婚約破棄されても貴方が好き

はなおくら

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 嬉しい…。

 これまでの事が、何もかもどうでもよく思えてきた。

 今までこんなに自分の事を思ってくれた彼を見るのは初めてだった。

 すると彼は、私の背中に手を回して抱き寄せると柔らかい口調で言った。

「もう、周囲の人間の事は気にしなくていい…。ジェニと私がどうしたいかを考えよう…。」

 彼の言葉が、自分の中にすーっと入ってきた。

「はい…私もそれを望んでいます…。」

 それからは驚くほど素早く事が進んだ。

 アレクは、周りの反対を押し切り私との婚約をするや否や、私の実家に絶縁状を送った。

 彼の両親は、彼の行動に何も言わずにお互いの愛人と余生を、過ごすため隠居した。

 わたしが彼の側に居たいと頼んだアレクの母も、苦手ではあったが、

「貴方は愛する人を見つけたのね…。」

 そう私に言い残し、花束の祝福を手渡してくれ早々に屋敷を出た。

 彼女にも私の知らない想いがあったのだろうと思った。

 そして私の実家に絶縁状を送った事を私は後に聞かされた。

 彼はなんともいえない顔で私をみてすまないと謝ってきたが、既に縁を切られている。何も気にしなかった。

「君から家族を奪ってしまったな…。」

「元より縁を切られていた身です。アレク様がそうしてくださって私は感謝しています。」

「……。もし…いつの日か分かり合える日が来るのなら、その時は力になろう…。」

「ありがとうございます。」

 何も言わずに行動した割にはその事を反省している姿が可愛らしくて私は柄にもなく彼の頭をそっと抱いた。

「………。」

 しばらくして彼が何も言わないことに気がついた。

 「アレク様…?」

 まずい事をしてしまったのではないかと手を離そうとしたその時、彼が私の動きを止めるようにして、私の胸の間から顔を覗かせた。

 彼は真っ赤な顔をしながら熱烈な瞳で私を見つめていた。

「あまり見つめないで…恥ずかしい…。」

 私がそう言って視線を逸らしても彼はこちらを見つめて手の力も込めて逃げられないようにされる。

「アレク様…。」

 そう私が口にすると今度は不満な顔をもろに出して言った。

「その呼ばれ方は好きじゃない。」

 彼の冷たい視線に、婚約を破棄された時の気持ちを思い出して慌ててしまう。

「で…ですがなんとお呼びしていいのか…。」

 すると彼は、私の心中を察したのかわたしに軽くキスを落とすと、わたしの耳元で低く囁いた。

「アレク…。君にはそう呼ばれたいな…。」

 身体の芯から熱くなった。口が開いたまま塞がらない。

「アレク様…そっ…!」

 言葉を返そうとしたその時。
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