皇子の婚約者になりたくないので天の声に従いました

澤谷弥(さわたに わたる)

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ふしぎな少女(2)

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☆☆

 第三騎士隊は国境の町からの要請を受けて、その国境の辺境へ派遣された。まぁ、要請されたのは騎士団で、第三騎士隊を派遣しようと決めたのは、団長をはじめとする偉い人たちなのだが。
 そもそも国境の辺境は魔物が出やすいとされている。その魔物が、辺境からちょくちょく町に足を伸ばしているらしく、それで困った町の代表が国へ助けを求めたという流れである。

 第三騎士隊を、と決めたのにもそれなりに理由はあった。
 騎士団は第一騎士隊から第十騎士隊まであり、ぶっちゃけ強い順に一から十。第一は主に王族の警護や王都の警備が対象。第二からは地方やら僻地やらに派遣される。そのとき手が空いていたのが第三騎士隊であったのと、やっぱり第三騎士隊だから、という理由で、偉い人が派遣を決めた。

 ただ運が悪かったことに、魔物討伐を行うには天候がよくなかった。この時期のこの辺境は雨期なのだ。雨が降り、地面がぬかるみ、思ったように動きがとれない。さらに、雨は体温を奪う。

 そのぬかるみに足をとられた第三騎士隊の副隊長を、一体の魔物が襲った。
 あぁ、ダメかも。と副隊長が思ったとき、それをかばったのは隊長であるエドガーであった。

「隊長!」

「無事か!?」

「はい……」

「とりあえず、指揮はお前が取れ。動ける黒魔導士で魔物を追い払え。まだ魔力が残っている白魔導士は、怪我をしている他の隊員の回復に専念。わかったな」

「隊長は」

「私のことは気にするな。いいから早く指揮を取れ。全滅したいのか」

 言い、自分のかわりに隊員と魔導士たちに指示をする副隊長の後ろ姿を目にしたのが、エドガーが覚えている限り記憶の最後、だったと思う。

 意識が遠のき、痛みで意識が戻るような感覚。それを繰り返す。
 これがいつ終わるのかわからない、というそんな不安の中、目の前の眩しい光に導かれ目を開けた。
 だが、何も見えないのは何かが視界を遮っているからだ。

「気が付かれましたか! 隊長」
 いつもの副隊長の声が聞こえた。顔に誰かの手が伸びてきて、視界を遮っているものを外そうとする。

「ここは……」
 記憶を思い起こしながら、ゆっくりと身体を起こす。

「派手にやられたな、エドガー」
 よく耳に馴染んだ声が聞こえる。ああ、その声は。

「その声は、マーティン。なんだ、第五騎士隊が来たのか」

「なんだとはなんだ。誰が回復魔法をかけたと思っている」

 魔導士だろ、何を当たり前のことを言っている。あまりにも脳みそがお花畑で、とうとういかれてしまったか、と思った。
 だが、回復魔法をかけたのは、騎士見習いの妹だという。騎士見習いのくせに回復魔法を、だと?

 礼を言うためにその名を呼ぶと、マーティンの身体の後ろにすっぽりと隠れていた少女が、顔をのぞかせた。
 第一印象は、マーティンと似ていない、と思った。
 礼を言うと、当たり前のこと、と言って微笑んでいた。
 こういうところはマーティンに似ていなくもないけれど。ただ、彼女のその一言が、心をあたたかくするのは何故だろう、と思った。

 死にたくなる感情から救い出してくれた彼女。初めて湧く感情に戸惑いを感じる。と共に、この少女にちょっと興味が湧いた。
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