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第一章:結婚 x 結婚(5)
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どうしたものかと思って「う~ん、う~ん」と唸っていたら「うるさいです」とネイサンから突っ込まれる始末。
「やはり、クラリス嬢も結婚を断れないそうだ」
「そうでしょうね。国王陛下からの命令ですからね」
「もし、俺に好きな女性がいるなら、それを理由に断ってくれと書いてある」
「いるんですか? 好きな女性」
なぜかネイサンが食いついてきた。身を乗り出して、ユージーンの顔をのぞき込んでくる。
「いない、いるわけないだろう。だから、離婚前提の結婚をクラリス嬢に提案したんだ。結婚すれば世継ぎの話は出てくるだろうが、離婚した後に、どこから養子をもらうことも考えているから、それは問題ない」
「ユージーン様。枯れるのが早いです。とりあえず、クラリス嬢との結婚は受けると、陛下にちゃちゃっと返事をしてしまいましょう。世継ぎなりなんなりは、クラリス嬢と離婚した後に。もしかしたら、陛下がまた離婚後に別の女性をあてがってくれるかもしれませんし」
相変わらず失礼なネイサンであるが、二年後のことは二年後に考える。
ユージーンはクラリスへの返事を書くより先に、国王には「結婚を受ける」「素敵な縁に感謝する」といった、差し障りのない返事を出した。
それからしばらくしてクラリスに向けて手紙を書く。
ユージーンに好きな女性はいないこと。だから、国王には正式に結婚を受けると返事を出したこと。あとは、クラリスが好きなときにこちらに来てくれればいい――
国王への返事はすらすらとペンが動いたのに、クラリスへの手紙は、ところどころ言葉に詰まってしまった。
ユージーンが国王に正式に返事を出したためか、クラリスとの結婚の話はとんとんと進み始めた。ユージーンも一度はベネノ侯爵邸に足を運んで挨拶をすべきだと思っていたが、なかなかウォルター領を離れられない。魔獣が現れたという報告はないものの、討伐で領地を離れていたときの状況を確認したり、さらに領地内を見回ったりとしていたら、あっという間に二か月が過ぎた。
それが落ち着いたからベネノ侯爵に訪問の伺いを出そうとしたところ、クラリスがウォルター領に来るという連絡が入った。どうやら、国王たちにせっつかれたらしい。
挨拶ができなくて申し訳ないとベネノ侯爵から謝罪の手紙が届いたが、それはユージーンも同じである。ただベネノ侯爵はユージーンの立場をよくわかっているようで、結婚式の日取りなどはすべてユージーンの都合に合わせると書いてあった。
ベネノ侯爵は、この結婚が離婚前提の結婚であることを知らないのだろう。娘が結婚する喜びがひしひしと伝わってくる手紙であった。
クラリスが王都を発つと連絡を受けた翌日。魔獣の群れが北西の村のほうに現れたと連絡が入った。すぐさま魔獣討伐団を招集し、北西に向かう準備をする。
だが、クラリスもやってくる。
クラリスと会ったら、すぐさま結婚誓約書にサインをし、彼女と共にやってきた騎士に手渡すようにと、国王からの手紙には書いてあった。よっぽどこの結婚を急がせたいようだ。
「ネイサン。すまない。クラリス嬢が来たら、この誓約書にサインをもらってくれ」
「承知しました。ですが、もし、もしもですよ。クラリス嬢がやっぱりユージーン様との結婚は嫌だって騒いで、この紙をビリビリって破いたらどうします?」
「予備も用意してある。俺の机の一番上の引き出しにある。クラリス嬢が破ったらそこから予備を出してくれ。サインをもらえたら、予備の用紙は処分してくれ」
クラリスがどのような女性か。会えるのを楽しみにしていた。
しかし魔獣が現れてしまえば、それを倒して人々を守るのがユージーンに課せられた責務である。事前に届いた情報によれば、今回は長期戦になりそうだ。いつ、ここへ戻ってこれるのかわからない。もしかしたら――
そんな最悪な事態を考えつつ、ユージーンは魔獣討伐団を率いて北西の村に向けて旅立った。
「やはり、クラリス嬢も結婚を断れないそうだ」
「そうでしょうね。国王陛下からの命令ですからね」
「もし、俺に好きな女性がいるなら、それを理由に断ってくれと書いてある」
「いるんですか? 好きな女性」
なぜかネイサンが食いついてきた。身を乗り出して、ユージーンの顔をのぞき込んでくる。
「いない、いるわけないだろう。だから、離婚前提の結婚をクラリス嬢に提案したんだ。結婚すれば世継ぎの話は出てくるだろうが、離婚した後に、どこから養子をもらうことも考えているから、それは問題ない」
「ユージーン様。枯れるのが早いです。とりあえず、クラリス嬢との結婚は受けると、陛下にちゃちゃっと返事をしてしまいましょう。世継ぎなりなんなりは、クラリス嬢と離婚した後に。もしかしたら、陛下がまた離婚後に別の女性をあてがってくれるかもしれませんし」
相変わらず失礼なネイサンであるが、二年後のことは二年後に考える。
ユージーンはクラリスへの返事を書くより先に、国王には「結婚を受ける」「素敵な縁に感謝する」といった、差し障りのない返事を出した。
それからしばらくしてクラリスに向けて手紙を書く。
ユージーンに好きな女性はいないこと。だから、国王には正式に結婚を受けると返事を出したこと。あとは、クラリスが好きなときにこちらに来てくれればいい――
国王への返事はすらすらとペンが動いたのに、クラリスへの手紙は、ところどころ言葉に詰まってしまった。
ユージーンが国王に正式に返事を出したためか、クラリスとの結婚の話はとんとんと進み始めた。ユージーンも一度はベネノ侯爵邸に足を運んで挨拶をすべきだと思っていたが、なかなかウォルター領を離れられない。魔獣が現れたという報告はないものの、討伐で領地を離れていたときの状況を確認したり、さらに領地内を見回ったりとしていたら、あっという間に二か月が過ぎた。
それが落ち着いたからベネノ侯爵に訪問の伺いを出そうとしたところ、クラリスがウォルター領に来るという連絡が入った。どうやら、国王たちにせっつかれたらしい。
挨拶ができなくて申し訳ないとベネノ侯爵から謝罪の手紙が届いたが、それはユージーンも同じである。ただベネノ侯爵はユージーンの立場をよくわかっているようで、結婚式の日取りなどはすべてユージーンの都合に合わせると書いてあった。
ベネノ侯爵は、この結婚が離婚前提の結婚であることを知らないのだろう。娘が結婚する喜びがひしひしと伝わってくる手紙であった。
クラリスが王都を発つと連絡を受けた翌日。魔獣の群れが北西の村のほうに現れたと連絡が入った。すぐさま魔獣討伐団を招集し、北西に向かう準備をする。
だが、クラリスもやってくる。
クラリスと会ったら、すぐさま結婚誓約書にサインをし、彼女と共にやってきた騎士に手渡すようにと、国王からの手紙には書いてあった。よっぽどこの結婚を急がせたいようだ。
「ネイサン。すまない。クラリス嬢が来たら、この誓約書にサインをもらってくれ」
「承知しました。ですが、もし、もしもですよ。クラリス嬢がやっぱりユージーン様との結婚は嫌だって騒いで、この紙をビリビリって破いたらどうします?」
「予備も用意してある。俺の机の一番上の引き出しにある。クラリス嬢が破ったらそこから予備を出してくれ。サインをもらえたら、予備の用紙は処分してくれ」
クラリスがどのような女性か。会えるのを楽しみにしていた。
しかし魔獣が現れてしまえば、それを倒して人々を守るのがユージーンに課せられた責務である。事前に届いた情報によれば、今回は長期戦になりそうだ。いつ、ここへ戻ってこれるのかわからない。もしかしたら――
そんな最悪な事態を考えつつ、ユージーンは魔獣討伐団を率いて北西の村に向けて旅立った。
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