最弱ダンジョン商人、ドラゴンスレイヤーになる

杉戸 雪人

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断末魔の残穢

06

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ひとまず、俺たちは死の道行きを共にすることになった。ネリスの方から同行を提案してくれたのはありがたい話だ。

足元の見えない道を歩きながら、ネリスは俺たちの話を要約していた。

「――つまり、君はアイテム屋として他の冒険者の助けに来たと。そして、迷子になってしまったと」
「まったく、お恥ずかしい話で」

俺の話を聞いたネリスはずっと面白がっていたが、ミリアの方は人ではない者に向ける目で俺を見ていた。

「あんた、A級冒険者たちが何人も生きて帰ってないこと……知らなかったわけじゃないわよね……?」
「はい。そう聞いていたので、来るしかないなと思いました」
「ただの商人が……来るしかないって」
「ただの商人ではありませんよ。俺を購入する場合、きちんと対価はいただきます」
「その『タダ』じゃないわよ……」
「失敬。言葉を取り違えました。商人なもので」

俺とミリアの会話を聞いて、ネリスはお腹を抱えて笑っていた。

「ミリア、この人おもしろいじゃないか。買おう」
「ぜったい嫌よ」

残念ながら、売れ残ってしまったようだ。俺としては買われるのもやぶさかではなかったのだが。

「テナ、残念だったな」
「にゃ……」

もはや人型の猫である。テナと短くも深い意思疎通を図っていると、ネリスが「それにしても――」と口を開く。

「――魔よけの加護というのはまさしく奇跡だな。小一時間歩いているが、全く魔物に出会わない」
「龍種には通用しないんですけどね」
「それでも十二分の価値がある」
「恐れ入ります」

魔よけの加護……それは最も希少な加護の一つで、この加護を持つものは自分から向かわない限り魔物に襲われないという。今のところ、この加護を持つ他の人物と出会えたことはない。

ネリスが感心していている一方で、ミリアの表情は少し暗かった。

「全ての人にこの加護があればいいのにね」

ミリアの言葉に対して、ネリスは「滅多なことを言うものじゃない」とたしなめる。「悪かったわ」とミリアに謝られるが、その必要はない。

「俺もそう思ったことは何度もあります。だから、アイテム屋をしているんです」
「だから……と言うと、どういうことなんだい?」

ネリスが首をかしげる。

「残念ながら、俺は戦いのセンスがあまりないようで……それならば、危険な土地でも構わずに足を踏み入れ、冒険者たちの支えになろうと思った――そういうわけです」
「なるほど、それは殊勝なことだ」

ネリスは微笑んだ。一方で、ミリアはしんみりとした空気を漂わせ始めていた。これはいけない。

「ね、ただの商人ではないでしょう? 安くはありませんが、いかがです?」
「なっ……あんたって人は……ほんと、変な奴ね」

まったく、変な人ぐらいが俺にとってはちょうどよかった。
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