愛しい心は千歳よりさらに

はなおくら

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 神獣の一言でキヨは、言われたとおりに各地へと足を運んだ。

 その場に向かうときには、顔を布で隠して、きつめときつなが同行して目的地へと向かった。

 汚れた土地、場所が有れば浄化して、どんな生物でも見つければ真摯に癒した。

 あれから一年、ある日いつものように勤めを果たして神獣のいる社台へと帰っているとき、街中で今吉の姿を見た。

 彼は梅に手を組まれて歩いていた。梅は嬉しそうに話をしているが、今吉はどこか元気がなく憔悴しきった顔をしていた。

 久しぶりの元夫の姿に胸が高鳴った。だが彼の不調を感じ心配してしまう。

「……今吉さん…。」

 キヨが近くの人間でも聞こえるか聞こえないかの声でつぶやいた瞬間、彼がこちらを振り向いた。

 この時二人の間には時が止まったような感覚になった。

 できることなら走って駆け寄りたい。だがそんな事も出来るはずもなくキヨは視線を逸らし足速に歩き出した。

 その後ろ姿を虚げに見つめている今吉に気づかないふりをした。

 社台に帰って自分の部屋に入り、彼との再会を惜しんだ。

 そしてまだ自分は彼を愛しているのだと、嫌と言うほど自覚する。

 しばらくして頭を横に振り忘れる事にして褥へと横になったのだった。

 この一件からでもキヨの生活は一定した生活を送っていた。

 朝、神獣と食事を済ませて夕方までお勤めを果たして帰宅し、夜眠りにつく。

 そんな生活からさらに3年後、驚く事が起きたのだ。

 珍しく神獣に呼ばれて、彼の部屋へと入ると神獣は静かに鎮座していた。

「お呼びですか?」

 キヨが声をかけると神獣は顔をあげて座るようにと施した。

 神獣の対面に座り彼がは泣き出すのを待った。

「そなたにはしばらく同じところへ住み込みで行ってもらいたい所がある。」

「…住み込み…ですか?それは初めてですね…。」

 キヨがそう言うと、神獣はうなずき続けた。

「我に願いを送った者がいる。その者の夢にてそなたを向かわせる事も告げた。」

 キヨは内心ここを一晩以上空けた事がなく不安ではあったが、よっぽどの事なのだろうと考えていた。

「してその方の願いとは…?」

 神獣がこれほどまでに言う依頼がなんなのか気になり問うと神獣はまたしても頷き答えた。

「ある男が弱り果てておるらしい。その者をなんとしても直して貰いたいという願いだ。…キヨ…行ってはもらえぬか?」

「私は自分の勤めを果たすまでです。それに神獣様の望みで有れば私はそこへ向かいます。」

 キヨは即答でそう応えた。

「ありがとう。そなたにとってこの事柄が大きな変化となるだろう。」

 神獣が最後の方に言った言葉の意味がわからなかったがキヨは頷いた。
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