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内緒のデート(1)
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建国祭の期間が始まった。そして今日は、ミレーヌにとってエドガーと約束の日であった。何を着ていこうか、とか。どんな髪型にしようか、とか。悩んでいるにも関わらず、天の声は静かだった。仕方なく、侍女に手伝ってもらい、動きやすくてお祭りに適した服と髪型をお願いした。
そしてミレーヌは、従者に祭会場の入口まで送ってもらった。送らなくてもいいと言ったのだが、それでは私が旦那様から、とかなんとか言われてしまい、渋々とそれを承諾した。だけど、帰りは友達と帰りますから、と言って、従者の迎えを断ることに成功した。
実はそうするように、と、エドガーからの手紙に書いてあったのである。
帰りは送らせてほしい――、と。
シラク公爵と公爵夫人は仕事で不在である。あの屋敷にいるのは兄だけであり、その兄に見つかるといろいろ問題があるが、確か今日は、急遽仕事が入ってしまったとかなんとか言っていたような気がする。その兄が帰宅する前に帰れば、エドガーとの逢瀬もバレないだろうとミレーヌは思っていた。
いやもしかしたら兄は、今日は帰ってくることができないかもしれない。それならもっと安心だ。
エドガーとの待ち合わせは噴水の前だった。わかりやすい場所。待ち合わせとしては定番の場所である。
いつもの騎士服ではないけれど、遠目から見ても彼だとわかった。どうやら、好みの容姿というものは遠目からでもわかるようにできているらしい。
ミレーヌは彼に気づかれないようにそっと後ろから声をかける。
「お待たせしました、エドガー隊長」
驚くかな、と思っていろんな期待をしていたにも関わらず、さすが騎士隊隊長。気配で察していたらしい。
「今日は、わざわざ来てもらって悪かった」
驚きもせず、エドガーは少し顔を緩めてそう言った。
「いいえ。私も、隊長からお祭りに誘っていただけて、とても楽しみにしていました。ありがとうございます」
ミレーヌはペコリと頭を下げた。まとめていない部分の髪の毛も一緒に、ペコリと揺れる。
普段は高い位置で一つに縛られている彼女の髪も、今日は後ろ側の上の一部分の髪だけを結んでいる、いわゆるハーフアップという髪型。以前の元気な印象とは違い、可愛らしい感じがする、とエドガーは心の中で思った。
「その」とエドガーは口元に手を当てる。
「隊長と呼ぶのをやめていただけないだろうか」
その言葉にミレーヌは首を傾ける。
「エドガーと呼んで欲しい」
「わかりました、エドガー隊長」
ミレーヌが元気よく答えると。
「だから、隊長はいらん」
「はい、エドガーさん」
エドガーはこれ以上言っても、これ以上の呼び方の進展は難しいだろうと思い、「さん」付けで妥協した。
「君に、あのときの御礼をしたいと思って、いろいろ考えたのだが。何がいいのかわからなくて」
「御礼なんていりませんよ。私は騎士として当然のことをしただけですから」
そう言って笑むミレーヌの姿は、マーティンに似てなくもないな、とエドガーは思った。顔は似ていない。だけど、仕草がどことなく似ているのだ。これが兄妹というものなのだろうか。
「君にとっては当然のことかもしれないが、私にとっては命の恩人だ」
エドガーは真面目な表情で伝えた。
「大げさですよ」
やはりミレーヌは笑っている。どうしたらこの気持ちが伝わるのか、エドガーにとってはもどかしいところでもある。
「そうか、では行くとするか」
エドガーは諦めた。諦めて、そっと手を差し出した。
自然とエドガーが右手を差し出してきたので、ミレーヌも自分の左手を差し出すと、その手を取られた。
「今日は特に人が多いから、はぐれたら大変だ」
と、エドガーが目尻に皺を刻んで言う。
「まるでお兄様みたいです」とミレーヌは笑う。「私が迷子にならないようにって」
エドガーとしてはいささか複雑な心境になってしまった。それでも右手からはほのかに彼女の体温を感じることができたので、そこでまた顔をゆるめてしまった。
そしてミレーヌは、従者に祭会場の入口まで送ってもらった。送らなくてもいいと言ったのだが、それでは私が旦那様から、とかなんとか言われてしまい、渋々とそれを承諾した。だけど、帰りは友達と帰りますから、と言って、従者の迎えを断ることに成功した。
実はそうするように、と、エドガーからの手紙に書いてあったのである。
帰りは送らせてほしい――、と。
シラク公爵と公爵夫人は仕事で不在である。あの屋敷にいるのは兄だけであり、その兄に見つかるといろいろ問題があるが、確か今日は、急遽仕事が入ってしまったとかなんとか言っていたような気がする。その兄が帰宅する前に帰れば、エドガーとの逢瀬もバレないだろうとミレーヌは思っていた。
いやもしかしたら兄は、今日は帰ってくることができないかもしれない。それならもっと安心だ。
エドガーとの待ち合わせは噴水の前だった。わかりやすい場所。待ち合わせとしては定番の場所である。
いつもの騎士服ではないけれど、遠目から見ても彼だとわかった。どうやら、好みの容姿というものは遠目からでもわかるようにできているらしい。
ミレーヌは彼に気づかれないようにそっと後ろから声をかける。
「お待たせしました、エドガー隊長」
驚くかな、と思っていろんな期待をしていたにも関わらず、さすが騎士隊隊長。気配で察していたらしい。
「今日は、わざわざ来てもらって悪かった」
驚きもせず、エドガーは少し顔を緩めてそう言った。
「いいえ。私も、隊長からお祭りに誘っていただけて、とても楽しみにしていました。ありがとうございます」
ミレーヌはペコリと頭を下げた。まとめていない部分の髪の毛も一緒に、ペコリと揺れる。
普段は高い位置で一つに縛られている彼女の髪も、今日は後ろ側の上の一部分の髪だけを結んでいる、いわゆるハーフアップという髪型。以前の元気な印象とは違い、可愛らしい感じがする、とエドガーは心の中で思った。
「その」とエドガーは口元に手を当てる。
「隊長と呼ぶのをやめていただけないだろうか」
その言葉にミレーヌは首を傾ける。
「エドガーと呼んで欲しい」
「わかりました、エドガー隊長」
ミレーヌが元気よく答えると。
「だから、隊長はいらん」
「はい、エドガーさん」
エドガーはこれ以上言っても、これ以上の呼び方の進展は難しいだろうと思い、「さん」付けで妥協した。
「君に、あのときの御礼をしたいと思って、いろいろ考えたのだが。何がいいのかわからなくて」
「御礼なんていりませんよ。私は騎士として当然のことをしただけですから」
そう言って笑むミレーヌの姿は、マーティンに似てなくもないな、とエドガーは思った。顔は似ていない。だけど、仕草がどことなく似ているのだ。これが兄妹というものなのだろうか。
「君にとっては当然のことかもしれないが、私にとっては命の恩人だ」
エドガーは真面目な表情で伝えた。
「大げさですよ」
やはりミレーヌは笑っている。どうしたらこの気持ちが伝わるのか、エドガーにとってはもどかしいところでもある。
「そうか、では行くとするか」
エドガーは諦めた。諦めて、そっと手を差し出した。
自然とエドガーが右手を差し出してきたので、ミレーヌも自分の左手を差し出すと、その手を取られた。
「今日は特に人が多いから、はぐれたら大変だ」
と、エドガーが目尻に皺を刻んで言う。
「まるでお兄様みたいです」とミレーヌは笑う。「私が迷子にならないようにって」
エドガーとしてはいささか複雑な心境になってしまった。それでも右手からはほのかに彼女の体温を感じることができたので、そこでまた顔をゆるめてしまった。
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