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エピソード1
しおりを挟む「一緒にお茶でもどうかな?」
軽い初見の挨拶を済ませたあと、伯爵はエラをお茶に誘う。
断る理由もないのでエラは誘いを受けることしにた。
横にいる執事に目で合図した伯爵はエラに手袋をはめた手を差し出す。
少し口角を上げた伯爵は、カッコイイというより美しいという方が合っている。
「天気も良いし、外でお茶しようか」
エラは伯爵の手をとる。
手袋越しでも分かるほど、繊細な細い手をしていた。
伯爵の顔を盗み見れば、なぜだか嬉しそうな表情を浮かべている。
伯爵に導かれた先は、手入れの行き届いた綺麗なお庭だった。
薔薇などの花で囲まれたその場所には、白いテーブルクロスがかけられたテーブルと椅子が二脚用意されている。
テーブルの上には、細かい細工が施された如何にも高級そうなティーカップと
クッキーやチョコレートなど様々な種類のお菓子が置かれている。
「どんなのが好きなのか分からなかったから、適当に用意させたんだけど
気に入るといいな」
そう言いながら伯爵は手前の椅子を引きく。
そしてエラにそこに座るように手を差し出し促す。
それに従い座ると、そっと前にエラが座ったままの椅子を押す。
(うわ、こんなの初めてされた)
ジョンの所にいた時、エラはこんな扱いをされたことがなかったので伯爵の行為がとても新鮮に感じられる。
そういえば、
ジョンも1番のお気に入りだった愛人のメアリー(今ではジョンの妻だ)とはそういうことをしてたな
とエラは思う。
その様子を見て羨ましいと思ったことはなかったが、されてみると悪いものじゃないなとエラは思い、少々頬を赤くする。
気がつけば、伯爵がエラの向かいの椅子に座りエラを見ている。
エラはそんな伯爵を凝視してしまった。
見惚れると言った方が正確なのかもしれない。
ちょうど、太陽が伯爵の後ろに重なるようにあり
まるで後光のように伯爵を照らしている。
太陽に照らされた伯爵の金髪は、とても美しく光を反射している。
サファイヤのような瞳はキラキラとしてエラを見つめ返している。
(天使・・・・みたいだな)
エラは反射的にそう思った。
「紅茶は好き?」
人形のように整った顔の1部が動き、エラのティーカップに紅茶を注ぎ始める。
「はい」
紅茶に対して苦手意識は無かった。
好きだとも思っていなかったのだが、伯爵の機嫌を損ねたくなかったのでエラはそう答える。
「そうか」
注がれた紅茶は、甘くてフルーツの匂いがする。
「マルコ・ポーロっていう紅茶だよ・・・聞いたことある?」
紅茶には疎い方だったエラも、マルコ・ポーロという有名な紅茶は知っていた。
エラの「はい」という返事に伯爵は満足したように笑い、話を続ける。
「マリアージュフレールというブランドの中では1番マルコ・ポーロが有名なのかな。
甘くてフルーティーで、エキゾチックな芳醇な香りでしょ?」
紅茶の入ったティーカップを鼻の近くまで持ち上げて、花の香りでも嗅ぐみたいにその匂いを嗅ぎながらエラを見る。
エラはコクッと頷きながら、紅茶を1口飲む。
スッキリとした味だ。
味と香りが一致しないなとも思ったが、イヤな味ではない。
「紅茶好きなんですか?」
「うん、紅茶を飲むと落ち着くから・・・・お菓子も食べて」
エラの問いに答えながらお菓子の乗った皿を差し出す。
エラはお菓子を1つ取り、口の中に放り込む。
(おいしい~)
噛めば噛むほど甘いバニラが口の中に広がるのだが、しつこくない。
エラ好みのクッキーだ。
クッキーに伸びる手が止まらず、1つまた1つとエラは口の中に放り込む。
その様子が面白かったのか伯爵はクシャッと笑う。
それにハッとしたエラはクッキーに伸びる手を止め、下を向く。
「あはは、いいよ。好きなだけ食べて」
そう言った伯爵はエラの頭を撫でる。
まるで、子供に接してるようだ。
やはり伯爵はエラのことを、無垢で子供みたいな害のない妻だと思っているらしいことに、エラは安堵し好都合だと心の中で笑う。
(クッキーに手が止まらなくなったのは
はしたなかったけど、結果オーライ)
ふう、と心の中でため息を着いたエラは紅茶を1口飲む。
「なにか、私のことで知りたいはある?」
伯爵は満足そうにクッキーを頬張りながら言う。
(伯爵について知りたいことは1つ・・・それは弱み)
伯爵との結婚生活でエラがしたいことは、伯爵の弱みを握ることただ一つ。
そしてその弱みを握り、それを使って伯爵を自分の操り人形にし、復讐の道具に仕立てることがエラの目的。
妻になることで、伯爵の弱みを握ることがずっと簡単になると思ったから伯爵と結婚した。
(弱みを握ぎり伯爵を私の操り人形にする事が、私の復讐の第1歩)
だからといって、単刀直入に「貴方の弱みはなんですか」なんて聞いても答えてくれる訳ないし
エラが自分と結婚した理由が「復讐のために自分を利用すること」なんて伯爵が知ったら離縁させるだろう。
伯爵に離縁されたら、復讐する手立てを失ってしまう。
エラにとっては1番避けたいことだ。
エラがなにも答えないでいると、伯爵はクスッと笑い「じゃあ」と言葉を続ける。
「私が質問してもいい?」
その言葉にドキッとする。
ジョンとの事を聞かれるのではないかと思ったからだ。
「どうぞ」
緊張しながらそう答える。
「んー。じゃあ、好きな動物は?」
「は」
あまりに突拍子のない質問に間抜けな声を上げてしまう。
外国の授業の時間に「簡単な質問をし合おう」という内容の授業をしたのを
エラは思い出す。
その質問と同じレベルだなと思ったが、普通の男女の馴れ初めはこんな感じなのかな、とエラは考える。
好きな動物。
エラは基本動物はなんでも好きだった。
「犬・・・ですかね」
「犬!そうか~良かった」
エラの答えに「ふうー」と安堵のため息をつきながら、子供のようにハニカムような笑みを見せた伯爵。
その笑顔にまたしてもエラはドキッとしてしまった。
自分の操り人形になる予定のこの伯爵は
美しいすぎる「道具」なのかもしれない。
エラは紅茶を1口飲みながら、そう思う。
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