愛しい心は千歳よりさらに

はなおくら

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「キヨ、そなたはこれからどうするつもりだ?」

 獣神様にそう問われたが、キヨの中ではあの家を出て行くこと以外何も考えていなかった。

「わかりません…あの人が殺されるかもしれないと思うと家をでなければと別れなければと思うばかりで…。」

 これから自分がどうしたいのかわからない。
 実家に帰ろうにも、下に弟たちがいる。その子達もいずれ結婚する時、姉が家にいては婚期も遅れるだろう。

 そう考えると自分には行くところが無いのだと自覚した瞬間、言いようのない孤独が襲ってくる。

「そなたに提案がある。」

 嫌な事を考えているのが見抜かれたのか獣神は静かに言った。

「提案とは…。」

「うむ、そなたにはここで修行を積み、巫女として我の代わりに方々を清める役目を担ってもらいたい。」

「…巫女…でしょうか…?」

 キヨはイマイチピンと来なかった。巫女というのは生娘であり、身が清いものの事を言うのだろう。

「獣神様、巫女とはその…身の清い方しかなれないものでは?」

 そう聞くと獣神は大笑いを浮かべた。そして落ち着いた頃、咳払いをしてお茶を一口飲んで口を開いた。

「すまぬな、それは人間の世で人間が勝手に決めつけて決めた決まりだ。巫女とは我のような者が認めた者の事を言うのだ。その使命にその者が結婚していようが何をしていようが問題ではない。唯…慢心の心…つまり傲慢な邪な心で人に察し、地に落とすような事をすればその力は消える。」

「………。」

 あまりに難しい事を言われている。正直自分自身このお役目を担えるのか、不安でしかなかった。

「獣神様…私は…。」

 お断りの返事をしようとした時、

「我はそなたは適任と思っておる。その為ここで修行するのだ。それにこの役目は永遠にと言うわけではない。そなたがやめたい時にはいつでも降りることは可能だ。…どうか我のために力になってはもらえぬか?」

 そう言って獣神様は頭を下げた。そう言われてしまえば断れるはずがない。
 不安で仕方がないだがここまで思ってもらえるのであればとこの話を受けた。

「わかりました…私の出来る事をお手伝い致します。」

「あぁ…ありがとう。期待している。」

 嬉しそうに獣神が顔を向けてくるのをキヨは微笑み返した。

「ならば修行は明日からと致そう。修行の手伝いをきつめときつなが担う。」

「きつめときつなが?」

 キヨは不思議だった。いつも一緒にいるがどう言う事なのだろうか。

「明日になればわかる。今日はゆっくり休んで明日の為に身体を備えるのだ。」
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