魔法少女の魔法少女による魔法少女のためのご主人様幸せ化計画

円田時雨

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MMM(トリプルエム)の夏休みミステリー計画

トリプルエムの事件簿

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 森の中にある一周まわって逆に怪しいキレイなデカすぎるイヤミったらしい感じの館。そこにはこれまたイヤミったらしいオッサンとオバハンの高そうなドレスが煌めいていた。
 そんな大富豪軍団の中であまりにも場違いな俺たちがソワソワするのは無理もないことだ。親切そうな執事のオッサンは気にするなと何度もなだめようとしていたが、立花以外は気にするというものだ。執事のオッサンにかけあってサイズのあったタキシードとドレスを貸してもらった。
 望月は薄いピンク色のドレスを、立花は水色のドレスを、早瀬は薄紫色のドレスを着て俺たちの前に姿を現した。これがまた意外と似合う。普段のラフな感じとは違って、着飾ったメイクもしている。
 あの望月ですらおしとやかなお姫様に見えるのだからさすがに不意をつかれたと言わざるを得ない。
「どう? マスター」
「ま、まあ似合ってるんじゃねえの? 」
「そう? よかったァ」
 望月の安堵した顔を拝めながら、俺たちはパーティー会場にむかった。
「あら? あなたたちが勇人くんのお友達? ごめんね。こんな堅苦しそうなパーティーに招待しちゃって」
 そう言ってクスクスと笑いながら出迎えてくれたのは若い女の人だった。
「自己紹介が遅れたわね。私は中村美樹っていいます。菊子さん……西田くんのおばあさんね。あの人からすると私は遠い縁なんだけど、色々な助けてもらったりしたから感謝の気持ちを伝えたくてこのパーティーに参加したの。よろしくね」
 イヤミのようなお高い黄色のドレスが嫌というほど似合う人だった。
 黒い髪の毛はポニーテールにして、フレッシュな印象を与えていた。
 美樹さんはテーブルにあるシャンパンを手に取って俺たちから離れていった。
 その後俺たちに話しかけてきたのは、日焼けして肌が焦げ茶色の若い男の人だった。
「やぁ。君たち、すごく似合っているよ。まるで海底で見つけた宝石箱を開けたような美しさを持っているよ」
 この男、よく初対面の女子高生にそんなこと言えるな。ただのナンパやろーにしか見えねーぞ。
 今の言葉に望月も早瀬もさすがに戸惑っているようだった。キザな褒め言葉に浸ることなくオドオドとして、どう返事をすればいいのか分からないようだ。
 一方立花はそんなナンパやろーの言葉を完全にスルーしていた。というか最初から聞いていないようだ。近くにある料理を手当り次第に吸引している。
 さすがにナンパやろーも望月と早瀬の反応を見て申し訳なさそうに言葉を並べた。
「すまなかったよ3人とも。あんなこと言われて戸惑わない方が普通じゃなかったね。君たちへの気遣いが足りなかったようだ」
「あ、いえいえ、お気になさらないでください」
「少し遅れてしまったが自己紹介をしよう。私の名前は木島蓮夜という者だ」
 望月たちの前で一礼した蓮夜とかいう人は、いちいち甘い言葉を望月たちに放ってくる。
 西田家の親戚はみんな自己紹介を遅らせるのか?
 第一印象はこいつの一番むいてる職業は結婚詐欺師かなと思ったことだ。金髪に染めた派手な髪の毛は見るたびに貧乏人の俺をイラつかせている。しきりにあごひげを触っているが、そこも金に染めているので余計にムカッとさせる。高そうなスーツの下には金のシャツを着ており、襟の部分には派手な宝石がちりばめられている。首から見える高そうなネックレスはカラフルな宝石のものと金一色の派手なものがある。詫びの言葉とともに差し出した手には派手な金銀宝石がやたらとついている指輪を、それぞれの指に2つ以上つけている。こんな成金みたいな感じの見た目だと、本当に結婚詐欺師をしていてもおかしくはなさそうだ。
 結婚詐欺師は微笑みながらシャンパンを手に取ってやっと離れていった。
 ホッと一息ついたところでまた西田の親戚類に話し掛けられた。
「やぁ。僕は山岡拓人。君たちの話は聞いているよ。勇人くんの友達なんだって? 美男美女揃いだね」
 ふくよかな体型に丸メガネというどことなく優しそうな男性である。服装もこの館に来て初めての普通だ。
 青いストライプの入ったポロシャツを着ているその姿、我々にどれだけの安心感を与えてくれた人か。ちなみに今日俺が褒められたのもこれが初めてだ。
 いい人オーラをだしながら微笑んで、彼はシャンパンを手に取って離れていった。
 パターン的にそろそろ別の誰かに声をかけられそうな気がしたが、これ以降俺たちが声をかけられることもなかった。
 この変に豪勢なパーティーに緊張しているのか知らんが、俺たちは立花並みになにもしゃべることもなく黙ってテーブルの上にある料理を口の中に頬張るのだった。
「よっ! お前らなんだその格好は。立花さんたちはともかくマスターは全然似合ってねえぞ」
 そう言いながら近づいてきたのは、全然似合わないタキシードを着た西田だった。
 だが今となっては救世主だろう。この妙に重たい空気を頼むからなんとかしてくれ。
「わざわざドレスやタキシードなんて着なくたっていいのに」
「着ないと俺たちは余計に浮いちまうだろ。ただでさえもうお前の親戚類3人に話しかけられたんだぞ」
「あはははは! いいじゃねえか。俺の親戚に悪い人はいねえ。ちょっと個性的かもしれんが悪い人なんていねえよ。俺が保証する」
「お前の保証はいらん。アテにならないからな」
「うるせえ。そんなに俺の親戚が悪い人に見えるか? 」
「そういうワケじゃないんだが。ところで西田。お前のばあさん、シャンパン飲みまくってるけど大丈夫か? 」
「大丈夫ではないんだな。元気そうには見えるが。あれでもドクターストップかけられる寸前なんだぜ。飲む量が多すぎて体に良くないから、飲むなら少なめにって言われたんだ」
「でもすごく飲んでるよ? おばあさん」
 望月が会話に加わった。西田は本当に救世主になってくれたようだ。
「ええ。注意したほうがいいんじゃない? 」
 早瀬も加わってきた。急に西田がデレっとし始めた。今度の狙いは早瀬だな?
「いやぁー。何度も注意したんですけど、中々聴いてくれなくて……」
「アルコール摂取値が高い。彼女の症状から察するに、シャンパンをもう7杯は飲んでいる。これ以上飲まないほうがいい。水で割っているようだが、完全にあなたのおばあさんは酔っている」
 立花の声にビクッと西田が反応するのを見るのはもはやお決まりとなってきた。ゴールデンウィーク以来、西田の心にトラウマを作ったのだろう。
 西田はばあさんにこれ以上飲むなと注意していたが、結局最後までばあさんは飲み続けた。
 夜の9時頃だっただろうか。俺たちは長いパーティーがなんとか終わってくれたことにホッと安心していた。自分たちが泊まる部屋に案内され、普段着に着替えてようやく1人になれた時はいっそのこと寝てしまおうかと思ったほどだ。
 だが、そんな願いも叶うことはなかった。
 遠くから女の人の大きな悲鳴が聞こえてきたのだ。西田が痴漢でもしたのだろうか。
 俺は気にせずベッドで寝っ転がろうとした時、勢いよくドアが開いた。Tシャツに着替えた望月が部屋に入ってきた。
「マスター聞こえた? 今の悲鳴! 」
 さっきの悲鳴よりもでかい声で望月は俺に聞いてきた。
「ああ。なにかあったのか? 」
「分かんないんだよ! 真理ちゃんと立花さんもいるから、一緒に悲鳴があった方向を探しに行こう! 」
 なんだその言い方は。まるで俺がビビってるみたいな言い方じゃないか。そりゃまぁ1人じゃ行きたくないけど。なんかヤバそうだし。べ、別にビビってなんかねぇよ!本当だぞ!
「さっ! マスターもはやく行くよ! 」
 俺は望月に引っ張られて館中を走り回るハメになった。後ろには早瀬と立花もいる。
 やたら広い館は走っても端から端まで行くのに5分くらいかかった。
 およそ何分かかっただろうか。どれだけ走ったかも分からんが、望月がある部屋のドアを開いてから全く動かなくなった。俺の腕を握っている手はどんどん手汗で濡れていく。
「おい望月! なんかあったのか? どうした? 」
 あとから来た立花と早瀬も立ち止まって望月を不思議そうな目で見る。
「マスター…………。これ…………」
 望月が部屋の中のなにかを、怯えながら指した。そこには、西田のおばあさんが泡を吹いて倒れていた。
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