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昨夜はお楽しみでしたね(4)
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図書館の入口に立つと、ガラスの扉がウィンと勝手に開く。自動扉があるのに、全自動洗濯機はない。むしろ、魔法扉とか全魔法洗濯機とか言ったほうがいいのだろうか。
カウンターにいる係の人は、王宮文官と呼ばれる人らしい。王宮文官とは、公務員みたいなものだろう。
「こんにちは」
いつもの女性が声をかけてくれた。私も「こんにちは」と返す。
なんとなく暇つぶしに足を運んでいる図書館なのだが、今日は目的がはっきりとしていた。
「あのぅ。マナーとか行儀の本ってありますか?」
「ありますよ」
「僕が案内しましょう」
第三者の声が、割って入る。
「あ、えっと」
誰だっけ?
よく、図書館で顔を合わせる男性。さらさらと流れ落ちるような砂金のような髪。この世界で金髪は珍しくはないけれども、ここまでさらさら金髪はあまり見ない。みな、どこか癖があるのだ。さらさら金髪といえば、私が知っているかぎりでは、ウィルフォードとオルガー大公と国王くらいである。
「イライアスです。ライと呼んでほしいと、以前にもお伝えしたはずですが」
そうだっけ? と首を傾げると、イライアスは少しだけ淋しそうに微笑んだ。
「僕って、そんなに印象が薄いですかね?」
「そ、そんなことないですよ。私が忘れっぽいというか、物覚えが悪いというか」
覚えが悪い自覚はある。
「ご、ごめんなさい」
それは何度もあそこで口にした言葉。
「いえ、僕も意地悪しすぎました。でも、これからは覚えていただけると嬉しいです」
「わかりました、ライさん。これから、よろしくお願いします」
その言葉で、イライアスは明るい笑みを作った。後ろにキラキラとお星様が見えるような笑みである。
「はい。では、書棚に案内しますね」
私が彼の後ろをついていこうとすると、カウンターの女性が小さな握りこぶしを作って微笑んでいる。それはまるで「頑張って」と何かを応援しているようにも見えるのだが。
案内された場所は、一番奥に並んでいる書棚。
「マナーとか行儀の本でしたよね?」
「あ、はい。その、挨拶の仕方とか、まぁ、そういった基本的なところから学びたいのですが」
「なるほど。健気ですね」
何に対して健気なのか、さっぱりとわからない。
「こちらにあります。アイリさんなら、この辺の本がよろしいのではないでしょうか?」
イライアスは書棚から一冊の本を抜き取り、中身をパラパラと確認する。それを私が横からのぞき込む。
イラストが多くてわかりやすい。
「あ、まずはこれにしてみます」
「よかった。気に入ってもらえて。他にもオススメの本があるのですが、どうですか?」
オススメしてくれるのなら、その行為をありがたく受け取る。なんだかんだで、まだこの国、いやこの世界には疎いのだ。もしかしたら、私の常識とは異なる隠れたマナーがあるかもしれないし。
「是非とも、お願いします」
「では、こちらに」
マナーの本はこの書棚にあると言っていたのに、違う書棚に案内される。
「あの、こちらにはどんな本があるのでしょう?」
「伝説の異界人について、ですかね?」
ドッキンと心臓が大きく動いた。
「えぇと? 私はそういった本ではなくて、マナーの本が読みたかったのですが」
「伝説の異界人には興味がないのですか?」
イライアスがセルリアンブルーの瞳で見つめてくる。
「え、あぁ、そうですね。今は興味がありません」
「なるほど。今は、ね」
「ちょっと、覚えることがいっぱいありすぎまして。ただでさえ物覚えが悪いのに」
「でも、そうやって努力する女性は好きですよ?」
イライアスは、私を励ましてくれているのだろう。この世界の人は、みんな優しいなぁとしみじみと感じた。
「他にも、何かお探しの本はありますか? あ、と。すみません」
身体の向きを変えたイライアスは、何かにつまずいたのか、よろりとよろめいた。その時に慌てたようで、私のスカーフに触れてしまう。
ハラリとスカーフが落ちる。
「あぁ。次から次へとすみません」
ささっとスカーフを拾い上げるだけなのに、それすら絵になるような男性だ。
カウンターにいる係の人は、王宮文官と呼ばれる人らしい。王宮文官とは、公務員みたいなものだろう。
「こんにちは」
いつもの女性が声をかけてくれた。私も「こんにちは」と返す。
なんとなく暇つぶしに足を運んでいる図書館なのだが、今日は目的がはっきりとしていた。
「あのぅ。マナーとか行儀の本ってありますか?」
「ありますよ」
「僕が案内しましょう」
第三者の声が、割って入る。
「あ、えっと」
誰だっけ?
よく、図書館で顔を合わせる男性。さらさらと流れ落ちるような砂金のような髪。この世界で金髪は珍しくはないけれども、ここまでさらさら金髪はあまり見ない。みな、どこか癖があるのだ。さらさら金髪といえば、私が知っているかぎりでは、ウィルフォードとオルガー大公と国王くらいである。
「イライアスです。ライと呼んでほしいと、以前にもお伝えしたはずですが」
そうだっけ? と首を傾げると、イライアスは少しだけ淋しそうに微笑んだ。
「僕って、そんなに印象が薄いですかね?」
「そ、そんなことないですよ。私が忘れっぽいというか、物覚えが悪いというか」
覚えが悪い自覚はある。
「ご、ごめんなさい」
それは何度もあそこで口にした言葉。
「いえ、僕も意地悪しすぎました。でも、これからは覚えていただけると嬉しいです」
「わかりました、ライさん。これから、よろしくお願いします」
その言葉で、イライアスは明るい笑みを作った。後ろにキラキラとお星様が見えるような笑みである。
「はい。では、書棚に案内しますね」
私が彼の後ろをついていこうとすると、カウンターの女性が小さな握りこぶしを作って微笑んでいる。それはまるで「頑張って」と何かを応援しているようにも見えるのだが。
案内された場所は、一番奥に並んでいる書棚。
「マナーとか行儀の本でしたよね?」
「あ、はい。その、挨拶の仕方とか、まぁ、そういった基本的なところから学びたいのですが」
「なるほど。健気ですね」
何に対して健気なのか、さっぱりとわからない。
「こちらにあります。アイリさんなら、この辺の本がよろしいのではないでしょうか?」
イライアスは書棚から一冊の本を抜き取り、中身をパラパラと確認する。それを私が横からのぞき込む。
イラストが多くてわかりやすい。
「あ、まずはこれにしてみます」
「よかった。気に入ってもらえて。他にもオススメの本があるのですが、どうですか?」
オススメしてくれるのなら、その行為をありがたく受け取る。なんだかんだで、まだこの国、いやこの世界には疎いのだ。もしかしたら、私の常識とは異なる隠れたマナーがあるかもしれないし。
「是非とも、お願いします」
「では、こちらに」
マナーの本はこの書棚にあると言っていたのに、違う書棚に案内される。
「あの、こちらにはどんな本があるのでしょう?」
「伝説の異界人について、ですかね?」
ドッキンと心臓が大きく動いた。
「えぇと? 私はそういった本ではなくて、マナーの本が読みたかったのですが」
「伝説の異界人には興味がないのですか?」
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「え、あぁ、そうですね。今は興味がありません」
「なるほど。今は、ね」
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「他にも、何かお探しの本はありますか? あ、と。すみません」
身体の向きを変えたイライアスは、何かにつまずいたのか、よろりとよろめいた。その時に慌てたようで、私のスカーフに触れてしまう。
ハラリとスカーフが落ちる。
「あぁ。次から次へとすみません」
ささっとスカーフを拾い上げるだけなのに、それすら絵になるような男性だ。
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