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おかしな兄妹(1)
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時間は現在に戻り、ここは国境の辺境。
マーティンは、今おかれている状況を隊員たちに簡単に説明した。まずはケガ人の治療を最優先。その後、魔物討伐、という流れ。やはりあの第三騎士隊がほぼ壊滅状態であることに驚きを隠せない第五の隊員たち。それでもマーティンが冷静に説明をしているからか、彼らも辛うじて冷静さを保てているようだ。
そうやって説明している中、一番後ろで「うんうん」と首を振りながら話を聞いているミレーヌと他騎士見習いが目に入った。
とりあえず、他のメンバーを各テントにあてがってから、マーティンは妹を呼び出した。
「ミレーヌ」
「はい、なんでしょう。マーティン隊長」
「いつものように呼んでくれないのか。兄さんは、寂しい」
「一応、任務中ですから。お兄様も公私混同なさらないようにお願いします」
隊長のくせにこういうところがダメなんだよな、とミレーヌは思う。でも、兄がいじけてしまうと今後の任務に影響が出るため、いじけないように兄の言うことをきくところがミレーヌの素直なところでもある。
「我が妹ミレーヌよ。回復魔法を使えるよな?」
兄は問う。
「いいえ、使ったことがありません。私は騎士ですから。何を根拠にそんなことをおっしゃるのですか?」
妹は答えた。
「いや、あの母上の娘だぞ? 使えるに決まっているではないか」
兄が変な持論を持ち出してきた。
「その理屈でいけば、お兄様も回復魔法が使えることになります」
ミレーヌのその言葉に反論できないマーティン。
と、そのとき、ミレーヌにはいつもの天の声が聞こえてきた。
――ミレーヌ。あなたは回復魔法が使えるわ。ここには、あなたの回復魔法を待っている人がいる。
(え? 私、回復魔法が使えるの?)と心の中で天の声に問う。
――えぇ、あなたのお兄様も言っていらしたでしょ。あなたはあの白魔導士団長の娘ですもの。潜在的な魔力が高いのよ。私が教えるから、この第三騎士隊のみんなを助けてあげて。
天の声はミレーヌにとって信じるべきに値するものである。この声が言うのであれば、ミレーヌも回復魔法が使える、はずだ、と思う。
「お兄様」
突然、ミレーヌが声をあげた。
「私、回復魔法でみなさんを救います」
「今、使えないと言っていただろう?」
マーティンのそのツッコミは適切である。
「厳密にいえば、使えないのではありません。使ったことがないのです」
ミレーヌのその答えも適切である。それに、先ほども使ったことがないと兄には伝えたはず。
「ですから、初めて使います。私の初めて、でよければ捧げます」
「いい。ミレーヌの初めてでいい。失敗してもいい。無いよりはマシだ。」
マーティンはミレーヌを第三騎士隊隊長のテントに案内した。やはりここには血の匂いが立ち込めている。
「副隊長、妹のミレーヌだ」
マーティンは第三の副隊長に律儀に紹介した。
そのためミレーヌも「騎士見習いのミレーヌです」と頭を下げる。
それにつられ、副隊長も自己紹介をする。
だけど彼としてはなぜこの場に騎士見習いを連れてきたのか理解できなかった。ただの妹自慢か、とさえ思ってしまった。
まぁ、自慢できるくらいの美人だから、目の保養にはなるけれど、いいかな、と副隊長は思っていた。
いや、っていうか妹って言ったか、今。
噂の団長の娘? と副隊長は驚く。
「ミレーヌ、やってみろ。彼は第三騎士隊隊長のエドガーだ」
ミレーヌは目の前で横になっている男に視線を向けた。体中、顔中、包帯でぐるぐる巻きにされている男。ところどころ、その包帯も赤く染められているのは、恐らく彼の血液によるもの。
「お兄様。この方に私の初めてを捧げればよろしいのですね」
「そうだ」
なんかおかしいぞ、この兄妹。と副隊長は思ったものの、声にも顔にも出さない。出してはいけない。
――ミレーヌ、回復魔法をかけたいところに右手の手の平を当てて。
天の声が言う。ミレーヌはその声に言われた通りに、まずはエドガーの顔に手の平を当てた。
――ほら、どんどん手のひらが温かくなってくるでしょ。
天の声が言う通り、手のひらが温かくなってくる。するとポワッと光の球が生まれて、それが回復したいと狙った場所を包み込む。
――回復魔法は、本人の治癒能力を高めるお手伝いをするものよ。だから、体力がある人の方が回復は早いの。
きっと、隊長を務めるくらいのエドガーなら体力もあるから早く回復する、ということを言いたいのだろう。
ただ相手は包帯ぐるぐる巻きのため、傷がよくなっているかどうかがわからない。
とりあえず、顔、そして胸、最後に足と三箇所にミレーヌは手の平をかざした。
最後の光の球が消えると、その包帯男がもぞもぞと動き出したため、副隊長がその顔の包帯を外し始める。
「気がつかれましたか、隊長!」
――よくやったわ、ミレーヌ。これで彼は大丈夫よ。
副隊長が顔の包帯を外そうしている。それをミレーヌは兄の後ろから、こそっと見ている。
包帯を外されたエドガーは、何のために包帯を巻かれていたかわからない状態になっていた。つまり、それだけ回復した、ということになる。
(ちょっと、初めてのわりにはすごくない?)とミレーヌは心の中で自画自賛。
――よくできたわ、ミレーヌ。あなたは騎士でありながらも回復魔法が使えるの。素晴らしいことだわ。それには自信をもってちょうだい。
ミレーヌは天の声に頷く。騎士でありながら回復魔法も使えるというのは、珍しいことではないのか。
マーティンは驚いた表情を浮かべて、エドガーを見ていた。
マーティンは、今おかれている状況を隊員たちに簡単に説明した。まずはケガ人の治療を最優先。その後、魔物討伐、という流れ。やはりあの第三騎士隊がほぼ壊滅状態であることに驚きを隠せない第五の隊員たち。それでもマーティンが冷静に説明をしているからか、彼らも辛うじて冷静さを保てているようだ。
そうやって説明している中、一番後ろで「うんうん」と首を振りながら話を聞いているミレーヌと他騎士見習いが目に入った。
とりあえず、他のメンバーを各テントにあてがってから、マーティンは妹を呼び出した。
「ミレーヌ」
「はい、なんでしょう。マーティン隊長」
「いつものように呼んでくれないのか。兄さんは、寂しい」
「一応、任務中ですから。お兄様も公私混同なさらないようにお願いします」
隊長のくせにこういうところがダメなんだよな、とミレーヌは思う。でも、兄がいじけてしまうと今後の任務に影響が出るため、いじけないように兄の言うことをきくところがミレーヌの素直なところでもある。
「我が妹ミレーヌよ。回復魔法を使えるよな?」
兄は問う。
「いいえ、使ったことがありません。私は騎士ですから。何を根拠にそんなことをおっしゃるのですか?」
妹は答えた。
「いや、あの母上の娘だぞ? 使えるに決まっているではないか」
兄が変な持論を持ち出してきた。
「その理屈でいけば、お兄様も回復魔法が使えることになります」
ミレーヌのその言葉に反論できないマーティン。
と、そのとき、ミレーヌにはいつもの天の声が聞こえてきた。
――ミレーヌ。あなたは回復魔法が使えるわ。ここには、あなたの回復魔法を待っている人がいる。
(え? 私、回復魔法が使えるの?)と心の中で天の声に問う。
――えぇ、あなたのお兄様も言っていらしたでしょ。あなたはあの白魔導士団長の娘ですもの。潜在的な魔力が高いのよ。私が教えるから、この第三騎士隊のみんなを助けてあげて。
天の声はミレーヌにとって信じるべきに値するものである。この声が言うのであれば、ミレーヌも回復魔法が使える、はずだ、と思う。
「お兄様」
突然、ミレーヌが声をあげた。
「私、回復魔法でみなさんを救います」
「今、使えないと言っていただろう?」
マーティンのそのツッコミは適切である。
「厳密にいえば、使えないのではありません。使ったことがないのです」
ミレーヌのその答えも適切である。それに、先ほども使ったことがないと兄には伝えたはず。
「ですから、初めて使います。私の初めて、でよければ捧げます」
「いい。ミレーヌの初めてでいい。失敗してもいい。無いよりはマシだ。」
マーティンはミレーヌを第三騎士隊隊長のテントに案内した。やはりここには血の匂いが立ち込めている。
「副隊長、妹のミレーヌだ」
マーティンは第三の副隊長に律儀に紹介した。
そのためミレーヌも「騎士見習いのミレーヌです」と頭を下げる。
それにつられ、副隊長も自己紹介をする。
だけど彼としてはなぜこの場に騎士見習いを連れてきたのか理解できなかった。ただの妹自慢か、とさえ思ってしまった。
まぁ、自慢できるくらいの美人だから、目の保養にはなるけれど、いいかな、と副隊長は思っていた。
いや、っていうか妹って言ったか、今。
噂の団長の娘? と副隊長は驚く。
「ミレーヌ、やってみろ。彼は第三騎士隊隊長のエドガーだ」
ミレーヌは目の前で横になっている男に視線を向けた。体中、顔中、包帯でぐるぐる巻きにされている男。ところどころ、その包帯も赤く染められているのは、恐らく彼の血液によるもの。
「お兄様。この方に私の初めてを捧げればよろしいのですね」
「そうだ」
なんかおかしいぞ、この兄妹。と副隊長は思ったものの、声にも顔にも出さない。出してはいけない。
――ミレーヌ、回復魔法をかけたいところに右手の手の平を当てて。
天の声が言う。ミレーヌはその声に言われた通りに、まずはエドガーの顔に手の平を当てた。
――ほら、どんどん手のひらが温かくなってくるでしょ。
天の声が言う通り、手のひらが温かくなってくる。するとポワッと光の球が生まれて、それが回復したいと狙った場所を包み込む。
――回復魔法は、本人の治癒能力を高めるお手伝いをするものよ。だから、体力がある人の方が回復は早いの。
きっと、隊長を務めるくらいのエドガーなら体力もあるから早く回復する、ということを言いたいのだろう。
ただ相手は包帯ぐるぐる巻きのため、傷がよくなっているかどうかがわからない。
とりあえず、顔、そして胸、最後に足と三箇所にミレーヌは手の平をかざした。
最後の光の球が消えると、その包帯男がもぞもぞと動き出したため、副隊長がその顔の包帯を外し始める。
「気がつかれましたか、隊長!」
――よくやったわ、ミレーヌ。これで彼は大丈夫よ。
副隊長が顔の包帯を外そうしている。それをミレーヌは兄の後ろから、こそっと見ている。
包帯を外されたエドガーは、何のために包帯を巻かれていたかわからない状態になっていた。つまり、それだけ回復した、ということになる。
(ちょっと、初めてのわりにはすごくない?)とミレーヌは心の中で自画自賛。
――よくできたわ、ミレーヌ。あなたは騎士でありながらも回復魔法が使えるの。素晴らしいことだわ。それには自信をもってちょうだい。
ミレーヌは天の声に頷く。騎士でありながら回復魔法も使えるというのは、珍しいことではないのか。
マーティンは驚いた表情を浮かべて、エドガーを見ていた。
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