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白銀の竜
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「ミコト? どうしたの?」
小屋の中からカレンが出て来る。
「カレン」
黒竜二頭から離れてカレンに抱き着いたミコトは、カレンの視線を上空へと向かせた。
「わ、なんだ?」
白銀の竜が二頭、空で争っている。怪我をしているのだろう、鱗に赤い色が見える。ミコトが姿を現したから、二頭は地上へ視線を向けた。そのうちの一頭がカレンの前に降りた。カレンの前に鼻先を下ろし、頬にすりすりする。
「まさか、俺の子?」
カレンがそう言って白銀の竜の口元に手を伸ばして触れると、キューッと甘い声を出した。
「俺の子ってどういうことだ?」
カレンが振り返ると、そこには竜化を解き、服を身に着けている男がいる。クッソ面倒だなと呟く口調も、その声も、ほとんど知らない。でも姿を目にしたカレンは、体が震えるほどの緊張を強いられていた。
「ご、ごめんなさい」
震えながら謝るカレンを、竜化を解いたカレンの子が慰める。まだ若い竜だ。シャルと同じくらいだろう。
「カレンを虐めるな!」
お互いに体に傷が出来ている。大きいものはないから、自然にゆっくり塞がって行くが、血で濡れた皮膚は赤黒く固まっている。
「大丈夫だ」
カレンは震えながらも笑みを作り、カレンの子の腕を撫でた。
「名前は? ナギに付けてもらった?」
そう言うと、カレンの子は首を振る。
「ううん、名前はないよ? だって名前は俺を産んだカレンが付けるんだよ」
「ええ? そういうルールなのか?」
カレンは、カレンよりも背が高くなったカレンの子を見上げて驚く。すでに服を身に着け終えたシャルがふたりに近づいた。
「おまえ、俺の子だ」
シャルがカレンの子の匂いを嗅いだ。
「いや、ぜってー違う、嫌だ、こんなヤツ」
「シアの子?」
カレンが疑問を口にし、シャルを見上げた。
「俺の子だ、カレン。匂いでわかる」
シャルの手がカレンの頬に触れた。もういつ振りかわからない。もう二度と触れてもらえないと思っていた手が、優しくカレンに触れている。それだけで涙が溢れた。それなのにシャルは自分の子だと言う。
「え? だってシアは、精の中の子種を殺していたんじゃないのか? だから卵が出来ない……嫌われたから捨てられた、違う?」
「違う」
シャルがカレンを抱きしめる。抱き締めてツムジにキスをし、匂いを嗅いだ。
「カレン、俺の」
「勝手なこと言うな!」
ドンッとシアを突き飛ばす。
「シャル・デ・アイル」
カレンがシャルの本名を口にした。そうするとシャルが甘い表情でカレンを見下ろし、額にキスをする。カレンは真っ赤だ。雰囲気が甘すぎて本当にシアなのか? と疑ってしまう。
「シアの本名の後ろが同じになるんだろ? だから言ってみた。だってシアのご先祖様だ。そういうことだろ?」
カレンにそう言われて、シャルはやっとこの状況に納得する。
「カレンが白銀の竜を産んだから歴史が変わった。たぶん、想像するに、この時空には三頭の白銀の竜がいるよ。コイツも時空を超えて来ているからな」
「コイツじゃダメだろ。名前」
カレンはシャルを見上げる。まだ信じられない。カレンが産んだ子は別の竜の子だと思っていたから。シャルの子であるのなら嬉しい。それから傍にシャルがいるのも嬉しい。それだけで嬉しいのに、シャルはカレンを甘い雰囲気で包んでくれている。今までにはなかった。愛しいという視線がカレンを幸せで包んだ。
小屋の中からカレンが出て来る。
「カレン」
黒竜二頭から離れてカレンに抱き着いたミコトは、カレンの視線を上空へと向かせた。
「わ、なんだ?」
白銀の竜が二頭、空で争っている。怪我をしているのだろう、鱗に赤い色が見える。ミコトが姿を現したから、二頭は地上へ視線を向けた。そのうちの一頭がカレンの前に降りた。カレンの前に鼻先を下ろし、頬にすりすりする。
「まさか、俺の子?」
カレンがそう言って白銀の竜の口元に手を伸ばして触れると、キューッと甘い声を出した。
「俺の子ってどういうことだ?」
カレンが振り返ると、そこには竜化を解き、服を身に着けている男がいる。クッソ面倒だなと呟く口調も、その声も、ほとんど知らない。でも姿を目にしたカレンは、体が震えるほどの緊張を強いられていた。
「ご、ごめんなさい」
震えながら謝るカレンを、竜化を解いたカレンの子が慰める。まだ若い竜だ。シャルと同じくらいだろう。
「カレンを虐めるな!」
お互いに体に傷が出来ている。大きいものはないから、自然にゆっくり塞がって行くが、血で濡れた皮膚は赤黒く固まっている。
「大丈夫だ」
カレンは震えながらも笑みを作り、カレンの子の腕を撫でた。
「名前は? ナギに付けてもらった?」
そう言うと、カレンの子は首を振る。
「ううん、名前はないよ? だって名前は俺を産んだカレンが付けるんだよ」
「ええ? そういうルールなのか?」
カレンは、カレンよりも背が高くなったカレンの子を見上げて驚く。すでに服を身に着け終えたシャルがふたりに近づいた。
「おまえ、俺の子だ」
シャルがカレンの子の匂いを嗅いだ。
「いや、ぜってー違う、嫌だ、こんなヤツ」
「シアの子?」
カレンが疑問を口にし、シャルを見上げた。
「俺の子だ、カレン。匂いでわかる」
シャルの手がカレンの頬に触れた。もういつ振りかわからない。もう二度と触れてもらえないと思っていた手が、優しくカレンに触れている。それだけで涙が溢れた。それなのにシャルは自分の子だと言う。
「え? だってシアは、精の中の子種を殺していたんじゃないのか? だから卵が出来ない……嫌われたから捨てられた、違う?」
「違う」
シャルがカレンを抱きしめる。抱き締めてツムジにキスをし、匂いを嗅いだ。
「カレン、俺の」
「勝手なこと言うな!」
ドンッとシアを突き飛ばす。
「シャル・デ・アイル」
カレンがシャルの本名を口にした。そうするとシャルが甘い表情でカレンを見下ろし、額にキスをする。カレンは真っ赤だ。雰囲気が甘すぎて本当にシアなのか? と疑ってしまう。
「シアの本名の後ろが同じになるんだろ? だから言ってみた。だってシアのご先祖様だ。そういうことだろ?」
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「カレンが白銀の竜を産んだから歴史が変わった。たぶん、想像するに、この時空には三頭の白銀の竜がいるよ。コイツも時空を超えて来ているからな」
「コイツじゃダメだろ。名前」
カレンはシャルを見上げる。まだ信じられない。カレンが産んだ子は別の竜の子だと思っていたから。シャルの子であるのなら嬉しい。それから傍にシャルがいるのも嬉しい。それだけで嬉しいのに、シャルはカレンを甘い雰囲気で包んでくれている。今までにはなかった。愛しいという視線がカレンを幸せで包んだ。
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