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3章
1 獣人の世界と人の世界
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揺れている。身動きしようとして肩の痛みで目が覚める。低い天井のベッドの上。二段ベッドの下部のようだ。半身を起こすと体が軋む。息がまともに出来ず、苦しい。着ているものは紺色のスエットで、上半身には包帯が巻かれている。額を押さえて記憶を辿る。異世界でニアと共に湖に飛び込んだはずだ。だがここは志津木のいた世界だ。それも揺れから言って船の中。傷は矢傷ではなく銃痕だ。まるで異世界にいたのが夢であるかのように、姿が海に落ちた時に戻っている。だが海に落ちたままではない。誰かに治療され、体を洗われ、着替えさせられている。
「気づいたか」
入り口のドアが開き、食べ物の匂いと共に人の声がした。それも見知った声で、一瞬にして震えが走る。
「クリス——おまえ、ニアは? ニアはどうした」
「そう慌てるな。瀕死の状態だったんだ。ここへ来てから3日も眠り続けていたんだぞ。意識が戻って良かった」
「ヨウ!」
駆け込んで来たニアに抱きつかれて傷が痛む。触れるなと手で制するとニアが手を離してくれる。
「クリス、状況の説明を」
ニアもまた元の姿に戻っている。尾も耳もなく、人の耳にダイヤのピアスがある。服の間から無数の傷跡が見えている。
「ひとまずスープだ。ゆっくり飲め」
手渡された具なしのスープの匂いを嗅ぐと腹が鳴った。ニアにクスッと笑われて、気まずい。
「ゆっくりね」
ニアはベッドに座って、志津木の行動を見守っている。異世界にいるよりも可愛さの勝るニアを見て、やはり異世界へ飛んだのは夢だったのかと思った。
「この船は俺の所属する国の獣人課が所有しているものだ」
「そういえばおまえ、俺からニアを奪おうとしただろ。しかも本名呼びやがって! 敵なのか?」
とりあえずニアが無事でそばに居る。クリスに対して警戒もしていないし、古傷は仕方がないにしろ、新しい傷はないようだ。
「どのみちおまえのいた組織では、おまえは死んだ事になっている。志津木夜雨はもういない。雨夜和真(あまやかずま)に戻ったらどうだ」
「ヨウで良い」
頭が痛む。組織に死んだと思われているのならその方が良い。生きていると知られれば暗殺対象になる。裏を知りすぎている。
「ヨウはヨウだよ」
キョトンとしたニアが言う。チップも戻っているのだろうか。いや、異世界が夢だ。生々しい夢。だったら都合よく幸せハッピーエンドで良いだろうに。よくよく自分は裏家業が好きらしい。
「俺は敵ではないよ。ヨウの友人である事に変わりはない」
「信じられるか! あの場面に現れて、俺からニアを奪おうとしたのはどうしてだ!」
声を荒げると傷が痛む。呼吸を整えて身を庇う。
「スープを飲んだら痛み止めを飲め。弾は貫通していた。上手い具合に危険な箇所を避けて撃たれていたらしいから、失血で生死を彷徨ったが、意識が戻ればもう大丈夫だそうだ。とにかく俺は敵ではない。おまえからニアを奪う事もないから、薬を飲んで休め」
スープを飲み干すとクリスから薬を受け取ったニアが手渡して来る。水を受け取って薬を飲めば、すぐに眠気が襲って来る。
「早く良くなって、ヨウ」
ニアの手を借りてベッドに横になる。布団を掛けられると勝手に瞼が閉じて行く。布団の上にニアが横たわる。ニアは軽い。ドアが閉まる音がした。
「気づいたか」
入り口のドアが開き、食べ物の匂いと共に人の声がした。それも見知った声で、一瞬にして震えが走る。
「クリス——おまえ、ニアは? ニアはどうした」
「そう慌てるな。瀕死の状態だったんだ。ここへ来てから3日も眠り続けていたんだぞ。意識が戻って良かった」
「ヨウ!」
駆け込んで来たニアに抱きつかれて傷が痛む。触れるなと手で制するとニアが手を離してくれる。
「クリス、状況の説明を」
ニアもまた元の姿に戻っている。尾も耳もなく、人の耳にダイヤのピアスがある。服の間から無数の傷跡が見えている。
「ひとまずスープだ。ゆっくり飲め」
手渡された具なしのスープの匂いを嗅ぐと腹が鳴った。ニアにクスッと笑われて、気まずい。
「ゆっくりね」
ニアはベッドに座って、志津木の行動を見守っている。異世界にいるよりも可愛さの勝るニアを見て、やはり異世界へ飛んだのは夢だったのかと思った。
「この船は俺の所属する国の獣人課が所有しているものだ」
「そういえばおまえ、俺からニアを奪おうとしただろ。しかも本名呼びやがって! 敵なのか?」
とりあえずニアが無事でそばに居る。クリスに対して警戒もしていないし、古傷は仕方がないにしろ、新しい傷はないようだ。
「どのみちおまえのいた組織では、おまえは死んだ事になっている。志津木夜雨はもういない。雨夜和真(あまやかずま)に戻ったらどうだ」
「ヨウで良い」
頭が痛む。組織に死んだと思われているのならその方が良い。生きていると知られれば暗殺対象になる。裏を知りすぎている。
「ヨウはヨウだよ」
キョトンとしたニアが言う。チップも戻っているのだろうか。いや、異世界が夢だ。生々しい夢。だったら都合よく幸せハッピーエンドで良いだろうに。よくよく自分は裏家業が好きらしい。
「俺は敵ではないよ。ヨウの友人である事に変わりはない」
「信じられるか! あの場面に現れて、俺からニアを奪おうとしたのはどうしてだ!」
声を荒げると傷が痛む。呼吸を整えて身を庇う。
「スープを飲んだら痛み止めを飲め。弾は貫通していた。上手い具合に危険な箇所を避けて撃たれていたらしいから、失血で生死を彷徨ったが、意識が戻ればもう大丈夫だそうだ。とにかく俺は敵ではない。おまえからニアを奪う事もないから、薬を飲んで休め」
スープを飲み干すとクリスから薬を受け取ったニアが手渡して来る。水を受け取って薬を飲めば、すぐに眠気が襲って来る。
「早く良くなって、ヨウ」
ニアの手を借りてベッドに横になる。布団を掛けられると勝手に瞼が閉じて行く。布団の上にニアが横たわる。ニアは軽い。ドアが閉まる音がした。
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