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ふしぎな少女(1)
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ここで少し、ミレーヌの家族について話をしよう。
シラク公爵と公爵夫人は野獣と美女と言われている夫婦であった。それは今でも継続中。
騎士団の団長である公爵は、それはもう、身体は大きく、いかつく、顔のもじゃもじゃ髭がさらに貫録をつけていた。
本人が言うには、団長らしい顔になりたいから、もじゃもじゃ髭にしたらしい。でもやっぱり、顔から溢れる優しさはごまかしきれない、とミレーヌは思う。
そもそも団長らしい顔ってなんだろう、と思っている。
シラク公爵は、動物に例えると、可愛く言えば、熊、ごつく言えば、ゴリラ。公爵夫人は白魔導士なだけあって、可憐で儚い、ように見える。動物で言えば、猫? ウサギ?
こんなに正反対の二人がなぜ一緒になったかというと。
父親が言うには、母の方が父親に惚れたらしい。
母親が言うには、父の優しさに惚れたらしい。
はいはい、ごちそうさま、と二人ののろけ話を聞くたびにミレーヌは思っている。だけど、このような相手に出会うことができた両親が羨ましいと、心のどこかでは思っていた。
そして兄のマーティンは、おもいきり父親似のただの筋肉ゴリラであった。残念ながらイケメン筋肉ゴリラではない。ただの優しさ溢れるゴリラ。よく言えば、優しさ溢れる熊。
妹のミレーヌはどこからどう見ても母親似の小動物系。父と似ているのはつぶらな瞳くらい。
そのためか、騎士科に進学したであろうミレーヌは、父親似のゴリラであることを想像されていたようだ。容姿がゴリラだから、わざと皇族の婚約者候補から外れる騎士科を選んだ、とも言われている。
噂は噂。言いたい奴には好きに言わせておけ、というのがシラク公爵の方針。この場合、シラク公爵が言う噂とは、婚約者候補から外れるために騎士科を選んだ、という後ろの部分を指すものであり、ミレーヌが父親似のゴリラであると思われている、という方ではない。
実際にミレーヌの姿を見た者は、噂がただの噂であったことを知り、ミレーヌ嬢、ミレーヌ嬢とかわいがってくれる。それがこの第五騎士隊のメンバーたちだ。ただしこちらの場合の噂とは、父親似のほうを指している。
噂がたくさんあると、紛らわしい。
「お兄様、次の方の治療にいきましょう」
回復魔法が使えると知ったミレーヌはやる気満々だ。
「そうだな。副隊長、次のテントに案内してくれ」
「いや、私が同行しよう」
起き上がったエドガーは、そのベッドからおりようとしている。
「ケガ人は寝ていろよ」
それはマーティンの本心なのか、それとも可愛い妹と他の男が一緒にいるのを、面白くないと思っているのか。
「おかげさまで怪我は治った。そして、これから治療する怪我人は私の部下たちだ。だから私が案内しよう」
エドガーはベッドからおり、血の染みた包帯を外す。それを黙って手伝うのがマーティン。なんだかんだで、仲が良いんじゃないの、この二人。とミレーヌは思う。
「お兄様。私、すごくないですか?」
実際、エドガーが動けるようになったことで全身の怪我の回復具合はわかっていたのだが、包帯を外したことで、よりその回復具合が目に見てわかる。
「さすがミレーヌだ」とマーティンは喜んで、ミレーヌの頭を撫でる。
そして頭を撫でられたミレーヌは嬉しそうに目を細めた。仲の良い兄妹に見える。いや、本当に仲は良い。
そんな兄妹のやり取りをエドガーは眩しそうに見つめていた。むしろ、ミレーヌの方を。
☆☆
ミレーヌ・シラク。この騎士団長の娘でありマーティンの妹である彼女。
彼女が魔導科ではなく騎士科へ進学する、と決めた年には、関係者一同で揉めたらしい。それでも彼女が自分の道を進めるように、とその後押しをしたのが父親であり、この騎士団の団長であるシラク団長その人だ。
裏では、そのミレーヌ嬢があまりにも父親である団長に似ているため、わざと皇族の婚約者候補からはずれる騎士科へ進学させたのではないか、とも言われていた。
それが、半分当たりで半分外れであることを知っているのは、天の声だけ。
いや、ミレーヌだって父親に似ていなくはないのだ。
優しそうな目元は、お父さんそっくりね、といつも母親が褒めてくれる。母親は、少しきつい目を気にしているらしい。それが凛としてかっこいいんだけれど。
むしろ、母親を男にしてくれたら、まさしくミレーヌの理想の顔である。
ここでまた少し、時間は遡り、ミレーヌと出会う前のエドガーのお話。
シラク公爵と公爵夫人は野獣と美女と言われている夫婦であった。それは今でも継続中。
騎士団の団長である公爵は、それはもう、身体は大きく、いかつく、顔のもじゃもじゃ髭がさらに貫録をつけていた。
本人が言うには、団長らしい顔になりたいから、もじゃもじゃ髭にしたらしい。でもやっぱり、顔から溢れる優しさはごまかしきれない、とミレーヌは思う。
そもそも団長らしい顔ってなんだろう、と思っている。
シラク公爵は、動物に例えると、可愛く言えば、熊、ごつく言えば、ゴリラ。公爵夫人は白魔導士なだけあって、可憐で儚い、ように見える。動物で言えば、猫? ウサギ?
こんなに正反対の二人がなぜ一緒になったかというと。
父親が言うには、母の方が父親に惚れたらしい。
母親が言うには、父の優しさに惚れたらしい。
はいはい、ごちそうさま、と二人ののろけ話を聞くたびにミレーヌは思っている。だけど、このような相手に出会うことができた両親が羨ましいと、心のどこかでは思っていた。
そして兄のマーティンは、おもいきり父親似のただの筋肉ゴリラであった。残念ながらイケメン筋肉ゴリラではない。ただの優しさ溢れるゴリラ。よく言えば、優しさ溢れる熊。
妹のミレーヌはどこからどう見ても母親似の小動物系。父と似ているのはつぶらな瞳くらい。
そのためか、騎士科に進学したであろうミレーヌは、父親似のゴリラであることを想像されていたようだ。容姿がゴリラだから、わざと皇族の婚約者候補から外れる騎士科を選んだ、とも言われている。
噂は噂。言いたい奴には好きに言わせておけ、というのがシラク公爵の方針。この場合、シラク公爵が言う噂とは、婚約者候補から外れるために騎士科を選んだ、という後ろの部分を指すものであり、ミレーヌが父親似のゴリラであると思われている、という方ではない。
実際にミレーヌの姿を見た者は、噂がただの噂であったことを知り、ミレーヌ嬢、ミレーヌ嬢とかわいがってくれる。それがこの第五騎士隊のメンバーたちだ。ただしこちらの場合の噂とは、父親似のほうを指している。
噂がたくさんあると、紛らわしい。
「お兄様、次の方の治療にいきましょう」
回復魔法が使えると知ったミレーヌはやる気満々だ。
「そうだな。副隊長、次のテントに案内してくれ」
「いや、私が同行しよう」
起き上がったエドガーは、そのベッドからおりようとしている。
「ケガ人は寝ていろよ」
それはマーティンの本心なのか、それとも可愛い妹と他の男が一緒にいるのを、面白くないと思っているのか。
「おかげさまで怪我は治った。そして、これから治療する怪我人は私の部下たちだ。だから私が案内しよう」
エドガーはベッドからおり、血の染みた包帯を外す。それを黙って手伝うのがマーティン。なんだかんだで、仲が良いんじゃないの、この二人。とミレーヌは思う。
「お兄様。私、すごくないですか?」
実際、エドガーが動けるようになったことで全身の怪我の回復具合はわかっていたのだが、包帯を外したことで、よりその回復具合が目に見てわかる。
「さすがミレーヌだ」とマーティンは喜んで、ミレーヌの頭を撫でる。
そして頭を撫でられたミレーヌは嬉しそうに目を細めた。仲の良い兄妹に見える。いや、本当に仲は良い。
そんな兄妹のやり取りをエドガーは眩しそうに見つめていた。むしろ、ミレーヌの方を。
☆☆
ミレーヌ・シラク。この騎士団長の娘でありマーティンの妹である彼女。
彼女が魔導科ではなく騎士科へ進学する、と決めた年には、関係者一同で揉めたらしい。それでも彼女が自分の道を進めるように、とその後押しをしたのが父親であり、この騎士団の団長であるシラク団長その人だ。
裏では、そのミレーヌ嬢があまりにも父親である団長に似ているため、わざと皇族の婚約者候補からはずれる騎士科へ進学させたのではないか、とも言われていた。
それが、半分当たりで半分外れであることを知っているのは、天の声だけ。
いや、ミレーヌだって父親に似ていなくはないのだ。
優しそうな目元は、お父さんそっくりね、といつも母親が褒めてくれる。母親は、少しきつい目を気にしているらしい。それが凛としてかっこいいんだけれど。
むしろ、母親を男にしてくれたら、まさしくミレーヌの理想の顔である。
ここでまた少し、時間は遡り、ミレーヌと出会う前のエドガーのお話。
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