャは困った笑顔で、首を振った。

「いいんだ…君は気にしなくていい…。」

 そういうと握りしめた手を優しくセジャは撫でた。

 ハンナは混乱でしかなかった。

 複数もの魔力を所持しており、婚約者も政略ではなく自由に選べる立場の人が何故誰でも持ってるような自分を選ぶのか。

「私は自分に自信がありません…。貴方の様な人が、何故私なのか…。聞いていると思いますが…私には魔力が一つしかありません。それも誰でも使える様な治癒能力しか…。」

「………。」

 ハンナの話を黙って聞いていたセジャは彼女の手の甲にキスを落とした。

「……それはね…僕のせいなんだ…。」

「えっ…?」

 悲しげな表情でいうセジャにハンナはまたもや混乱していた。

「気にしなくていい。それより僕は君がどんなに魔力が低くても、少なくても、君が好きだ。君には僕だけを見ていてほしい。」

 揺らがぬ瞳に、ハンナの心臓はドクドクと脈が速くなった。

 こんなにも熱烈なプロポーズを、学園では笑わないと有名な氷のプリンスに言われる事に信じられない気持ちになっていた。

「絶対、君を離さない。どうか君も受け入れてほしい。」

 こんなにも熱い想いを伝えられて断れるはずがない。

 ハンナは頬を赤らめて、

「はい…。」

 と返事した。
 
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