愛しい心は千歳よりさらに

はなおくら

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 翌日、きつめときつなを初め身の回りの世話をしてくれた女人が笑顔で迎えてくれた。

 今回はきつめときつなはお留守番だ。

「キヨ様…寂しくなりますが気をつけて行ってきてくださいね…。」

 寂しそうにきつめが呟くと、きつなが宥めながら言った。

「そんな寂しそうだとキヨ様が行きづらいだろう?キヨ様どうかお気をつけて。」

 そうきつなが言った横で女人達も笑顔で頭を下げた。

 キヨはいつも通りに行ってきますと言って社台を背に歩き出した。

 社台の屋根の上には神獣が座ってキヨの背中を見つめていた。

「そなたにとって良い様に事が流れる事だろう。」

 そう言ってキヨの見送りを笑みを浮かべてみていたのだった。

 キヨは今、言われた屋敷の前にいた。立派な屋敷だと眺めた後、門番に名を名乗ると、慌てた様に屋敷の中に入っていきしばらくすると後ろにもう一人連れてきた。

 その姿にキヨは息を呑んだ。そこにいたのは杉沢臣誓その人だった。

 彼は急足でこちらに走ってくると深々と頭を下げて言った。

「巫女様、この度こちらにお越しくださり感謝いたします。当主の杉沢臣誓と申します。ここではなんです中へお入り下さい。」

 そう言って、屋敷の中へと案内してくれた。

 部屋に通される間、キヨの気持ちは複雑だった。

 顔を隠しているおかげが表情が相手にわからないのが幸いだったが、おそらく今自分はひどい顔をしているだろうと思う。

 目の前にいる男には罪は無いが、その娘に愛するものを奪われている。
 そうなるとなにも自分と関係の無い人だが、家族と聞くと怒りが収まらなくなる。

 キヨは一度深呼吸を置き、自分の思いを胸に無理矢理仕舞い込んだ。

 そして部屋に通され、使用人がお茶を運んだ後、しばらくして杉沢は話し出した。

「巫女様、ここまでの道中大変だった事でしょう。ここでは気になる事が有ればなんでも致しますので気にせず申し付けください。」

「お心遣い感謝致します。」

 キヨは礼を述べた後依頼の話を切り出した。

「杉沢様、今回願いをした内容をお聞かせください。」

 キヨがそう切り出すと、杉沢は下を向いて眉間に皺を寄せ重い口を開いた。

「実は…私には娘がおりました。今思えば、甘やかしすぎたのかもしれません。私が知らぬ間には、男を囲っていたのです。しかも相手の気持ちも考えずに一方的に…。」

 キヨは誰の事を言っているのかわかったが、口を固く結び話を聞いた。

「囲われたその者は…娘の気持ちに応えられないと娘を拒んでいたそうです。その時娘は発狂を起こして騒ぎになり…私はその時にその者の存在を知りました。」

 
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