【R18】聖女さま、団長とまぐわっていただけませんか?

澤谷弥(さわたに わたる)

文字の大きさ
14 / 22

部下(2)

しおりを挟む
「それでは、団長が死んでしまうのです。ですから、どうか、聖女さま。団長とまぐわっていただけないでしょうか」

 魔物の毒素に侵されているニールは、激しい興奮状態に陥っていた。
 その状態が続けば、死に至る。そう、死に至るやまいである。

 魔物の毒素を受けた場合、適切な処理をしなければ死んでしまうのだ。その適切な処置というのが、男女の体液を交わらせる行為である。と、ミロは聖女に説明をした。

 適切な処置も魔物によって異なるが、今回の処置方法がたまたま男女の交わりなのである。そう、たまたまなのだ。

 実際、ニールは興奮状態に陥っているし、暴れていた。それを魔導士団の人間五人で取り押さえ、拘束した。拘束さえしてしまえばこっちのもんである。多分。

 そして、今回の魔物の毒素を抜くために必要なのは、男女の体液の交わりである。
 しかし、ニールの交わり可能な相手は聖女しかいない。むしろ聖女の相手もニールしかいない。
 だって、ちょっと偉い人が気づいてしまったのだ。この二人の相手はお互いにお互いしかいないということに。
 本当にどうにかしてほしい。聖女にニールの相手を拒まれたら、死んでしまうのはミロのほうである。

 聖女がまぐわい――いや体液の交わりを拒み、ニールを死なせたとなったら、彼に最も近い部下であるミロがお偉いさんから攻められるのが目に見えていた。
 お前も死をもって償えと、言われるかもしれない。

 お願いします、聖女さま。助けてください。どうか、団長と僕を救ってください。
 そう願っていたら、自然と涙が零れた。

 あの上司は、聖女のことを気に入っている。そして、魔物の毒素を受けたことを逆手にとり、彼女を手籠めにしようとしている。
 むっつりスケベもいいところだ。童貞のくせに。いや、この際童貞はどうでもいい。
 なぜ、さっさと気持ちを伝えないのか、ミロにはわからない。

「わかりました。アンヒム団長を、助けます」

 彼女は澄んだ声でそう言った。それを聞いたミロは心の中で聖女に感謝と謝罪をした。
 だが、聖女をニールのところにまで連れていくためには、いろいろと根回しをする必要があった。なぜなら、彼女が聖女だからだ。聖女が魔導士団長を救うとなれば、お偉いさんの中では大イベントである。特にあの国王は両手をあげて喜んでいるに違いない。

 そして、このいろいろなところへの根回しもミロの仕事でもあった。
 必要な手続きを終わらせた後、聖女をニールの部屋にまで連れて行った。

「ミロさん。あとは、私のほうでなんとかしますので」

 聖女がそう言ったときは、女神だと思った。いや、彼女は聖女だ。

「聖女さま。ありがとうございます。なにとぞ、団長を、団長をよろしくお願いします」

 これはミロの本心である。
 あのニールをなんとかできるのは聖女しかいない。むしろそのまま躾て、飼い慣らして欲しい。

 彼は上司を聖女に託したのだった。むしろ、まるっと丸投げしたのである――。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。

待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。

私が美女??美醜逆転世界に転移した私

恋愛
私の名前は如月美夕。 27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。 私は都内で独り暮らし。 風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。 転移した世界は美醜逆転?? こんな地味な丸顔が絶世の美女。 私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。 このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。 ※ゆるゆるな設定です ※ご都合主義 ※感想欄はほとんど公開してます。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

抱かれたい騎士No.1と抱かれたく無い騎士No.1に溺愛されてます。どうすればいいでしょうか!?

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ヴァンクリーフ騎士団には見目麗しい抱かれたい男No.1と、絶対零度の鋭い視線を持つ抱かれたく無い男No.1いる。 そんな騎士団の寮の厨房で働くジュリアは何故かその2人のお世話係に任命されてしまう。どうして!? 貧乏男爵令嬢ですが、家の借金返済の為に、頑張って働きますっ!

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

私が偽聖女ですって? そもそも聖女なんて名乗ってないわよ!

Mag_Mel
恋愛
「聖女」として国を支えてきたミレイユは、突如現れた"真の聖女"にその座を奪われ、「偽聖女」として王子との婚約破棄を言い渡される。だが当の本人は――「やっとお役御免!」とばかりに、清々しい笑顔を浮かべていた。 なにせ彼女は、異世界からやってきた強大な魔力を持つ『魔女』にすぎないのだから。自ら聖女を名乗った覚えなど、一度たりともない。 そんな彼女に振り回されながらも、ひたむきに寄り添い続けた一人の少年。投獄されたミレイユと共に、ふたりが見届けた国の末路とは――? *小説家になろうにも投稿しています

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

処理中です...