愛しい心は千歳よりさらに

27

　獣神はそういうとさっきの女人2人を中に入れた。

「暫くこの者に仕えるのだ。良いな？」

　女人は頭を下げて平伏した。

　それから女人に連れられ暖かい褥の中に入る様言われた。褥の中は暖かく心地いい…何故か不思議と倒れる様に眠りに落ちていった。

　その頃、キヨに別れを告げられ何もできず呆然していた今吉が雨の音で気がついた。

　別れたくなかった。たとえ他の男と寄り添っている姿を見ようとも離れるつもりはなかった。

　ただ自分の中で抑えきれなかった嫉妬で彼女を閉じ込めてしまった。

　話をすればいつ別れを切り出されるかその言葉を聞くことが嫌だった。

　だが結果的には彼女は家を出てしまった。

　彼女を自由にするべきか、だが自分の中に取り込んでしまいたい衝動に駆られる。

　本来ならここで愛する人を自由にするのが一番いいだろう。
　でも自分はそんな事できない。

　そう思った今吉は走り出していた。

　村中を走り回り、あの時いた顔見知りの男の家に向かった。その時。

「今吉さん…?」

　振り向くと一人で立っている梅の姿があった。

　梅は傘をさして今吉が濡れない様に中に入れると手ぬぐいを取り出して顔を拭いた。

「こんなに濡れて…どうされたのですか?」

「なんでもありません…では。」

　そう言って立ち去ろうとした今吉背後からまた一言。

「キヨさんはもう戻ってきませんよ?」

　今吉が振り返り梅を見た。今吉の目には恐ろしい悪女が微笑んでいる様に見えた。

「あの人はもう帰りません…そしてあなたは私のものになるの。」

　そしていつのまにか数人の忍びが今吉の周りを囲った。

　警戒する今吉の身体を咄嗟に忍びが隙をつき気絶させた。

　気を失う中、今吉の胸にはキヨが映っていた。

「…キヨ……。」

　それを聞いた梅は顔を歪めた。

「なんで憎らしい…妾を呼ばず案内あんな女の名を口にするとは…。まぁいい、さぁ…この男を連れて行きなさい…。」

　そう言って忍びは今吉を抱えて村を出て行ったのだった。

　その一部始終を見ていた花枝は急いで父村長の元へ駆けて行ったのだった。

　どれくらい寝ていただろう。目が覚めた頃には雨も上がって土の匂いがした。

「キヨ様、おはようございます。朝食の準備が整いました。どうぞこちらへ。」

　そうしてまた綺麗な着物を着せてもらい部屋を出た。

　食事の部屋へと向かうと中には神獣様が座っていた。

「きたか？まぁ座りなさい…。」

「…はい。」

　席をつき食事を始めた。女人が次々に栄養のあるものを運んでくれる。

　その時神獣が口を開いた。