魔法少女の魔法少女による魔法少女のためのご主人様幸せ化計画

円田時雨

文字の大きさ
89 / 114
花見の思い出は命懸け

桜の下の大戦争2

しおりを挟む
「っ! やるやん! 」
 魔人は白鳥に手首をひねってマシンガンの銃口を向け、引き金を引いた。
 ドドドドドっ!
 桜並木に響き渡る銃声は無慈悲だった。思わず目をそらしてしまう俺を責めないでいただきたい。
「大丈夫、安心して」
「……なんでだ? 」
 無表情を維持しながら静かに立花は答えた。
「彼女は生きてる」
 そう言われてそらした目を元に戻した。
 そこには魔人の手元でバラバラに斬られたみたいなマシンガンとすっかり丸く縮んじまった白鳥がいた。
「ふぎゅう……」
 なんて言いながらビクビクしている。驚いているのは魔人の方だ。
「な……なんやこれ! どうなっとるねん……? これ……」
 そう言いながらマシンガンをポイッと捨てた魔人はあたりをキョロキョロし始めた。
 その時、
「今よ! 真理! 」
 工藤がそう叫ぶと、2人は矢と弾を一斉に魔人に向けて発射した。白鳥はそれに素早く反応して後ろにジャンプ回避した。
「やっかいやな……。『召還』! 」
 魔人は素早くゴッツイバズーカ砲を2つ取り出して、そいつを工藤と早瀬に向かって乱射した。
「っ! 」
「なっ? 」
 2人は驚きながらも後方へジャンピング回避した。
 一方矢と弾は爆風で吹き飛ばされたらしく、1発も魔人に当たることは無かった。
「とおっりゃあああああああっ! 」
 上からそんな叫び声が聞こえるなーとか思ってたら、空から信号機が降ってきた。
 どうなってんだよ……信号機なんて降ってくるもんじゃねえって! 
「なんでやねん! 信号機って降るもんちゃうやろ! 」
 おお~。大阪弁の『なんでやねん』頂きました~。
 魔人は全力ダッシュで信号機をなんとか避け、
「『召還』! 」
 再び大太刀を取り出した。信号機の上には望月が乗っていた。
「マスターっ! 立花さんが作ってくれたんだ~っ! いいでしょ? いいでしょっ? 」
 全然よくねえよ。どこに憧れる要素あるんだよ。
「なんで信号機作ったんだ? 立花」
「……奇襲するには上空からの攻撃が最良と判断し、望月さんに頼んで実行することになった」
 ふーん、なるほど。それじゃ質問に答えたことにはならんけどな。
「信号機にした理由は簡単。足場がついていて上から落としたら充分凶器になるから」
 そんだけかよ。
「『召還』! 」
 望月は小太刀を取り出して、信号機から降りた。
「『アクセルレイド・2』! 」
 望月は消えたと思ったら一瞬で魔人の目の前に来ていた。
「なっ……! 速いねんお前! 」
 この言葉が結果論的には火蓋を切ったのだろうか。
 望月は一気に魔人を攻めようと素早く斬りかかった。それを魔人は大太刀のパワーで薙ぎ払う。薙ぎ払われた望月は着地した瞬間に素早く切り替えて斬りかかり、また大太刀に薙ぎ払われる。
 これが超高速で繰り返されているのだ。範囲の広いつば競り合いみたいなもんか。
 既に工藤と早瀬は超スピード勝負に割って入れるはずもなく、観戦するしかないようだ。
 両者とも全く隙を作らず相手の隙をつこうとしているが、流石に長い間続けるとジリ貧になってくる。
 それを打破したのは、
「ハイにゃっ! 」
 白鳥だった。
 白鳥は魔人の背中をぶん殴って桜の樹海まで吹っ飛ばした。
「『アクセルレイド・3』! やあぁっ! 」
 大きくジャンプした望月は、桜の木を踏み台にして一瞬で魔人の背後に回った。
 真っ青なツインテールをたなびかせ、それを予期していたかのように横にそれて回避した。
「甘いっちゅーねんアホ! 『召喚』! 」
 魔人の手に握られたのは、矢である。
 弓はどうした? 弓は。
 腕を弧を描くように横に振った魔人だったが、望月は後方に大きくジャンプして信号機の上に飛び乗った。
「逃げんなボケ! 『身体強制超速化アクセルフォーム』! 」
「えっ! あれって……? 」
「はにゃっ? 」
 望月と白鳥がほとんど同時に驚きの声をあげた。
 それもそうだろう。俺だってかなり驚いたさ。魔人が能力を発動した時、長方形と丸い2つの魔法陣が左右から挟み込むように現れたのだ。
「私たちの……」
「魔法陣……? 」
 どうなってんだ? 能力の名前も2人の能力を合わせたような名前である。
「これで最期や。捕獲対象はん、パクらせてもらうで……」
 魔人の黄色く光る目が、この状況のヤバさを物語っていた。
「どうなってるの? マスター、あの魔人の能力分かるー? 」
 ンなわけあるか。
 少なくともお前らよりはこの状況に慣れてるつもりは無いからな。全人類と比べたら俺の圧勝だろうけど。
「へっへーん! アンタらに私の能力が分かってたまるか! ってか、分かったとしてもどーしようもないっちゅー能力や! 詰んだでお前ら! 」
 明らかにフラグ発言とも取れるような言動を無視して、望月は魔人に突撃していった。
 もちろん超スピードである。
「『召還』! 」
 魔人がそう言って取り出したのはさっきよりもちょこっと小さい銃だった。大太刀とともに構えて望月に挑むつもりらしい。
「くらえ! 」
 魔人は銃を望月に向かってぶっぱなした。それを大ジャンプで避ける望月。
「『ダークネス・ソード』! 」
 大太刀に真っ黒いオーラを帯びさせた魔人は、猛スピードで突進してくる望月に横一閃で応じた。
 立花はそれを見て素早く反応した。手を望月に向かってかざしたのだ。
 楽だよな、それ以外の動作いらないんだから。
 そんなことを考えているうちに、望月の目の前が壁で覆われた。
 魔人の横一閃はその壁を真っ二つにして、さらに望月に向かって突進した。
「ようやく分かった」
 ハラハラしながら戦闘シーンを見てる俺に向かってボソッと話しかけたのは立花である。
「あいつの能力をか? 」
 コックリと頷いて、
「そう」
 思ったよりあっさり分かるもんである。
 ちなみにこうやって話している間にも、魔人と望月はバカでかい土煙を上げながら高速で戦闘しているところだ。
「おそらく彼女の能力は、相手の能力を見ることで一部をコピーすることができるもの。コピーした能力の複数同時展開も可能」
 チートじゃねえのか? それ。
 立花の説明によると、魔人が出した能力は全て望月たち魔法少女の能力に当てはめれるらしい。
 アクセルフォームは望月と白鳥の、大太刀に黒いオーラを纏わせたり矢を召喚したのは工藤の、あらゆる銃を召喚したのは早瀬の、ツタが絡まった時にそいつを燃やしたのは立花の能力ってことらしい。
「なにか俺に協力出来ることはないか? この中で唯一能力を持たない俺だったら……」
 俺が続きを言いかけると、立花が無表情のまま俺を睨みつけた。
 今まであらゆる立花の無表情を見てきた俺だが、恐怖を感じるのは初めてだ。
「あなたを守るのが私たちの使命。そのために今まで、そして今も命を懸けている。下手なマネは許さない」
「す、すまねぇ……」
 立花がさらに俺へ追い打ちをかけようと口を開きかけた時、
「うわっ? 」
 望月が思いっきり吹っ飛ばされた。魔人の手にはゴッツイロケランがある。
「愛果ちゃん、私が代わりにやるよ。援護射撃程度であれば結ちゃんも協力してくれるって言ってるし」
 早瀬はそう言うと望月を後ろに下げた。
「『召喚』! 」
 早瀬の手に握られていたのは、でっかいライフルとゴツイマシンガンだった。
「お? 選手交代か! ええでええで! タイマンやったら楽勝で勝てるわ! 」
 魔人はニヤリと笑みを浮かべた。
「舐めないでね、魔人さん」
 早瀬は片手に持っているマシンガンをいきなりぶっぱなし始めた。弾は魔人の周りに行くとピタリと止まり、魔人を包囲し始めた。どっかで見たことあるような気が……。
「『ダイナマイトプリズン』! 」
 四方八方を囲んでいる弾は魔人に向かって突撃していき、一気に爆発四散し始めた。
 ってそれ魔空包囲弾じゃねえか!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

悪徳領主の息子に転生しました

アルト
ファンタジー
 悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。  領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。  そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。 「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」  こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。  一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。  これなんて無理ゲー??

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...