魔法少女の魔法少女による魔法少女のためのご主人様幸せ化計画

円田時雨

文字の大きさ
81 / 114
バレンタイン宝探しツアー

カード探し

しおりを挟む
 俺たちは数十分後には駅前広場のパチンコ屋に着いていた。宝があるような様子はない。
「おっかしいな~。堀山が間違えてたってことなのかな? ぜんぜんないぞ」
 西田が愚痴るように言った。そんな簡単に見つかるんだったらとっくに誰かが取ってるだろう。
「マスター、店の人に聞いてみようぜ」
 店員にきいたって宝がポンと手渡されるわけでもなかろう。
 そんなことを思っていると、いつの間にか店員から話を聞いてきた西田が帰ってきた。
「どうだった? 」
「おう、成果はあったぜ」
 そう言って西田が渡してきた物は、縦の長さがスマホくらいあるカードみたいなのを渡してきた。鍵の穴のイラストが描かれている。
「昨日の夜に茶髪の女の子が、俺たちが来たらこれを渡してくれって店員に頼んできたらしくってさ」
 それって望月の事だろ。
 それにしても、鍵の穴マークってのは一体なんのことなんだ? 場所かなにかを示している可能性が高いってことは分かるのだが、それが一体どこを示しているのか、なにを示しているのかがさっぱり分からない。
「ほぉーっ……。鍵の穴のマークでございますか……」
 執事の堀山さんに相談してみることにした俺たちは、堀山さんに例のカードを見せた。
「なにか分かりますか? 」
「そうですね……。お宝の地図をお渡ししてくれませんか? 」
 俺は堀山さんの指示に従って、リムジンの中にほったからしになっていた宝の地図を渡した。
「おそらく……こういうことでございましょう」
 そう言って堀山さんは、カードを地図の2と書いてあるところに貼った。
 地図によると、ここからずっと西にある場所だ。
「なるほど、そういうことなのか。そういやこの場所って……」
「ハイ、左様でございます。このイラストは鍵の穴マークではなく、古墳を表したイラストと思われます」
 分かりにくいな。ややこしい。
 俺たちはスグにリムジンに乗り込んで古墳のある場所に向かった。
 社会の教科書に出てくるくらい有名なその古墳は、規模的にはちょっとでかいかなってとこだな。
 誰が埋葬されていたのかはよく分かってないらしいので、有名なんだろうがありがたみを感じない。今となっては古墳形芝生公園みたいな扱いなんだから仕方ないっちゃ仕方ないかもしれない。観光に来る人なんていないし。
 そんなとこに到着した俺たちは、おそらくあるであろうカードを探し回った。次の場所を示してくれるものに違いないそれは、ツボのハニワのレプリカに入っていた。
 管理人に渡した方がいいのではないだろうかとか、ゴミと勘違いして捨てられでもしたら完全に詰んでたような場所である。
「マスター、今度はなにが書いて合った? 」
 そう言って見せたカードは、パチンコ屋で見つけたカードとは違ってわかりやすく画力があった。
 レンガ倉庫と観覧車が描かれていたそのカードは構図とかスゲェわかりやすい。
 見た瞬間俺たちはあそこだと察することが出来た。レンガ倉庫っていったらあそこしかない。立花と西田がデートしたところであり、俺と三好がショッピングしたところのすぐ近くである。
 西田の顔が一瞬で曇り始めた。
「うわ~……。あそこに行かなきゃいけねーのか……」
 西田の中ではあの場所は完全に黒歴史に認定されているらしい。ガックリと肩を落とすと、溜め息をバンバンつきまくった。
 地球に優しくないのでやめていただきたい。
「なぁーマスター……。やっぱ宝探しなんてやめようか。あんなとこ行きたくない」
 子どもが家出したけど帰るに帰れなくなってどうしようかオロオロしてるみたいな表情になった西田だが、
「この場所の近くでなにかおありになったのですか? お坊っちゃま、私にお聞かせください。そこまで嫌がる理由はなんでございましょう? 」
 俺はお坊っちゃまって言葉に吹き出しそうになった。
 そのお坊っちゃまは堀山さんの質問をなんとか誤魔化している。
「えぇい! しょうがねぇ! そこまで言うなら行ってやろうじゃねえか! あの場所に……」
 そんな桃太郎が鬼ヶ島に行くことを宣言したみたいな口調で言わなくても……。
 俺と堀山さんは西田の茶番を無視して次なる場所に向かった。
 さっきまで来た道を戻って、さらに東に向かわなければ行けなかったので、時間的にも面倒である。
 国道を規定速度ギリギリのスピードで走り抜け、俺たちはレンガ倉庫にたどり着いた。どうしてもあの時の出来事が思い起こされるらしい西田は、獲物をみつけたダツみたいにイラストの示す場所に向かってダッシュした。
「マスター! とっととカードをみつけてさっさと退散しようぜーっ! 」
 そんなにここが嫌なのか。
 レンガ倉庫の中にあるパスタ屋は相変わらずオシャンティな雰囲気をかもしだしている。三好と行った時はもうちょい賑わってた気がするが、その日は休日だったからなんだろうとテキトーな答えを出して西田の元に走っていった。
 絵が示している場所は、レンガ倉庫が立ち並ぶ通路を抜けたところにあった。
 港のクレーンや貨物船が右端に見え、左端には中途半端な大きさの観覧車が見えている。観覧車の近くには子どもたちに露骨な宣伝としか思えないような風船を配っている着ぐるみの熊がいた。
「この近くに宝かカードがあるんだよな? 」
「多分カードだろ。ゴミ箱の中まで漁ったらいいんじゃねえか? 古墳の時みたいにどこにあるかわからねえし」
 西田はこの場からとっとと離れたいと連呼しながらくまなくレンガ倉庫付近を探しまくった。だがどこを探しても見つからなかった。
 西田はたくましい程の被害妄想をさらに膨らませている。
 ふと熊の着ぐるみを見ると、こっちに近づこうとしているが中々勇気が振り絞れないように見えた。何がしたいのだろうか。男子高校生ともなると風船も渡しづらいのだろうか。
 仕方なく俺は着ぐるみに近づいていった。
「はぅわっ! 」
 ん? あの着ぐるみって喋るタイプの奴じゃないよな? 梨汁ぶっシャーとかしないだろうに。
 しばらくオロオロした着ぐるみは、ついに覚悟を決めたらしく俺に近づいてきた。
「あのっ! 受け取ってくらひゃい! 」
 どこかで聞いたことのある声で渡されたのはなんとあのカードだった。
 いかにも絵心がある女子高生が描いたのだろうと容易に想像できるその絵は、上から見下ろしたようなキレイな夜景が描かれていた。
 ところでであるが、俺はさっきから気になっていることを着ぐるみに言ってみた。
「お前、白鳥か? 」
 誤って花瓶を割ってしまった子どもの様子をジェスチャーだけで再現しているような焦り方をする着ぐるみ。
「ちちち……違います! 私は熊リーヌなんれす! 」
 クソネーミングセンスなんて言葉が頭の中で反復横飛びし始めた。
「それでは私はお仕事があるんで ……失礼しま~すっ! 」
 スタコラサッサと自分の持ち場に戻る白……熊リーヌは、こっちの様子をうかがいつつも仕事に戻った。
「見つかったぞ、カード」
 すっかりやる気をなくした西田にカードを突きつけた俺は、堀山さんとカードに描かれた場所がどこなのかを考え始めた。
「堀山さんはこんな感じの夜景が見下ろせる場所に心当たりとかありますか? 」
「そうでございますね……。これほどの夜景が見える場所といえば、おそらく恋結びの丘でしょうか」
 恋結びの丘とは、このへんじゃ多少有名なデートスポットである。
 カップルがそこに来て、100万ドルの夜景を見下ろしながら柵に南京錠をつけるのだ。するとあら不思議、そのカップルは永久に結ばれるんだそうだ。絶好の告白スポットでもあるらしい。
 男だけでこんなとこなんか行きたくないな。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...