グランディオスの剣姫たち 月華の章 ――復讐のために入学したのに女子と同居とは聞いてないッ!――

杉戸 雪人

文字の大きさ
23 / 45

第23話 悪夢が追いかけてくる

しおりを挟む
「――ソーニャ、一緒に訓練しよう!」
「えぇ~、にゃんでー?」
「もっと強くなりたくて」
「それって、なんのためにゃ」
「……僕のためだ」
「ふにゃふにゃ、分かる。分かるにゃ」
「じゃあ――」
「でもだめにゃん」

――そう言われると、思っていた。思っていた以上に、ショックだ。
そもそも彼が一度も剣を振るっている姿を見たことがなかった。誘ったとしても、断られる可能性については想定できたし、こうしたことが何となく好きではなさそうだとも思っていた。

彼が強いのかも知らなかったが、それでも、ソーニャと剣を重ねてみたいと思う自分がいる。

「そんな顔するにゃあ~……」

けれど、珍しく申し訳なさそうな表情をするソーニャを見て、まだ希望は残されている気がした。

「どうしたら、いいのかな」
「気が向いたらかにゃぁ……」

僕は一応疑念の視線を送るが、「いいにゃ、そういう目」などと彼を喜ばせるだけだった。

「そうか、じゃあ他を当たるよ。特に思い当たらないけど」
「にゃ……」

すっかり肩を落とした僕の背中を、ソーニャが見つめているように感じた。

「見学くらいなら――」

え……。

「――してあげてもいい……にゃ」

聞き間違えじゃないよね――

「――ほんと!?」
「にゃあ……そんなに喜ぶなぁ」

ソーニャに駆け寄ってその肩を組まずにはいられなかった。

「あはは!! やったぁ!!」
「おぃ~、見るだけだぞぉ~……んにゃぁ」

強くなりたいとか、そういう次元ではない。
ただ、友達として彼と一緒にいられることが嬉しかった。



特別寮に併設された、特待生用の訓練場――そこに集まる学生たち。

元落ちこぼれであり、未来の剣使――エフティア。
「えへへ……こういうの、なんかいいね」

エフティアの剣を受け止めた優等生――レディナさん。
ソーニャあんたがこういうの、好きだとは思ってなかったよ」

僕の友達――ソーニャ。
「見学するだけにゃあ」

本当はリゼさんも誘おうと思ったのだけれど、上手くタイミングが合わなかった。

「エフティア、リゼさんはどうだった」
「声をかけようとしたんだけど、他のみんながどっかに連れて行っちゃって」

だよね……と、エフティアと顔を見合わせる。

〈あんた、どう思う〉
〈あんまし好みじゃない感じにゃ〉

一方で、レディナさんとソーニャは何か訳知り顔のように見えた。エフティアもそう感じたようで、二人に詰め寄る。

「ねえねえっ! 二人だけでわかってるのやめてよぉ……!」
「にゃはは……別においらだってにゃんもかんも分かるわけじゃ無いにゃ」
「あたしも……でも、ひょっとしたらあの子たち――」

レディナは何かを言いかけて口をつぐんだ。
エフティアにふくれっ面《つら》で迫られても、顔を押さえのけて拒絶した。

「レディナさん、僕達にできることはあるのかな」

レディナが何を考えているのかまではよく分からなかったが、もしもできることがあるなら、それをしたい。
彼女は意外そうな表情でこちらを見てから、からかうように笑う。

「へぇー、レディナなんだあ」
「あっ……いやその、なんというか」
でいいって言ったのにねぇ」

近寄るレディナから思わず左に顔をそらす。と、獣人《ファウナ》独特の笑みを浮かべたソーニャと目が合う。何だか腹が立ったので、今度は右に顔をそらすと、エフティアのきょとんとした顔があった。

「アル君が年下ってぇ……ほんと?」

忘却の箱にしまわれていたはずの記憶が、何かのきっかけで彼女の中で蘇ったらしい。しかし、二人きりの時でも何となく答えたくなかったこの質問に、ソーニャやレディナの前で答えるのはなおさら嫌だった。

幸いにして、前、右、左にしか阻むものがないなら……よし、後ろに逃げよう――


――逃げる?


叫び
落ちた

血が
父さんの
笑う影
僕は――


「アル君」
「――えっ」

手に伝わる硬い感触。
その奥からにじみ出る温もり。
ああ、エフティアの手か……。

「今日は、訓練やめとこっか」
「エフティア、なにを――」
「やめとこっか」

――急に何を言い出すんだ。これからみんなで強くなろうとしていたところなのに。
有無を言わさないエフティアの笑顔から逃れるように、ソーニャとレディナに助けを求める。

「二人もなんとか言ってくれないか。せっかく二人が来てくれたのに――」

――本当に申し訳が立たないよ。

「おいらは元々見学係だから気にしてないにゃー」
「あたしも……あっ、そうだ! ていうか、あんたたちさー、こういう珍しい集まりをするんだからさ、まずはすることがあるんじゃないの?」

レディナが人差し指を立ててくるくると回した。

「……そうなの?」
「そうに決まってんじゃん。都合のいい場所もここにはあるし――」

そう言って、レディナは特待生寮を振り返った。

「――特待生寮って台所あるんだよね?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件

エース皇命
ファンタジー
 前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。  しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。  悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。  ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

処理中です...