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部下(1)
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「聖女さま、どうか団長とまぐわっていただけませんか?」
魔導士団に所属する男――ミロ・ガリカは床に額をこすりつけるほど、深く頭を下げた。金色の前髪は床について、しゃりしゃりと音を立てている。
目の前には、一年ほど前に異世界から召喚された『聖女さま』がいらっしゃる。
「え? まぐわうって、その」
彼女の困惑する声が聞こえてきた。
当たり前だと思う。いきなりまぐわえと言われたら戸惑うだろう。いや、もしかしたら、その意味を間違えて理解しているのかもしれない。
「はい。聖女さまの女性器に団長の男性器をいれて、ずぼずぼっと動かす許可をいただきたいのです」
それがミロの認識している『まぐわい』というものだ。経験はなくても知識はある。
ミロは魔導士団に所属して二年目、まだ二十歳になったばかりの年若い男である。団長であるニール・アンヒムとは一回り以上も年が違う。
だから、彼の手足のようにいつも走り回っている。それはミロが素直で真面目な男だからだ。幸か不幸か、彼はニールに気に入られてしまったのである。
ミロがこの場で聖女アズサに頭を下げているのも、それが理由だった。ニールの手足となって、この場にいる。
「私は、自分で言うのもあれですけども。一応、聖女です。娼婦とは異なりますので、そういった内容は、そういった方にお願いするのが筋かと思うのですが」
聖女の美しい声が、頭上から降り注いできた。だが、ニールは怖くて顔をあげられない。声色から察するに、彼女は怒ってはいないようだが、戸惑いは感じられた。
「もちろん、プロにも頼みにいきました。ですが、相手があの団長だと知ると、いくら金を積まれても駄目だと」
「プロにまで断られるって。よっぽど性格が悪いのですね」
「そうではなく、魔力が問題でして……。魔力の強い人間の相手にも、それなりの魔力の強さが求められます」
魔力と精力は似て非なるもの。男も女も達する瞬間に、魔力が放たれる。それを受け止められるだけの器が相手になければ、相手の魔力に侵される。そうなると、一時的に体調を崩し、最悪の場合は死に至る。
性交渉の相手には、この魔力の相性も求められるのだ。
「アンヒム団長には、今までそういった相手はいらっしゃらないのでしょうか? その方に頼んだほうがよいのでは? その、恋人とか、奥様とか」
聖女が言うのは正論である。特定の相手がいる場合は、その特定に頼むのが一番いい。
だが――。
「団長は独身、彼女なし歴は年の数です。立派な童貞です」
ミロがここまで知っているのも、ニールが彼を信頼して包み隠さず話しているからだ。特に童貞情報はいらなかったのだが、彼の魔力の強さを考えれば納得のいくものだったし、ミロもその仲間だ。
むしろ、魔導士団に所属する者はそのような者が多い。全ては魔力の相性が原因だ。
だから、魔導士団に入団後に職場恋愛的な関係から交際を始め、結婚をする者も多いのだが、残念ながらミロとニールはまだそのような相手とは出会っていない。
ようはニールと釣り合う魔力の持ち主がいない。おまけで、ミロも。
だがちょっと偉い人が気づいた。ニールの相手だが、聖女ならイケるんじゃないか、と。ミロの場合は逆に聖女の能力によってやられてしまうから、高望みしないようにとまで釘を刺された。
その結果、ミロがこうやって床に頭をつけて、彼女にお願いしているのだ。
魔導士団に所属する男――ミロ・ガリカは床に額をこすりつけるほど、深く頭を下げた。金色の前髪は床について、しゃりしゃりと音を立てている。
目の前には、一年ほど前に異世界から召喚された『聖女さま』がいらっしゃる。
「え? まぐわうって、その」
彼女の困惑する声が聞こえてきた。
当たり前だと思う。いきなりまぐわえと言われたら戸惑うだろう。いや、もしかしたら、その意味を間違えて理解しているのかもしれない。
「はい。聖女さまの女性器に団長の男性器をいれて、ずぼずぼっと動かす許可をいただきたいのです」
それがミロの認識している『まぐわい』というものだ。経験はなくても知識はある。
ミロは魔導士団に所属して二年目、まだ二十歳になったばかりの年若い男である。団長であるニール・アンヒムとは一回り以上も年が違う。
だから、彼の手足のようにいつも走り回っている。それはミロが素直で真面目な男だからだ。幸か不幸か、彼はニールに気に入られてしまったのである。
ミロがこの場で聖女アズサに頭を下げているのも、それが理由だった。ニールの手足となって、この場にいる。
「私は、自分で言うのもあれですけども。一応、聖女です。娼婦とは異なりますので、そういった内容は、そういった方にお願いするのが筋かと思うのですが」
聖女の美しい声が、頭上から降り注いできた。だが、ニールは怖くて顔をあげられない。声色から察するに、彼女は怒ってはいないようだが、戸惑いは感じられた。
「もちろん、プロにも頼みにいきました。ですが、相手があの団長だと知ると、いくら金を積まれても駄目だと」
「プロにまで断られるって。よっぽど性格が悪いのですね」
「そうではなく、魔力が問題でして……。魔力の強い人間の相手にも、それなりの魔力の強さが求められます」
魔力と精力は似て非なるもの。男も女も達する瞬間に、魔力が放たれる。それを受け止められるだけの器が相手になければ、相手の魔力に侵される。そうなると、一時的に体調を崩し、最悪の場合は死に至る。
性交渉の相手には、この魔力の相性も求められるのだ。
「アンヒム団長には、今までそういった相手はいらっしゃらないのでしょうか? その方に頼んだほうがよいのでは? その、恋人とか、奥様とか」
聖女が言うのは正論である。特定の相手がいる場合は、その特定に頼むのが一番いい。
だが――。
「団長は独身、彼女なし歴は年の数です。立派な童貞です」
ミロがここまで知っているのも、ニールが彼を信頼して包み隠さず話しているからだ。特に童貞情報はいらなかったのだが、彼の魔力の強さを考えれば納得のいくものだったし、ミロもその仲間だ。
むしろ、魔導士団に所属する者はそのような者が多い。全ては魔力の相性が原因だ。
だから、魔導士団に入団後に職場恋愛的な関係から交際を始め、結婚をする者も多いのだが、残念ながらミロとニールはまだそのような相手とは出会っていない。
ようはニールと釣り合う魔力の持ち主がいない。おまけで、ミロも。
だがちょっと偉い人が気づいた。ニールの相手だが、聖女ならイケるんじゃないか、と。ミロの場合は逆に聖女の能力によってやられてしまうから、高望みしないようにとまで釘を刺された。
その結果、ミロがこうやって床に頭をつけて、彼女にお願いしているのだ。
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