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2章
22 死に場所
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ニアの国の兵だ。殺さず気絶させるだけの攻撃は、手加減が難しくてより辛い。人とは違い、獣人は素早いし攻撃力もある。使い慣れていない刀で受けるのも限界がある。倒した人数よりも群がる人数の方が多い。その後ろで退屈そうな態度のアニエスが視界に入るとより苛立つ。
「ニアごめん、お前の事幸せにしたかったけど無理だわ。悪いけど逃げてくれない? せめて逃げる間は止めておくからさぁ」
額から血が流れて左目を塞いでいる。袖で拭おうと思ったけど袖も血で濡れている。どこで死んでも良いと思っていたが、守りたい相手を守れずに死ぬのは心残りが多すぎる。
「いやだよ」
教会の瓦礫の中、崩れて座るニアの膝を水が覆っている。波立つのは風のせい。ニアが震えているせいか。水に涙が落ちて波紋を残す。
「こんなの嫌だ。守られて、……逃げて、いつも後悔ばかりなの、もう嫌だよ」
ニアが涙を拭って立ち上がった。水の中を一歩一歩進んで志津木の横に立つ。
「ニア、逃げてくれ」
「嫌だ」
ニアの手が志津木の手を取る。血に濡れた手を掴み、前方を睨み続け、気を張っている志津木の横顔を見た。
「迷惑を掛けてばかりでごめんなさい。ヨウを巻き込んで、たくさん怪我をさせてごめんなさい。もう、いいよ、ありがとう。ヨウは戻って? ——幸せになって」
ニアは志津木の手をぎゅっと握る。志津木の血がニアの手を濡らす。
「ニアに手を出すな! それは俺のものだ」
後方からアニエスの声が響く。続く笑い声が勝ち誇って聞こえ、志津木は不快でたまらない。ニアがビクッと震えた事が、繋いだ手に伝わった。
「残念だけど、ニアは俺のだ。なにせ契約書にサインしたからな」
崩れ落ちそうな膝を気力で立たせ、血まみれの無様な姿で強がりを言う。どうにかニアだけでも逃せないかと思考を巡らせ、背後の湖を思い出す。
「なぁニア、泳いで逃げられないか?」
小声で伝えればニアの手がぎゅっと握られ、志津木に意思を伝えて来る。
「一緒に行ける? 一緒にだったら良いよ?」
敵に背を向けて教会の瓦礫を越え、湖に飛び込む想像をする。きっと辿り着く前に矢に射られる。運良く辿り着けても湖の底に沈んで死ぬ。ニアと志津木の思う結末は一緒だった。
「本気?」
「好き勝手にされるくらいならヨウと一緒が良い」
志津木は敵から気を逸らし、ニアを見る。視線が合い、可愛らしく微笑まれ、決意を固めた。
隙を狙い矢が射られる。ニアを庇って肩で受け、衝撃で後方へ崩れ落ちる前に足を踏ん張り、ニアの手を掴んだまま走る。背でニアを庇い、瓦礫につまづきながら、ニアだけは守り、湖に飛ぶ。
振り返った志津木の視界の中に新たな勢力の姿が映る。その中にレイモンドの姿を見た。
◇◇◇
2章 完
「ニアごめん、お前の事幸せにしたかったけど無理だわ。悪いけど逃げてくれない? せめて逃げる間は止めておくからさぁ」
額から血が流れて左目を塞いでいる。袖で拭おうと思ったけど袖も血で濡れている。どこで死んでも良いと思っていたが、守りたい相手を守れずに死ぬのは心残りが多すぎる。
「いやだよ」
教会の瓦礫の中、崩れて座るニアの膝を水が覆っている。波立つのは風のせい。ニアが震えているせいか。水に涙が落ちて波紋を残す。
「こんなの嫌だ。守られて、……逃げて、いつも後悔ばかりなの、もう嫌だよ」
ニアが涙を拭って立ち上がった。水の中を一歩一歩進んで志津木の横に立つ。
「ニア、逃げてくれ」
「嫌だ」
ニアの手が志津木の手を取る。血に濡れた手を掴み、前方を睨み続け、気を張っている志津木の横顔を見た。
「迷惑を掛けてばかりでごめんなさい。ヨウを巻き込んで、たくさん怪我をさせてごめんなさい。もう、いいよ、ありがとう。ヨウは戻って? ——幸せになって」
ニアは志津木の手をぎゅっと握る。志津木の血がニアの手を濡らす。
「ニアに手を出すな! それは俺のものだ」
後方からアニエスの声が響く。続く笑い声が勝ち誇って聞こえ、志津木は不快でたまらない。ニアがビクッと震えた事が、繋いだ手に伝わった。
「残念だけど、ニアは俺のだ。なにせ契約書にサインしたからな」
崩れ落ちそうな膝を気力で立たせ、血まみれの無様な姿で強がりを言う。どうにかニアだけでも逃せないかと思考を巡らせ、背後の湖を思い出す。
「なぁニア、泳いで逃げられないか?」
小声で伝えればニアの手がぎゅっと握られ、志津木に意思を伝えて来る。
「一緒に行ける? 一緒にだったら良いよ?」
敵に背を向けて教会の瓦礫を越え、湖に飛び込む想像をする。きっと辿り着く前に矢に射られる。運良く辿り着けても湖の底に沈んで死ぬ。ニアと志津木の思う結末は一緒だった。
「本気?」
「好き勝手にされるくらいならヨウと一緒が良い」
志津木は敵から気を逸らし、ニアを見る。視線が合い、可愛らしく微笑まれ、決意を固めた。
隙を狙い矢が射られる。ニアを庇って肩で受け、衝撃で後方へ崩れ落ちる前に足を踏ん張り、ニアの手を掴んだまま走る。背でニアを庇い、瓦礫につまづきながら、ニアだけは守り、湖に飛ぶ。
振り返った志津木の視界の中に新たな勢力の姿が映る。その中にレイモンドの姿を見た。
◇◇◇
2章 完
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