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双子島
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ミコトとアイは性欲に溺れた。
カレンにはナギがついていれば良い。卵が還るのはまだ先だ。数日、性欲に耽って何が悪いとミコトは思っている。黒竜に抱かれた経験のあるミコトだ。もうそれ以外に体が反応しない。だからアイを利用しているという罪悪感はある。でもアイはそれでもミコトを抱き続けた。疲れたら眠り、腹が空いたら食べる。体を洗った先からまた抱き合う生活。アイは人型で初めての性欲に溺れている。相手は誰でも良かった。欲しい相手は手に入らない。だったら後は誰でも同じ。ミコトはアイと同じ理由で抱かれている。ミコトもまた、アイを別の相手の代わりにしている。だからここまで溺れられた。何の咎めもないからだ。
3日目の朝、さすがにふたりとも気持ちが覚めた。
「そろそろ卵の世話をしないと、だろ?」
ミコトが言う。言う割にベッドの上でアイに抱き着いている。
「おまえはどうするんだ?」
3日も抱き合った相手だ。情も移っている。しかも体の相性も良い。元々、黒竜に抱かれていた体だ。アイに馴染むのも早かったし、ミコトは慣れていて、アイのしたいと思うことを先回りして叶える。煽るような言葉も平気で口にするし、どんな恥ずかしいことを強要しても、恥ずかしがるが、やらせてくれる。
「俺? 俺は別にどうとでも。どうせどこにも行けないし、ここにいる以外に行先ねえし、暇だったらまた抱きに来てよ? いつだって相手になるぜ?」
軽口をたたくのは寂しいからだ。この数日でアイはミコトを知った。この男は寂しさを身の内に飼っている。寂しいから悪態をつくし、相手の感情を揺らそうとする。それが悪く伝わってもお構いなしだ。ただカレンには一目置いているようだ。行動の先はカレンであり、自分は控える立場だと思っている。それは白銀の竜の護衛を黒竜がしていたせいで、自分も白銀の竜の相手を守らなければならないと、どこかで思い続けている為らしい。
白銀の竜が生まれたら、と、アイは想像する。アイにとって白銀の竜は神の化身だ。跪くことに躊躇いはない。死ねと言われたら死ねる。その言葉は神の言葉だ。それは竜の意識の根源にある。だがナギたち民族もまた、白銀の竜を神として祀っていた。竜と人の歴史には、アイが知りえない謎がまだあると思わせる。
「ミコトは元の世界へ帰るのだろう?」
「帰らねえよ、アイが必要としてくれるならな」
あっけらかんと言う。その言葉に嘘は見えない。ニカッと歯を出して笑うのは、ミコトの癖だ。ミコトの体には無数の傷がある。小さいものはたくさんあるが、脇腹と背中、肩に大きな傷がある。背中は細かな傷が重なって幾本も走っている。細い棒か縄で打たれた痕だ。脇腹はナイフの傷だ。鋭利なもので斬られ、ろくに手当てもされずに塞がったのだろう。傷跡が生々しく残っている。肩は丸いやけどの跡だ。小さな火を何度も押し付けられている。そういう体を見ると、アイは悲しくなる。ミコトは悪い性格ではない。こんな傷を付けられるような人とは思えない。弱いからか、とアイは思う。だが弱いのは守る対象だ。竜にとって小さくて可愛いものは守るべきものだ。ミコトは可愛い。カレンとはまた違う可愛さがある。だがミコトは気づいていない。ミコトは自分が嫌いだ。弱いから、見た目が良くないからだと思っている。それもまた、アイには辛い。
「帰りたいのだろう? ナギと一緒に帰る道を探そう」
アイは良かれと思って言葉にした。ミコトを守るべき相手は同じ場所にいた別の黒竜だ。アイはその黒竜の代わりをしているにすぎない。だがアイの言葉を聞いたミコトは、一瞬にして心を閉ざした。もう良いと言ってアイを部屋に残し、ひとりで外に出て行った。
カレンにはナギがついていれば良い。卵が還るのはまだ先だ。数日、性欲に耽って何が悪いとミコトは思っている。黒竜に抱かれた経験のあるミコトだ。もうそれ以外に体が反応しない。だからアイを利用しているという罪悪感はある。でもアイはそれでもミコトを抱き続けた。疲れたら眠り、腹が空いたら食べる。体を洗った先からまた抱き合う生活。アイは人型で初めての性欲に溺れている。相手は誰でも良かった。欲しい相手は手に入らない。だったら後は誰でも同じ。ミコトはアイと同じ理由で抱かれている。ミコトもまた、アイを別の相手の代わりにしている。だからここまで溺れられた。何の咎めもないからだ。
3日目の朝、さすがにふたりとも気持ちが覚めた。
「そろそろ卵の世話をしないと、だろ?」
ミコトが言う。言う割にベッドの上でアイに抱き着いている。
「おまえはどうするんだ?」
3日も抱き合った相手だ。情も移っている。しかも体の相性も良い。元々、黒竜に抱かれていた体だ。アイに馴染むのも早かったし、ミコトは慣れていて、アイのしたいと思うことを先回りして叶える。煽るような言葉も平気で口にするし、どんな恥ずかしいことを強要しても、恥ずかしがるが、やらせてくれる。
「俺? 俺は別にどうとでも。どうせどこにも行けないし、ここにいる以外に行先ねえし、暇だったらまた抱きに来てよ? いつだって相手になるぜ?」
軽口をたたくのは寂しいからだ。この数日でアイはミコトを知った。この男は寂しさを身の内に飼っている。寂しいから悪態をつくし、相手の感情を揺らそうとする。それが悪く伝わってもお構いなしだ。ただカレンには一目置いているようだ。行動の先はカレンであり、自分は控える立場だと思っている。それは白銀の竜の護衛を黒竜がしていたせいで、自分も白銀の竜の相手を守らなければならないと、どこかで思い続けている為らしい。
白銀の竜が生まれたら、と、アイは想像する。アイにとって白銀の竜は神の化身だ。跪くことに躊躇いはない。死ねと言われたら死ねる。その言葉は神の言葉だ。それは竜の意識の根源にある。だがナギたち民族もまた、白銀の竜を神として祀っていた。竜と人の歴史には、アイが知りえない謎がまだあると思わせる。
「ミコトは元の世界へ帰るのだろう?」
「帰らねえよ、アイが必要としてくれるならな」
あっけらかんと言う。その言葉に嘘は見えない。ニカッと歯を出して笑うのは、ミコトの癖だ。ミコトの体には無数の傷がある。小さいものはたくさんあるが、脇腹と背中、肩に大きな傷がある。背中は細かな傷が重なって幾本も走っている。細い棒か縄で打たれた痕だ。脇腹はナイフの傷だ。鋭利なもので斬られ、ろくに手当てもされずに塞がったのだろう。傷跡が生々しく残っている。肩は丸いやけどの跡だ。小さな火を何度も押し付けられている。そういう体を見ると、アイは悲しくなる。ミコトは悪い性格ではない。こんな傷を付けられるような人とは思えない。弱いからか、とアイは思う。だが弱いのは守る対象だ。竜にとって小さくて可愛いものは守るべきものだ。ミコトは可愛い。カレンとはまた違う可愛さがある。だがミコトは気づいていない。ミコトは自分が嫌いだ。弱いから、見た目が良くないからだと思っている。それもまた、アイには辛い。
「帰りたいのだろう? ナギと一緒に帰る道を探そう」
アイは良かれと思って言葉にした。ミコトを守るべき相手は同じ場所にいた別の黒竜だ。アイはその黒竜の代わりをしているにすぎない。だがアイの言葉を聞いたミコトは、一瞬にして心を閉ざした。もう良いと言ってアイを部屋に残し、ひとりで外に出て行った。
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