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妹の身代わりに
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最近、アヌークの姿を見ていない。彼女はこのデュラス領の領主の娘。自警団を取りまとめ、この領地と領民のことを、領主である父親よりも気にかけてくれている娘だ。
ところが最近、そのアヌークの姿が見えない。代わりに、なぜか彼女の兄のアルセンが領地をうろついている。むしろ彼は、王立騎士団の騎士として王都にいるべき人間なのではなかったのだろうか。
「アル。アンはどうしたの?」
デルタはずっと気になっていたことを、通りすがりのアルセンに尋ねた。
「え、な、何を言ってるの? ディー。私、アンだけど」
「何? そういう罰ゲームなの? アンのスカートまで履いちゃってさ。ま、見た目は女性に見えるけど」
デルタが指摘したアルセンの恰好。そう、彼はアヌークの振りをして、彼女の服を着て街を歩いているのだ。
このアルセン。騎士団の長期休暇中にこの領地に戻ってきて、落馬して大怪我をしたと嘘をつき、妹を騎士団へと向かわせたという、クズのような兄だ。アルセンとアヌークは双子のようによく似た顔つきをしており、アルセンは男性のわりには小柄で華奢な体つきだった。それでも、警備部隊第二隊の隊長を務めていることから、腕がいいのか調子がいいのかは不明。
「ま、さ。他の人は気付いてないみたいだけど、この私を騙せると思ったら大間違いだよ」
デルタは、あはははと盛大に笑った。彼女はアヌークとアルセンの幼馴染のような存在。だから、アルセンに気付いたのだろう。
「やっぱり、ディーを誤魔化すことはできなかったか」
アルセンはアヌークの声色を真似していたそれを、地声に戻した。
「意外と疲れんだよね、この声」
「で。なんでアルがアンの真似をしているわけ?」
実はさ、とアルセンは語り出したのだが、実は誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。ぽつりぽつりと語り出し、最後まで言い終えた頃。
「え、じゃ。アンが代わりに騎士団の仕事をこなしてるわけ?」
「そう、なるな。だが、あと十日もすれば俺とアンは入れ替わる予定だから」
「むしろ、アンの方が隊長に向いてて、そのまま騎士を続けちゃったりして」
デルタはまた、あははと豪快に笑ったのだが、そこで一つ大事なことを思い出した。
「あ、私、アンと約束してたんだけど。三日後だっけかな。うちの両親がラブラブ夫婦旅行に行くから、アンが私の家に泊まりにくるって。一応、両親も私だけおいていくのは心配みたいで。でも、だからって二人が楽しみにしてる旅行にね、水を差すようなことはしたくないし、って言ったら、アンが泊まりに行くよって言ってくれて。それでうちの両親も納得したんだ」
「てことは、俺に泊まれって言ってる?」
アルセンは嫌な予感しかしなかった。ドキっと心臓が高鳴っていることにも気づく。
「アンがアルの代わりに仕事してるなら、アルもアンの代わりにやるべきことをやる必要があるよね。でも、アルだし、な」
そこでデルタはじっと上目遣いで彼を見ると、両腕で胸元を隠すような仕草をした。
「は? 俺がお前に欲情するとでも思ってんのか? 自意識過剰もいいとこだな」
「はぁ? じゃ、何もないならアンの代わりに約束守りなさいよ」
と、売り言葉に買い言葉。デルタの両親がラブラブ夫婦旅行に行くその日、アヌークは、ではなくアルセンは、幼馴染みのデルタの家に泊まることとなってしまった。
ところが最近、そのアヌークの姿が見えない。代わりに、なぜか彼女の兄のアルセンが領地をうろついている。むしろ彼は、王立騎士団の騎士として王都にいるべき人間なのではなかったのだろうか。
「アル。アンはどうしたの?」
デルタはずっと気になっていたことを、通りすがりのアルセンに尋ねた。
「え、な、何を言ってるの? ディー。私、アンだけど」
「何? そういう罰ゲームなの? アンのスカートまで履いちゃってさ。ま、見た目は女性に見えるけど」
デルタが指摘したアルセンの恰好。そう、彼はアヌークの振りをして、彼女の服を着て街を歩いているのだ。
このアルセン。騎士団の長期休暇中にこの領地に戻ってきて、落馬して大怪我をしたと嘘をつき、妹を騎士団へと向かわせたという、クズのような兄だ。アルセンとアヌークは双子のようによく似た顔つきをしており、アルセンは男性のわりには小柄で華奢な体つきだった。それでも、警備部隊第二隊の隊長を務めていることから、腕がいいのか調子がいいのかは不明。
「ま、さ。他の人は気付いてないみたいだけど、この私を騙せると思ったら大間違いだよ」
デルタは、あはははと盛大に笑った。彼女はアヌークとアルセンの幼馴染のような存在。だから、アルセンに気付いたのだろう。
「やっぱり、ディーを誤魔化すことはできなかったか」
アルセンはアヌークの声色を真似していたそれを、地声に戻した。
「意外と疲れんだよね、この声」
「で。なんでアルがアンの真似をしているわけ?」
実はさ、とアルセンは語り出したのだが、実は誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。ぽつりぽつりと語り出し、最後まで言い終えた頃。
「え、じゃ。アンが代わりに騎士団の仕事をこなしてるわけ?」
「そう、なるな。だが、あと十日もすれば俺とアンは入れ替わる予定だから」
「むしろ、アンの方が隊長に向いてて、そのまま騎士を続けちゃったりして」
デルタはまた、あははと豪快に笑ったのだが、そこで一つ大事なことを思い出した。
「あ、私、アンと約束してたんだけど。三日後だっけかな。うちの両親がラブラブ夫婦旅行に行くから、アンが私の家に泊まりにくるって。一応、両親も私だけおいていくのは心配みたいで。でも、だからって二人が楽しみにしてる旅行にね、水を差すようなことはしたくないし、って言ったら、アンが泊まりに行くよって言ってくれて。それでうちの両親も納得したんだ」
「てことは、俺に泊まれって言ってる?」
アルセンは嫌な予感しかしなかった。ドキっと心臓が高鳴っていることにも気づく。
「アンがアルの代わりに仕事してるなら、アルもアンの代わりにやるべきことをやる必要があるよね。でも、アルだし、な」
そこでデルタはじっと上目遣いで彼を見ると、両腕で胸元を隠すような仕草をした。
「は? 俺がお前に欲情するとでも思ってんのか? 自意識過剰もいいとこだな」
「はぁ? じゃ、何もないならアンの代わりに約束守りなさいよ」
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