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第1章
幕間 ~クリス~
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私の名前はクリス。
大好きなマスターにつけてもらった。
私が生まれた時は、自我もないただのスライムだった。
他のスライムと同じ、冒険者というものに倒される日々を送っていた。
ある時私は、ダンジョンを彷徨い気がつくと行き止まりにいた。
どうやら一番奥にきたらしい。
ここは居心地がよく、力が湧いてくるようだ。
そうしていると、何故か水の魔法が使えるようになった。
どうやら進化したみたいだ。
あとから知ったけど、ここはディーネたちが昔、マスターの魔力が暴走した時に、精霊湖の水を近くに通したから水系統の魔力が多いって言っていた。
そんなことで、進化した私は自我が芽生え、一段とマスターの魔力がわかるようになり、さらに進化しようと一番魔力が濃い場所に居続けた。
◇◇◇
ある日、冒険者がやってきた。
進化したものの所詮私はスライム。
魔法一発でやられてしまった。
マスターは悲しんでいるようだった。
それで復活する時に大量の魔力をくれたおかげで、前よりも強い状態で復活させてくれた。
スライムと言っても進化個体ってだけでかなりの魔力を使うはずなのに。
私はマスターのためにもっと強くなろうと心に決めた。
冒険者がきても、隅の方で大人しくしとけば弱いスライムには興味がないのかみんな素通りしていく。
もう少しで進化しそうかなって思っている時に、近くで冒険者たちが騒いでいた。
近寄ってみると、冒険者たちはギョッとなったが、普段から大人しくしてるせいか何もしてこなかった。
よく見てみると、魔術師っぽい女が倒れて治療を受けているようだった。
私はこれを利用して進化しようと思いついた。
冒険者を助けるならマスターも認めてくれるだろう。
なんとかマスターに思いを伝えて大量にミスリルをもらった。
ミスリルというのは聖銀石と呼ばれ、聖属性の魔力を大量に含んでいる鉱石と冒険者が話しているのを聞いたことがあったからだ。
私の水の魔力は精霊湖の浄化作用もあるので相性はいいはずだ。
スライムは取り込んだ物からコピーすることができる。
治療のついでに、魔法と知識をコピーさせてもらおう。
コピーの方がついでであって、決して進化してやると下心があるわけではない。多分。
ミスリルを取り込み、聖属性のセイクリッドスライムという変異種に進化した私は、冒険者の女を取り込んだ。
もちろん食べるわけではない。
他の冒険者は私が進化したのを見て呆然としたままだ。
取り込んだ女は新人の回復術師だったらしく、めぼしい情報はなかった。
まぁ1階層で倒れるぐらいだから期待はしてなかったけど。
進化できただけでもヨシとしよう。
女を治療して吐き出すと、すぐに目を覚まして何度もお礼を言ってきた。
そこに赤い果実を渡してきた。
リーンというものだそうだ。
リーンを取り込んだ私は美味しさに感動した。
お返しに体の空間収納から出した瓶に聖属性の魔力で作ったポーションを入れて渡した。
その噂が人を呼び、今では食べ物とポーションを交換している。
下層で取れる物は魔力も多く特に美味しい。
順調に強くなっている私は、下層に果物を取りに行くこともあり、これは誰がマスターの配下にふさわしいか、わからせるためでもある。
襲ってくる魔物を返り討ちにすると、さらに強くなるから一石二鳥だ。
一石二鳥という言葉はマスターが使っていた。
マスターはたまによくわからない言葉を使う時がある。さすがマスターだ。
そんなやりとりを毎日のように十数年繰り返していると、ダンジョンに不思議な存在が侵入してきた。
敵ならば取り込もうと思っていたが、どうやらマスターの存在を知ってるようで、様子を見ることにした。
マスターに助けを求めて来たらしい。
マスターが困っているようなので、転移魔法陣を取り込んで覚えた転移でマスターの元に跳んだ。
私はマスターの魔力をたくさん含んでるから、マスターの場所がわかるのだ。エッヘン。
突然現れた私にマスターはびっくりしていた。
その顔に私のあるはずのない頬が緩んだ気がした。
侵入してきた存在を見てみると、私に近い力を持っていることがわかった。
精霊というもので、魔物でも人でもないらしい。
マスターは精霊を助けることにしたようだが、外に出ることができないので、私が行くことにした。
ダンジョンは魔物が外に出ないように結界が張ってあるから、外に出るのは初めてで楽しみだ。
しかし外に出ようとした瞬間、マスターが精霊に名付けしてしまった。
私を一番に名付けして欲しかったからショックだった。
でも、あとから名付けする約束をしてもらえたからヨシとしよう。
これが私とディーネの長い付き合いの始まりだった。
ディーネと一緒に外に出た私は、感動したというよりも困惑した。
なぜならマスターのダンジョンの方が魔力も濃く、綺麗で、居心地もいいからだ。
それに近くに人間の気配はあるが、どちらかというと殺気のようなものだ。
ダンジョンでも良い冒険者たちばっかりだったわけではない。もちろん盗賊もいた。
それでも倒す、倒されるという覚悟は持っていたように思う。
しかし、ここにいる人間たちは一方的に追い詰める悪意しかなさそうだ。
マスターは何人か生かせと言っていたが、生かす必要があるのか疑問だ。
ディーネが別行動取りたいと思う気持ちもわかる。
一瞬で終わらせることもできるが、それでは効果が薄い気がする。
やはり二度とこの地に踏みこませないようにわからせる必要がある。
だからこいつらがいつもしていると思われることをしようと、ゆっくりと追い込んで行くことにした。
最終的に4人生かした。
最初は1人だけで十分だと思っていたが、この愚かな人間たちは1人だけだと誰も信じないような気がしたからだ。
それに、指揮官らしい後ろでふんぞり返ってる人間を捕らえたから、きっとマスターは褒めてくれるはず。フフフ。
少し遅くなってダンジョンに戻り、マスターに人間を渡すと怒られてしまった。
その時ふと、後ろから視線を感じて周りを見ると、他の精霊からもマスターの魔力を感じるようになっていた。
なんてこった。私は人間を追いかけ回すのに夢中になってしまったせいで、一番大事な時にいなかったらしい。
このままではいけないと思い、さっさと人間を捨てに行き、すぐにマスターに名前をおねだりして、クリスという可愛い名前をもらった。
マスターは私が人化出来ないことに安心していたが、実は人化できる。
でも私まで人化してしまったらマスターは悲しむ気がしたから、人化するのはマスターの後にすることにした。私は空気が読める女なのだ。
そんなことより、マスターの右腕になれたことが一番の喜びだ。
これを機にさらに忠誠を誓うことにしたマスター大好きなクリスであった。
大好きなマスターにつけてもらった。
私が生まれた時は、自我もないただのスライムだった。
他のスライムと同じ、冒険者というものに倒される日々を送っていた。
ある時私は、ダンジョンを彷徨い気がつくと行き止まりにいた。
どうやら一番奥にきたらしい。
ここは居心地がよく、力が湧いてくるようだ。
そうしていると、何故か水の魔法が使えるようになった。
どうやら進化したみたいだ。
あとから知ったけど、ここはディーネたちが昔、マスターの魔力が暴走した時に、精霊湖の水を近くに通したから水系統の魔力が多いって言っていた。
そんなことで、進化した私は自我が芽生え、一段とマスターの魔力がわかるようになり、さらに進化しようと一番魔力が濃い場所に居続けた。
◇◇◇
ある日、冒険者がやってきた。
進化したものの所詮私はスライム。
魔法一発でやられてしまった。
マスターは悲しんでいるようだった。
それで復活する時に大量の魔力をくれたおかげで、前よりも強い状態で復活させてくれた。
スライムと言っても進化個体ってだけでかなりの魔力を使うはずなのに。
私はマスターのためにもっと強くなろうと心に決めた。
冒険者がきても、隅の方で大人しくしとけば弱いスライムには興味がないのかみんな素通りしていく。
もう少しで進化しそうかなって思っている時に、近くで冒険者たちが騒いでいた。
近寄ってみると、冒険者たちはギョッとなったが、普段から大人しくしてるせいか何もしてこなかった。
よく見てみると、魔術師っぽい女が倒れて治療を受けているようだった。
私はこれを利用して進化しようと思いついた。
冒険者を助けるならマスターも認めてくれるだろう。
なんとかマスターに思いを伝えて大量にミスリルをもらった。
ミスリルというのは聖銀石と呼ばれ、聖属性の魔力を大量に含んでいる鉱石と冒険者が話しているのを聞いたことがあったからだ。
私の水の魔力は精霊湖の浄化作用もあるので相性はいいはずだ。
スライムは取り込んだ物からコピーすることができる。
治療のついでに、魔法と知識をコピーさせてもらおう。
コピーの方がついでであって、決して進化してやると下心があるわけではない。多分。
ミスリルを取り込み、聖属性のセイクリッドスライムという変異種に進化した私は、冒険者の女を取り込んだ。
もちろん食べるわけではない。
他の冒険者は私が進化したのを見て呆然としたままだ。
取り込んだ女は新人の回復術師だったらしく、めぼしい情報はなかった。
まぁ1階層で倒れるぐらいだから期待はしてなかったけど。
進化できただけでもヨシとしよう。
女を治療して吐き出すと、すぐに目を覚まして何度もお礼を言ってきた。
そこに赤い果実を渡してきた。
リーンというものだそうだ。
リーンを取り込んだ私は美味しさに感動した。
お返しに体の空間収納から出した瓶に聖属性の魔力で作ったポーションを入れて渡した。
その噂が人を呼び、今では食べ物とポーションを交換している。
下層で取れる物は魔力も多く特に美味しい。
順調に強くなっている私は、下層に果物を取りに行くこともあり、これは誰がマスターの配下にふさわしいか、わからせるためでもある。
襲ってくる魔物を返り討ちにすると、さらに強くなるから一石二鳥だ。
一石二鳥という言葉はマスターが使っていた。
マスターはたまによくわからない言葉を使う時がある。さすがマスターだ。
そんなやりとりを毎日のように十数年繰り返していると、ダンジョンに不思議な存在が侵入してきた。
敵ならば取り込もうと思っていたが、どうやらマスターの存在を知ってるようで、様子を見ることにした。
マスターに助けを求めて来たらしい。
マスターが困っているようなので、転移魔法陣を取り込んで覚えた転移でマスターの元に跳んだ。
私はマスターの魔力をたくさん含んでるから、マスターの場所がわかるのだ。エッヘン。
突然現れた私にマスターはびっくりしていた。
その顔に私のあるはずのない頬が緩んだ気がした。
侵入してきた存在を見てみると、私に近い力を持っていることがわかった。
精霊というもので、魔物でも人でもないらしい。
マスターは精霊を助けることにしたようだが、外に出ることができないので、私が行くことにした。
ダンジョンは魔物が外に出ないように結界が張ってあるから、外に出るのは初めてで楽しみだ。
しかし外に出ようとした瞬間、マスターが精霊に名付けしてしまった。
私を一番に名付けして欲しかったからショックだった。
でも、あとから名付けする約束をしてもらえたからヨシとしよう。
これが私とディーネの長い付き合いの始まりだった。
ディーネと一緒に外に出た私は、感動したというよりも困惑した。
なぜならマスターのダンジョンの方が魔力も濃く、綺麗で、居心地もいいからだ。
それに近くに人間の気配はあるが、どちらかというと殺気のようなものだ。
ダンジョンでも良い冒険者たちばっかりだったわけではない。もちろん盗賊もいた。
それでも倒す、倒されるという覚悟は持っていたように思う。
しかし、ここにいる人間たちは一方的に追い詰める悪意しかなさそうだ。
マスターは何人か生かせと言っていたが、生かす必要があるのか疑問だ。
ディーネが別行動取りたいと思う気持ちもわかる。
一瞬で終わらせることもできるが、それでは効果が薄い気がする。
やはり二度とこの地に踏みこませないようにわからせる必要がある。
だからこいつらがいつもしていると思われることをしようと、ゆっくりと追い込んで行くことにした。
最終的に4人生かした。
最初は1人だけで十分だと思っていたが、この愚かな人間たちは1人だけだと誰も信じないような気がしたからだ。
それに、指揮官らしい後ろでふんぞり返ってる人間を捕らえたから、きっとマスターは褒めてくれるはず。フフフ。
少し遅くなってダンジョンに戻り、マスターに人間を渡すと怒られてしまった。
その時ふと、後ろから視線を感じて周りを見ると、他の精霊からもマスターの魔力を感じるようになっていた。
なんてこった。私は人間を追いかけ回すのに夢中になってしまったせいで、一番大事な時にいなかったらしい。
このままではいけないと思い、さっさと人間を捨てに行き、すぐにマスターに名前をおねだりして、クリスという可愛い名前をもらった。
マスターは私が人化出来ないことに安心していたが、実は人化できる。
でも私まで人化してしまったらマスターは悲しむ気がしたから、人化するのはマスターの後にすることにした。私は空気が読める女なのだ。
そんなことより、マスターの右腕になれたことが一番の喜びだ。
これを機にさらに忠誠を誓うことにしたマスター大好きなクリスであった。
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