魔法少女の魔法少女による魔法少女のためのご主人様幸せ化計画

円田時雨

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MMM(トリプルエム)の年越しトレジャーハント

魔法少女たちの水着姿ってのは俺だって見とれちまうほどだったさ

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 それにしても地下数メートルの地点にマグマが流れているみたいな暑さを誇るこの島(今度から説明するのめんどくさいので西田島としよう)に到着した俺たちは、空港を出る時に島の詳しい地図を貰った。
 それによると西田島はおおよそ円形になっていて、海際は全てプライベートビーチになっているらしい。島の内側に行けば行くほど樹海が広がっていて、島の中心は火山になっている。
  RPGかファンタジーもののラノベや少年マンガに出てきそうな島である。
 俺たちの泊まるホテルは島のちょうど南っかわに位置していて、すぐ近くには一切の汚れのない海がキラキラと広がっていた。日本では絶対に見られない、まさに絶景と言うのにこれほどふさわしい場所はそうないだろう。
 ちなみに空港はそのすぐ近くにある。およそ徒歩5分とかからないだろう。
 南の島に行ったら絶対ありそうなイヤミったらしさの塊にしか見えない南国ホテルは、風水でも気にしているのか全て窓が南向きだ。
 最上階はなんと38階らしい。俺のマンションが8階建てなので次元が違うような差を感じる。
 床は見たら俺みたいな素人でも分かるくらいの大理石で敷き詰められており、エメラルドグリーン色の壁と天井の神話モチーフであろう絵は、まさにリゾートホテルであると言った感じだ。
「うっわぁ~っ! すっごいねぇココ! 飛行機よりも凄いよ! 」
 テンションを上げまくった望月がホテルのロビーを走り回りながら言った。
 飛行機よりも凄いってそりゃそうだろう。飛行機に劣る居心地を誇る宿や家ってのはどうなんだ。
 ん? まてよ? じゃあ俺の家ってどうなんだ?
「皆様、どちらのお部屋にお泊まりになられますか? お部屋のカードキーにお配り致します故、今のうちにお決めになられたらよろしいかと。なお、1階2階は全フロアがギャンブルなどを楽しめる施設となっております故、1階2階はお泊まりになれません」
 相変わらず鋼以上の堅苦しいセリフを聞いた俺たちの答えはもちろん決まっている。
「このホテルの1番上の階で1番いい部屋! 」
 全員が同時に同じことを、ロビーに響くほどの声で言った。ちなみに立花は無口なので今回も無言である。執事さんは苦笑しながらも、
「当ホテルで最上階は全てスイートルーム扱いとなっており、全部で7部屋ご用意しております。皆様で最上階にお泊まりになられるといいでしょう」
 執事さんの提案にありがたく乗ることにした俺たちは、壁がガラス張りになった広すぎるエレベーターに乗って最上階に向かった。
「なぁ西田、お前はここに来るの何回目だ? 」
「俺はここに来るの初めてだ。思ったより綺麗なとこだな、ココ」
 こんなしょうもない会話をしていた俺たちだが、部屋に荷物を置いた直後に西田がみんなをエレベーター前に集めた。さすがに執事さんたちは呼んでないが。
「それでは! 今日の予定を発表したいと思いま~すっ! 」
 嫌な予感しかしない。
「今日の予定はこれです! 」
 西田が俺たちにドヤ顔で見せたのは、今日のスケジュール表らしい。既に午前は終わっているというのに今日何をするというのだろう。
 昼飯は機内食で済ませているのでそのへんは問題ないが、1日はあと11時間もないのである。何をする気なんだ? 西田のスケジュール表にはこう書いてあった。

 2時~6時:遊泳

 それだけである。晩飯まで遊び倒すつもりらしい。
「今日はこれで予定組んでもらってるから、皆さんとっとと水着に着替えちゃってくださいねーっ! ホレ、マスターもさっさと着替えろって」
 全員が呆れながらも部屋に引き返して水着に着替えた。ちなみに立花は無表情なので呆れているのか分からん。
 およそ20分で全員が西田島プライベートビーチに集まっていた。執事さんたちはもしもの時のためにホテルらへんから見守ってくれているので安心だ。西田という存在を除けば。
 魔法少女たちの水着姿というのは、西田でなくとも見惚れてしまいそうだった。いくら健全なキャラクターを売りにしている男だってこの姿には鼻の下を伸ばしてしまうに違いない。
 ちなみに俺だって健康的な一男子高校生なのである。鼻の下を地面スレスレまで伸ばしたってそれは仕方ないのだ。さすがにこれで変態呼ばわりされたらたまったもんじゃない。
 西田はというと、鼻の下を地面なんて貫通させてマントルを貫き、今ごろブラジル辺りにボコッと出てきているだろう。現地の人たちが驚いて失神しないことを祈るしかない。
「と、言うわけで、男子禁制ビーチバレー大会を開催したいと思います! 」
 何がと言うわけでなのだろうか。
 高らかに宣言した望月はどこから持ってきたのか、手にはスイカかそれ以上のデカイボールをポンポンと上に投げている。
「男子禁制? じゃあ俺たちは邪魔にならないように離れた方がいいか? 」
「ううん、心配無用! よろしくね、立花さん! 」
 この時点で俺はアイツらが何をする気か大体分かった。
「空間魔法・十式」
 どおぉぉ!
 波みたいな音を立てて、辺り一面が樹海に変わった。
「インストール」
 0と1が羅列しまくった魔法陣を出した立花は、樹海をさっきまでいた西田島プライベートビーチっぽくした。
 だが西田島プライベートビーチとは唯一違うところがある。目の前にバレーのコートがあるのだ。
「ったく……。ここまでするなんて用意がいいわね。さっさとチーム分けしましょ、余った人は審判をするってことで」
 そう言った工藤の様子を見ると、どうやらめちゃくちゃ乗り気らしい。あみだくじでチーム分けをして審判とチームが決まった。

赤チーム:望月 早瀬
白チーム:工藤 白鳥
審判:立花

 あみだくじで決めたと言っても、ほとんどいつもと同じような組み合わせである。それにしても、
「なぁ、俺も参加しようか? 立花はこの組み合わせじゃビーチバレー出来ねえだろ。俺も参加したらちょうど6人で3チームできる」
 そう提案してみたが、全員が険しい顔をした。立花は言うまでもない無表情だ。
「いやいいよマスター。あんまり参加しない方がいいって」
 早瀬が手をバッテンにクロスさせながら言った。
 立花は足音すら立てずこっちに来た。
「やめた方がいい」
「何で? 」
「命にかかわるから」
 どういう意味なんだろうか。いくら先天性運動神経全くなし症候群の俺でもビーチバレーをしたからって死ぬことはないだろう。
「防衛対象さん、あなたは得点板の係をして。あなたに参加されたら私たち本気出せないから全然楽しくないわ。あなたは裏方で充分だってことよ」
 煽られた気がするが、俺は素直に工藤の言うことに従った。
 立花はそれを見てバレーボール大会でよく見るやたら高い審判が座る椅子に座った。
 既にほかの4人はスタンバイ出来ているようだ。ジャンケンで先攻が望月に決まった。それを確認した立花はやかましい笛を吹いた。
「よっ! 」
 笛の合図と共に望月が放ったサーブは運動神経がいいヤツらと同じくらいのスピードと威力だった。
 さすがに俺だってこんなもんを顔面にくらっても死にゃしない。それどころか鼻血だって出ないだろう。
「はにぁっ! 」
 望月のサーブに素早く反応した白鳥は変な声を出してボールを上手く腕に当てた。
 やっぱこんなもんで死ぬわきゃねえよ。
 しかし、次の工藤の行動が俺に心の底からこのビーチバレー大会に参加しなくてよかったと思わせた。
「『召喚』! いくわよ弥生! 黄金の輝きは矢ゴルドパニッシャー! 」
 そういうことか……。このビーチバレー大会は魔法を使ってやるらしい。
 眩い光の矢をくらったボールは光り輝き始めて、その光が矢のようになっていった。それを、
「いきます! 身体強制強化第一マイティフォーム! 」
 赤く長方形の魔法陣が上から降ってきたかと思うと、白鳥はボールよりも高く飛び上がった。
 目算でおよそ3メートルだ。おそらく加減してると思うが、なんちゅう身体能力だ。
 思いっきり腕を振り下ろして打ったスマッシュの威力は計り知れない。飛行機のエンジン音のような空を切る音が響き渡ったほどなのだ。
 望月たちはそのボールに手も足も出ずに失点した。
 辺りに轟音が鳴り響く。
 バウンドすらしないボールは地面にめり込んでミニサイズクレーターをコートにつけた。
 心の底から参加しなくてよかったと思う。こんなもん顔面にくらわなくても死ぬことは確実だ。
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