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第22話 甘酸っぱい香り
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◆
声は力になる。魔法においても、剣においても。
剣を振るう瞬間のエフティアの叫びは、龍すら怯ませる凄みがある。
僕の剣とは違う、一振り一振りが必殺の剣――この剣を相手にすることができるということが、僕にとってはこの上ない幸運だった。
エフティアの剣は、着実にその切れ味を増していた。見えすぎるが故の太刀筋は、日々の研鑽によって網羅され、千もの選択肢という武器として昇華されてゆく。
彼女と共に僕は強くなる。そして――必ず剣鬼を殺す。
「ねぇ、アル君……わたし、もっと強くなりたい」
休憩するたびに繰り返される『強くなりたい』という言葉は、彼女の内側から溢れ出る渇望そのものだった。
その言葉を聞くたびに見えてくる、彼女が剣使になった姿――そこに至るための道を一緒に考えるのが、今の僕がするべきことだ。
「エフティアは、もっと強くなるためにはどうしたらいいと考えてる?」
「えぇーっと、えぇーっとぉ……」
僕は彼女にいつも問いかけるようにしている。『ばかなのは嫌だ』と言っていたのは彼女だ。しっかりと考えてもらわねば。
「あぁーっ!!」
エフティアは何かを思いついたらしく、大声を上げて立ち上がった。かと思うと、両手を組み、体を揺らして落ち着きがなくなった。
そして、こちらをうかがうようにして見下ろし――
「――ねぇ、アル君が実は年下ってぇ……ほんと?」
「……?」
一瞬、思考が停止する。この人は何を言っているのだろう。
確かに年下ではあるけれど、何でその話に?
「ねーえー?」
じれったそうに体を寄せてくるので、汗と何かが混ざった甘酸っぱい香りが迫ってくる。
「い、いや……」
視覚と嗅覚への刺激のせいか、考えがまとまらない。彼女の世界に引きずりこまれてしまう前に、早めに切り返す。
「なんで、その話になったの? 強くなるための方法と、僕が年下であるかどうかって、ほら……繋がらないじゃない?」
僕が身振り手振りを交えながら問いかけると、彼女は「あぁっ!」とうなずいた。
「えっとねー、強くなるためにはやっぱり、中途半端はだめだと思うんだ。だから、色んな人と訓練した方がいいと思う。でも、わたし、なんとなくだけど、受け止められる人ってあんまりいないんじゃないかなって」
「うん、確かに君の剣とまともにやりあえる人は、だんだん少なくなってきたかもしれない」
「そうっ! だから考えてみたんだけどね、やっぱりディナとか、強い人と一緒にもっと訓練したいなって」
「ディナ……レディナさん?」
「うん。それでね、ディナがね、『アルちゃんって年下なんだよ。知ってた……?』ってにやにやしながら言ったんだ!」
「頭の中で」
「そう、頭の中で。それで――アル君が年下ってぇ……ほんと?」
なるほど。
「そうやって説明してくれたから、理解できたよ。ありがとう、エフティア」
「えへへ……」
「じゃあ、休憩終わり。続きをしよう」
「えっ? あれっ? えっ?」
「構えて」
「はいッ! ……えっ?」
疑問が残りながらも、ほとんど習慣的に構えるエフティア。剣使モードに入ればこっちのものだった。
しかし、年下うんぬんは置いておいても、彼女の言うことは最もだった。僕の剣だけでエフティアを強くし、僕も強くなる気でいたけれど――そんな凝り固まった考えは捨てるべきだ。
みんなとも、剣を重ねよう――
声は力になる。魔法においても、剣においても。
剣を振るう瞬間のエフティアの叫びは、龍すら怯ませる凄みがある。
僕の剣とは違う、一振り一振りが必殺の剣――この剣を相手にすることができるということが、僕にとってはこの上ない幸運だった。
エフティアの剣は、着実にその切れ味を増していた。見えすぎるが故の太刀筋は、日々の研鑽によって網羅され、千もの選択肢という武器として昇華されてゆく。
彼女と共に僕は強くなる。そして――必ず剣鬼を殺す。
「ねぇ、アル君……わたし、もっと強くなりたい」
休憩するたびに繰り返される『強くなりたい』という言葉は、彼女の内側から溢れ出る渇望そのものだった。
その言葉を聞くたびに見えてくる、彼女が剣使になった姿――そこに至るための道を一緒に考えるのが、今の僕がするべきことだ。
「エフティアは、もっと強くなるためにはどうしたらいいと考えてる?」
「えぇーっと、えぇーっとぉ……」
僕は彼女にいつも問いかけるようにしている。『ばかなのは嫌だ』と言っていたのは彼女だ。しっかりと考えてもらわねば。
「あぁーっ!!」
エフティアは何かを思いついたらしく、大声を上げて立ち上がった。かと思うと、両手を組み、体を揺らして落ち着きがなくなった。
そして、こちらをうかがうようにして見下ろし――
「――ねぇ、アル君が実は年下ってぇ……ほんと?」
「……?」
一瞬、思考が停止する。この人は何を言っているのだろう。
確かに年下ではあるけれど、何でその話に?
「ねーえー?」
じれったそうに体を寄せてくるので、汗と何かが混ざった甘酸っぱい香りが迫ってくる。
「い、いや……」
視覚と嗅覚への刺激のせいか、考えがまとまらない。彼女の世界に引きずりこまれてしまう前に、早めに切り返す。
「なんで、その話になったの? 強くなるための方法と、僕が年下であるかどうかって、ほら……繋がらないじゃない?」
僕が身振り手振りを交えながら問いかけると、彼女は「あぁっ!」とうなずいた。
「えっとねー、強くなるためにはやっぱり、中途半端はだめだと思うんだ。だから、色んな人と訓練した方がいいと思う。でも、わたし、なんとなくだけど、受け止められる人ってあんまりいないんじゃないかなって」
「うん、確かに君の剣とまともにやりあえる人は、だんだん少なくなってきたかもしれない」
「そうっ! だから考えてみたんだけどね、やっぱりディナとか、強い人と一緒にもっと訓練したいなって」
「ディナ……レディナさん?」
「うん。それでね、ディナがね、『アルちゃんって年下なんだよ。知ってた……?』ってにやにやしながら言ったんだ!」
「頭の中で」
「そう、頭の中で。それで――アル君が年下ってぇ……ほんと?」
なるほど。
「そうやって説明してくれたから、理解できたよ。ありがとう、エフティア」
「えへへ……」
「じゃあ、休憩終わり。続きをしよう」
「えっ? あれっ? えっ?」
「構えて」
「はいッ! ……えっ?」
疑問が残りながらも、ほとんど習慣的に構えるエフティア。剣使モードに入ればこっちのものだった。
しかし、年下うんぬんは置いておいても、彼女の言うことは最もだった。僕の剣だけでエフティアを強くし、僕も強くなる気でいたけれど――そんな凝り固まった考えは捨てるべきだ。
みんなとも、剣を重ねよう――
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