魔法少女の魔法少女による魔法少女のためのご主人様幸せ化計画

円田時雨

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MMM(トリプルエム)の解散危機一髪

MMM(トリプルエム)&新MMM(トリプルエム)の共同作戦

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 どこぞのロボットアニメと同じくらいの大きさの魔人を目の前にするとは夢にも思ってなかった。どんだけでかいんだこいつは。ガキの頃親父に連れられたお台場しか人型でこれほど大きなものは見たことない。
 しかしそれもおそらく見納めになるだろう。まだ1回しか登場していないが、望月たち魔法少女三人衆プラス生徒会魔法少女2人組がいるんだ。苦戦しているものの、何故かこいつらならきっとなんとかしてくれるに違いないと確信できる。
「敵口内から魔力的高エネルギー反応を確認。白鳥さん、逃げた方がいい」
 小声で言っても当たり前だが聞こえるはずはなく、巨大魔人の近くの家の屋根から弥生さんはこっちを見てキョトンとしていた。
 自分の名前が呼ばれたような気がしたのだろう。
「立花さ~ん! 呼びましたか~? 」
 弥生さんはこっちに向かって手を振って呼びかけていた。危機感があるのだろうか。
 和やかな雰囲気がその場から全開で流れてくる。
「逃げて」
 さっきよりは大きな声を出した立花だが、やはり聞こえた様子はない。
 なんかヤバそうなので俺が代わりに言っておこう。
「弥生さん! 逃げてください! 」
「へ? 防衛対象さん? なにかあったんですか? 」
「いいからはやく! 」
 ギュイイイイイン!
 巨大魔人の口が大きく開いて、眩い黒と赤が混ざったような光が煌めいた。俺でもヤバそうなことが起こっていると容易に理解できた。
 どうやらそれは弥生さんも同じようだ。
「ヒィッ! 」
 悲鳴のような叫び声を上げた弥生さんだが、巨大魔人が口から発射した竜巻のようなビーム砲を直後にくらってしまった。
 ゴォォォォ!
 今までに聞いたこともないような不気味な音を口から出して巨大魔人は弥生さんを消し去った。
 かつて弥生さんがいた場所にはもう弥生さんはいない。
 俺は恐怖と驚愕のあまり言葉も出なかった。さっきまで普通に存在していた人間が目の前で消えてなくなるなんて……。
 俺の表情を見て俺の気持ちを察したのか、立花は無表情のままクスリと笑った気がした。
「心配しなくてもいい」
「な……なんでだ……? 」
「……あれを見て」
 立花はゆっくり弥生さんがいた場所の反対側を指さした。
「イエーイ! マスターっ! 弥生ちゃんが死んじゃったと思った? 」
「えとえと……私まだ死んじゃってませんから~! 」
 そこには望月と弥生さんの元気な姿があった。なにがどうなってるんだ?
「えへへー。驚いた? 私が弥生ちゃんに向かってビーム砲みたいなのを放たれる直前に助け出したんだ! これが私の『アクセルレイド・3』の超スピードだぞ~! 」
 望月は誇らしげに胸を張った。弥生さんはありがたいといった感じでペコペコ頭を下げまくっている。
 俺はと言うと、桃をカチ割ったら赤ん坊が出てきたおばあさんのようになにが起こったのかまだ頭がついて行っていない。
「愛果ちゃん、本当にありがとう。おかげで助かりました~」
 聞き飽きたくらいの感謝の言葉を述べまくる弥生さんだが、望月は全然それを気にしていないようだ。途中から段々と聞いていないような気さえしてくる。
「作戦プランβ‐5だっけ? 行くよ弥生ちゃん! 『アクセルレイド・3』! 」
「は、はい! えと……さっきはほんとにありがとうございました。『身体強制超化第二マキシマムフォーム』! 」
 2人は足元から魔法陣が浮き上がってきたり上から降りてきたりして眩い赤い光に包まれた。
 こんな特撮のCG演出でしか見たことがないものをCGではなく本物として見せられて、健全な男子たるものかっこいいと思わないはずがない。ヒーローというものは男子が人生で最初に誰もが羨む存在であり自らなりたいと思うものだ。
 この時の望月たちは俺がかつて憧れたヒーローそのものに見えていた。
 魔法少女たちは弥生さんの無事を確認すると、素早く動き始めた。彼女らが定位置と思われるところはちょうど菱形になるように巨大魔人を囲んでいた。
 俺から見て右に早瀬&弥生さんコンビ、左に望月、真正面に立花、巨大魔人の向こう側に結さんがいる状態だ。
「立花さ~ん! 準備オッケーだよ~! 」
「立花さん、こちらも準備オーケーよ」
『立花さん、準備完了したわ』
 3組の魔法少女は作戦準備が完了したことを立花に伝えた。結さんだけ携帯で連絡したのは、さすがに巨大魔人の向こう側にいるので声が届かないからだ。
 それにしても連絡先知ってたんだな。いつの間にそんなことしてたんだ?
「確認した。これより、作戦プランβ‐5を実行する」
「牽制します! 『マジックマシンガン・ストーム』! 」
 早瀬が立花の声を聞いたと同時に巨大魔人に攻撃を仕掛けた。ゴツイマシンガンから放たれる風の弾は巨大魔人の足に命中し、グラりとよろけさせる。
「くらいなさい! 『黄金の死矢ゴルドストライク』! 」
 弓を一文字にして放った矢は黄金の光を纏って巨大魔人に突進していった。
 グラりとよろけているとはいえこれだけ大きければ俺だって矢を当てれそうなほどの的だ。
 結さんの放った矢は巨大魔人の胸を貫通した。
「これだけじゃ終わらないわ! 」
 黄金の矢が通った後にキラキラと煌めく黄金の粒子みたいなやつは巨大魔人の胸の穴から入り込むと、巨大魔人の動きが鈍り始めた。
「巨大化型魔人の体内に強力なプラスエネルギーを流し込んだ。マイナスエネルギーに作用して巨大化型魔人の動きを鈍重にすることが可能」
 何が起こったのか分からなかった俺の顔を見て立花が解説してくれた。
 もう解説役としていてくれてもいいんじゃないだろうか。能力だって、突っ立って手をかざすだけで発動できるんだし。
「やあぁぁぁ! 」
「はあぁぁぁ! 」
 早瀬と結さんは飛び道具系の能力だからか、巨大魔人に向かって弾丸や矢を撃ちまくっている。
 たちまち巨大魔人はダメージを負っていき、俺にも勝利のビジョンとやらが見えてきた。
 もしかして勝てるんじゃないのか?
 巨大魔人も必死に抗っているが、なりふり構わずテキトーに腕や足をブンブン振り回しているだけのようにも見える。実は大して知能がないのかもしれないな。
 だが、巨大魔人のがむしゃら攻撃も止まった。
「巨大化型魔人の束縛を完了した。後はよろしく」
 そう呟いた立花の方を見てみると、巨大魔人に向かって手をかざしていた。
「ぅグおォォォォォ! 」
 悔しそうな咆哮を上げた巨大魔人の体には無数のデカイ鎖やデカイワイヤーが巻きついていた。
「グがァァァァァァ! 」
 力任せにmade in立花のワイヤーや鎖を引きちぎろうと奮発する巨大魔人だが、made in立花のものはあらゆる点で万能だ。力任せに引っ張ったりしたってちぎれるはずがなかった。
 それでも必死に抵抗している。周りの家をドゴンドゴンと言わせて破壊している。まだ完全には縛りきれていないようだ。
「立花、なんとかならないのか? 」
「私の魔力では巨大化型魔人を完全に捕縛することは不可能」
 無表情のままなんの感情もこめずに答えた立花。
 ダメじゃないかそれじゃあ……。作戦は失敗か?
「私がなんとかするわ。『束縛する黄金の恵みゴルドシャワー』! 」
 結さんが天に向けて放った大量の矢は黄金の光を纏って巨大魔人の頭上に降り注いだ。
 巨大魔人の体を貫通するわけではないが、傷口から入り込んだ黄金の粒子みたいなものは巨大魔人の動きをさらに鈍くした。
「動くなーっ! 『マジックキャノン・ボルテックス』! 」
 早瀬も結さんに続いて、天に向かってゴツイ大砲みたいな銃から弾丸を放つ。一瞬の内に空が曇り始め、凄まじい音を出して雷が巨大魔人に直撃した。巨大魔人の体は電池を引き抜いた時計の針みたいに動かなくなった。
 その隙を見て望月と弥生さんが巨大魔人の首めがけて飛び上がる。
「行くよ弥生ちゃん! 『我流・蛇風閃』! 」
「行きます! 『超斬蹴波マキシマムリザードキック』! 」
 2人の斬撃と蹴りは同時に巨大魔人の首を挟み込むように直撃し、そのまま巨大魔人の首をスパッと切り落とした。
 巨大魔人は文字にも表せないような不気味な咆哮を上げて再び黒煙と化し、消えていった。

 勝ったんだよな?俺たち。
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