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「ハリア…ごめんなさい…私…。」

 居た堪れず俯くと私に、ハリアはいつの間にか隣に座っており、私の手を持ち上げた。

 彼の動きを目で追うと、私の手の甲にキスを落とした。

 こちらを見つめる彼の表情に頬が熱くなるのを感じる。

 ハリアは私を抱き寄せて、続きを話した。

「ハーブ嬢は君から託された上、自分も同じ気持ちだと婚約の関係を話してきたんだ。」

「……。」

「でも僕は、君以外の人間と結婚するつもりはないからね…。気持ちには答えられないとはっきり伝えたんだ。」

「…そんな…。彼女は…悲しんだはずよ…。」

 私は何も言えなかった。

「そうだろうね、でも彼女ではダメなんだよ…だからセレーナ…もうどこにも行かないで…僕を愛してほしい…。」

 突然弱気に懇願する彼を見て、私は頷いた。

「ええ…。」

 私の返事を聞くと、ハリアは嬉しそうな表情で、そっと私の目を見つめたまま顔を近づけた。

 私は自然と目を閉じると、彼の柔らかい唇が自分の唇に優しく重なった。

 彼とキスをするのは、今日が初めて胸を焦がす様な情熱的な心地に酔いしれていた。

 一度重なって仕舞えば、離れてもまた重なり何度も何度もくっ付いては離れを繰り返した。

 呼吸ができなくなり、私は彼から離れて口を手で隠した。

「もう…恥ずかしい…。」

「セレーナ…。」

 顔を逸らした私に、ハリアはもっとと目を潤ませて、私の手を掴むと、またキスを始めた。

 そしてお互いのもっとと言う気持ちが加速したのか、お互い深いキスを繰り返す様になった。

「セレーナ…かわいい…。」

「ハリア…ハリアっ…!」

 お互いを求め合い、離れることなど耐えられない気持ちになった。

 彼の胸に顔を当てて幸せの微睡を感じる。

 それが心地よくて、いつの間にか瞳を閉じて眠ったのだった。

 目が覚めると、そこは自分の寝室だった。

 隣には寝息を立てて眠っている彼の姿があった。

 彼の寝顔を見つめて、昨日のことを思い出して頬が赤くなった。

「ハリア…。」

 名前を呼び彼の頬を撫でた。

 くすぐったそうにしている姿がより愛おしくて、私は彼の唇にキスを落とした。

 彼を愛してる。

 彼も同じ気持ちなら、何も不安に思う必要はない。

 自分の気持ちに素直になってみよう。

 そう思った。

 もう一度彼の唇にキスをしたその時、目の前が回る様な感覚がしたと思えば、彼に組み敷かれていた。

 彼は私の顔中にキスをすると言った。

「僕のセレーナ…。」

「ハリア…起きてたの?」

「君からのキスで目が覚めたんだよ。」

 イタズラ顔でそう言うハリアに私は微笑んだ。
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