愛しい心は千歳よりさらに

はなおくら

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 頭の中が真っ白になった。何を考えたらいいのだろう。

 すると梅がニコッとキヨに笑いかけた。

 この時キヨは、ゾッとした。梅はキヨに見せつけているのだと。

 そう思ったキヨは、何も見なかったふりをしてその場を立ち去った。

 彼女は私にさっきの光景を見せつけたかったのだろう…。

  キヨは杉沢家が帰るその日まで梅の悪意を気にしないようにとやり過ごしていった。

 そしてこの日、杉沢家が帰る時がやってきた。内心キヨの気持ちは安心していた。

 これで元の生活に戻れると…思っていたのに…。

 村長と臣誓の別れの挨拶の際、梅が今吉に声をかけた。

「今吉…私と一緒にきなさい。」

 キヨは目を見開いたまま固まっていた。

「申し訳ありません。わたしに妻がおりますので…。」

 今吉は迷うことなくそう言った。

「そう…まぁ…いいわ…。とりあえずここは引く事にするわ。」

 そう言って、杉沢家が去っていった。

 他の使用人が散り散りに持ち場に戻る中、キヨは今吉に抱きついた。

「…お前さん…。」

 思わず涙が流れる。彼が自分を選んでくれた喜びと離れなくていいのだと安心していた。

 今吉もキヨの体を抱き寄せて言った。

「俺にはお前だけだ…。」

 しばらく抱き合っているとコホンッという声が聞こえて2人でハッとする。

「……2人ともすまんかったの…。もうこれで安心だ。後は他のものに任せるから2人とも家に戻りなさい。」

「ありがとうございます。」

 村長の言葉に甘えさせてもらい、2人は早々に家路に着いた。

 久しぶりの家になんだかホッとする。そこへおかえりなさいと言ってるかのように、きつめときつなが出迎えてくれる。

「ただいま、待っててくれてありがとう。」

 キヨがそういうと二匹か飛び上がって喜んだ。

 そしてキヨがご飯の準備に取り掛かろうとした時。

「キヨ…。」

 今吉が手を広げてこちらを見ていた。

 キヨはたまらず今吉の胸に飛び込んだ。

 久しぶりの暖かい彼の胸に本当に安心した。

「すまないな…。」

 キヨは返事をしないまま彼の胸に頬擦りをした。

 幸せの余韻に浸っていると、足元が浮いた。気づくと今吉に抱き抱えられていた。

「今吉さん?!」

 今吉は何も言わずにキヨを置くの部屋に運ぶと、早々に褥を引きキヨを布団の上に寝かせ両手を押さえた。

「お前が隣に居なくて……かった…。」

「えっ…っ!」

 キヨが聞き返す間も無くキヨの唇を奪った。

 今吉の唇からキヨへの思いが流れていくような感覚がした。

「お前さん…。」

 頬を染め今吉を呼ぶとまた今吉が激しく唇を奪った。
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