皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました

澤谷弥(さわたに わたる)

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おかしな兄妹(2)

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「ここは……」
 どうやらエドガーは動けるようになったようだ。額に手を当て何かを思い出そうとしながら、身体を起こす。

「派手にやられたな、エドガー」
 マーティンも安心したのか、そう声をかけた。

「その声は、マーティン。なんだ、第五騎士隊が来たのか」

「なんだとはなんだ。誰が回復魔法をかけたと思っている」

「お前が連れてきた魔導士ではないのか」

「何を言う。かわいい我が妹のミレーヌだ。ミレーヌが回復魔法をかけた」

「マーティンの妹? ああ、噂の団長の娘か」

 噂の団長の娘。団長に似ているから、魔導科をやめて騎士科に進学したと言われている娘と聞いている。

「かわいい我が妹は、尊敬する兄である私の後を追って、今では騎士見習いだ」

 騎士見習いなのに回復魔法を? とエドガーは思う。だが、命の恩人にかわりはない

「ミレーヌ」とエドガーが彼女の名前を呼ぶ。

「おい、呼び捨てにするな」とマーティンが言う。

 ちょっとめんどくさい、とエドガーは思った。

「ミレーヌ嬢」

 次は敬称をつけてその名を呼ぶ。呼ばれたミレーヌは「はい」と返事をして、兄の隣に並ぶ。

「あらためてお礼を言う。ありがとう」

「いいえ、どういたしまして。騎士として当たり前のことをしただけです。ちょっと私の初めてでしたので、自信がありませんでしたが」

 そこで初めてミレーヌは、第三騎士隊隊長であるエドガーの顔を見た。

 ――ミレーヌのタイプでしょ。

 ふふっと、いたずらな天の声が言う。その通り。目の前には理想の顔が。

 黒い髪は長く美しく。そして切れ長の黒い目。ちょっと不愛想な顔。よく言えば、クール。そして何よりも、父や兄には無い別な何かが溢れている。

 エドガーも命の恩人であるミレーヌを見つめた。

 マーティンの妹、と言っていたよな? と、思いながらも彼女を見つめる。

 二人の視線が絡まり合う。

「おい、二人の世界を作るな」

 そこでマーティンが口を挟んだ。

「いや、本当に貴様の妹なのか?」

「なんだと?」

「似ていないにも、程があるだろう」

「あの、エドガー隊長」とそこで口を挟んだのはミレーヌ。
「視力の回復魔法も必要でしょうか?お兄様と私は、このつぶらな目がよく似ていると言われております」

 そう言われるとそうかもしれないが。でも、そうじゃない。こう、全体的にそうじゃない。
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