魔法少女の魔法少女による魔法少女のためのご主人様幸せ化計画

円田時雨

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片思いフレンズ 第2章

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「無駄だよ、捕獲対象さん。私が目で捉えたら、それだけで幻影を見せれるんだから」
 俺がその声に反応して後ろを振り返ると、望月が天野の目を手で覆っていた。
「こうすれば見えないじゃん! 能力も使えないよね! 」
 その発想は……まぁ普通にあるよな。視界を遮りゃいいんだから。
「行けぇ! マスター! 」
 そんなピカチュウに命令する永遠の10歳みたいな言い方しなくても……。
 なんてことを考えてる暇はない。俺は全力ダッシュで三好の元に向かった。黒キモイ円柱はもう目の前だ。
 ……目の前なのはいいが……どうやって登ろうか? ロッククライマーなら楽々登れそうな、そんな感じの凸凹はそこら中にある。舞空術とか使えればもっと楽に行けるだろう。
 しかし、今の俺はいくら立花に強化されても、基礎的な能力はそのヘンの男子高校生程度なのだ。それを無理やり足し算で数を増やしているだけに過ぎない。
「防衛対象さん? ここでなにしてるんれすか? 」
 これ、サイズは全然違うけど、バトルファイトのモノリスに似てないか? なんてくだらないことを考え始めた時、白鳥が背中に話しかけてきた。
「ん? あぁ、これどうやって登ろうかと考えてたんだ。出来れば頂上の三好がいるとこまで行きたいんだが、最悪何本か伸びてる枝みたいなとこに行けりゃなぁって」
 白鳥は、しばらく考えるような顔をして、
「分かりました。それじゃあ、私の腕に捕まってください! 」
「何をする気だ? 」
「防衛対象さんを投げ飛ばします」
 ……は? キラービーでもない白鳥が俺を投げ飛ばす? 俺もこの戦闘で、中二病が悪化したとは思うが、白鳥の頭はいかれちまったのか?
 と、白鳥の顔をマジマジと見てみたが、このドヤ顔は多分いかれたわけではないだろう。俺は白鳥の言葉を信じて、しぶしぶ右腕に捕まった。
「いきますよ~~……」
 白鳥は何度か深呼吸をして、
「『マキシマムフォーム』! 」
 赤い長方形の魔法陣が白鳥の体を通過する。一瞬だけ赤く発光する白鳥。
 俺には、いつもビクビクしてる白鳥が一気にめちゃくちゃ強くなったことを実感した。今までのなんとなくではなく、ビリビリと伝わるなにかを感じるのだった。
「防衛対象さん、いってらっしゃぁい! せいにゃあぁっ! 」
 半円を描くように腕を振りかぶった白鳥。遠心力云々なのかは知ったこっちゃないが、思わず白鳥の腕を放したかと思うと、俺の体はグングンと空をかけ登って行った。
 どんな感覚か……言葉で表すのにはいささか俺の語彙力が足りないようだ。波のように押し寄せる風を全身で受けながら、それを全身でぶった斬ってるってとこだろうか。それ以上うまい表現が見つからない。
 あっという間もなく、頂上に一番近い枝みたいなとこまで飛んだ俺は、上手いこと枝に掴まってよじ登った。
 そこには、1人の白髪でロン毛男が立っていた。身長は2mを軽く超えそうなくらい高い。黒い袴は成人式ではっちゃける若者のように立派だった。
「やぁ、待っていたよ、攻撃対象君。いや、マスター……と呼んだ方が馴染みがあるのだったかな? 」
 煽ってんのかクソロン毛。マスターってあだ名も、攻撃対象って呼ばれ方も両方嫌いだってんだよ。
 ……ん? 
「攻撃対象……? あいつ……天野美雪は俺のことを『捕獲対象』とか言ってたはずだ。どういう風の吹き回しだ? 」
「どちらにしろ同じことだよ。死なない程度に攻撃すればいい。その後捕まえるんだからな」
 戦闘狂かよめんどくせぇ。
「さて、攻撃対象君、君にはこちらの事情により、捕まってもらう必要がある。出来ればことを穏便に済ませたいところではあるが、もしも拒否した場合……」
 クソロン毛は声を押し殺すかのように、クックックッと喉を鳴らして歪んだ笑顔を見せた。
「君を気絶させるあるいは殺すしかあるまい」
 俺は上にいる三好をチラリと見た。眠っているかのような表情で、街全体を見下ろしている。
「彼女を救いたいのか? そのためにここに来たのだな? ククッ……残念ながら攻撃対象君、君のその行動は、我々にとっては手間が省けたとしか言えないのだよ」
 クククと気味の悪い音で喉を鳴らすロン毛。
「あっそう」
 俺はテキトーにそれを返し、こいつをスルーしつつ三好を助ける方法を考えた。
 俺は作戦を考えるのは相当苦手なタイプだ。戦略ゲーなんてのは、考えることすらめんどくさいので、手を出してすらいない。格ゲーやら無双ゲーとかでは、使いやすいコマンドを覚えてそれを連打することだけに徹している。
 つまり何が言いたいかというと、こういう局面は苦手だってことだ。相手が予想外の行動を取ると、立てた作戦がすべて崩壊するくらいガバガバな作戦しか考えつかない。
 そんな俺がたった今考えついた作戦に、自信を持てるはずがなかった。それでも決行するしかないだろう。何も考えずに当たって砕けちまったらそれは特攻でしかない。当たって砕けても、今の俺は三好に破片さえ届いたら勝ちなのだ。あとは魔法少女たちに任せりゃいい。
「悪いなオッサン、お前の相手をしてる暇なんてないんだ。悪いが、そこを通してもらうぜ……」
 ロン毛のオッサンは、考えるようなポーズを取りながら喉を鳴らした。
「君にそんなことが出来るとは思えんがね」
「当たって砕けろ……ってやつだよ」
 素早く、連続でカードをスラッシュした。
『スラッジ』
『フラッシュ』
『ビート』
『スピード』
『コピー』
 ロン毛ヤローの行動速度を下げ、音と光で相手の5感を奪う。そして俺の行動速度を上げ、万が一見つかった時のために分身を出しておく。これが俺の作戦だ。
 連続でここまでカードをスラッシュするのは初めてだが、ライトニングソニックとかバーニングディバイドとか使えないもんかね。相手に攻撃出来ればこれほどスカッとする話はないと思うが。
 そんなことを心の中で愚痴りながら、全速力で三好の元へと向かっていった。黒いキモ柱は、体全体を使って、見様見真似ながらロッククライマーっぽく登って行った。
 当たり前だが、カードの効果は永続発動ではない。いつロン毛ヤローが襲いかかるかわからない恐怖は、思っていた以上に俺の手足を重くするのだった。
 三好がいる場所まで、腕を伸ばしたら届きそうで届かないところまで近づいてきた。あと少し……あと少し……! 
 三好に向かって手を伸ばそうとしたその瞬間、俺の体が、さっきまでいた枝みたいな部分に向かって引っ張られていった。
「う……うわあああ! 」
 落ちた……って表現は正しくない気がする。引っ張られていった、吸い込まれて行った。多分そんな感じの表現が正しいのだろう。
 今までにない感覚が俺をパニックにさせた。三好からグングン離れていく。
 あっという間に、さっきまでの場所まで行ってしまった。スグ隣にロン毛ヤローが優越感に浸ってそうな、クソムカつく微笑みを見せやがった。
「思っていた以上にやるじゃないか。天界人どもから借りた力ではあるだろうが、一時的に私の5感を奪ったを想像以上だ、君となら少しは楽しめるかもしれないな」
 しばらく謎の間を開け、更なる威圧感を出した。
「君も付き合ってくれるだろ? 私主催のダンスパーティに……」
 少年マンガじゃそーゆーセリフ吐くヤローがなんて呼ばれてるのか、コイツは理解していないようだな、ロン毛噛ませ犬。
「悪いな、遠慮させてもらうぜ」
「ほう……何故だ? 」
 俺もくそロン毛の真似をして、謎の間を作ってみる。
「悪いが俺にはダンス出来る自信が全くない。なんたって、前の体育の成績が2なんだからな! 」
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