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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
75.一心とウィール様とのお買い物
しおりを挟むライミリ王都は、今現在お祭りなどは無いためそこまでではないが、十分賑わっていた。
そしてやはり貴族よりも平民たちの方が精霊を敬っているようだ。
その証拠にウィール様を見てギョッとして後、ペコリと頭を下げ道を開けている。
「はぁ、貴族はこれ以上が基本なのにね。嘆かわしいよホント。」
「気持ちは理解しますがせめてニコニコくらいはしてくださいよ、ウィール様。私の評価が下がったらどうしてくれるんです。」
肩を下げてため息をつきそうになるウィール様を小突き、屋台のおっちゃんからフランフルトを買う。
お金は(ほぼ強引に)押し付けました。うん、うまい。
国に入ってすぐ位のこの場所には噴水広場があり、多くの屋台がある。他にも何か買おうかな。そうキョロキョロと見渡しながらも一度パクリ。
「はぁ――――――――。」
意外とお腹が減ったので食べ進めていると、急に一心が大きくため息を吐いた。
「どうした?」
「………二度と外でそれを食べないように。」
「?」
この世界初の地獄声(低音のため千利が命名)に、「まったく理解していません。」という代わりに小首をかしげる。それすら何かに触ったようで、語気を強めて再び言われる。
「い・い・で・す・ね!」
「かまわんけど………?どうした?」
「マスターに淑女らしさを求めてはいけなかったというだけです。」
「余計に分からん。まぁ、いいか。」
美形に囲まれて食べるフランクフルトがうまいのでオールOK。
それにしても見物人が多いな。ウィール様を始めとした精霊王達は美形だから仕方ないけど、それにしたって多くないか?
パクパクと食べて、追加で紙袋に包んである串肉を買い、精霊王達に渡す。
意外なことに精霊王達は食べなくても生きていけるらしいが、食べたいらしい。
「みんな食べる?」
ウィン「僕欲しい!」 アーシェ「わたくしはイアと半分ずつ食べますわ。」
ダーネス「…………(フルフル)。」 ラトネス「ぜひ。」
アクス「もらおう。」 アイセン「私ももらう。」 ミカ「お肉食べたいですわ!」
フォルじい「わしは必要ありませぬ。」
それぞれの分串肉を買って、再び食べ始める。
あーと口を開けた時、ぱくりと肉を一つ取られた。
「ふむ、意外とおいしいですね。」
「いーっしん?普段行儀がどうのとか淑女がどうのとか言っている人の行動とは思えないんだけど?」
「虫よけです。ああ、ドレスにこぼさないようにお願いしますよ。」
「小鳥美、私にもやって?」
あーんと、先ほどの私のように口を開けたウィール様に串肉を入れる。
「ん!動物の肉もたまにはいいものだね。人間達が食べるのも納得だ。」
「でしょう?」
一通り食べ終えたようなので、移動を始める。
西の方にある商業地区に移動して、いろいろなものを見ていくことにする。
これ以上ないほど「雑多」という言葉が似合うこの地区は、先ほどとは違った賑わいを見せてくれた。
先ほどの場所は人々の賑わいの声で溢れていたが、この場所には商魂たくましい者達がはり上げる声で溢れている。これもこれで、悪くはない。
「姉ちゃんこれ買っていかないか?」
「おいこっちにもいいもんあるぞ!」
「女の子なんだからこれ買っておしゃれしな!」
などの勧誘を笑顔でスルーし、アーシェが教えてくれた店に入る。
一心がやれやれと首を振り、ウィール様が苦笑したこの店は武器屋。
いかにもドワーフみたいな武骨な店主が居そうな店の中には、誰もいない。
(ベルを鳴らして、少しお待ちください。)
そう書かれた小さな板と、横一列に並ばせ部屋を狭くしている元凶の板の壁があるだけだ。
小さな板の近くには小窓が開いており、アーシェ曰くここから手を出して武器をつくろってもらうそうだ。
板の言葉に従ってベルを鳴らし、その場で待つ。
アーシェやこの場にいる精霊達が言うには、ここの店主は極度の人嫌いであり、貴族嫌いのため顔を一切見せない。
しかしその腕は一流以上であり、国王に気に入られて騎士団長の剣を作ったらしい。本人確認のため見せる必要が出てきた顔は国王のみに見せたとか。
(さて……。できれば籠手を作ってもらいたいが、この世界に存在しない以上作るのは無理だろう。見本も無い事だし。なら、鞭でも作ってもらおうかな。攻撃用の鞭無いし。)
精霊たちの土地で使った鞭は回復専用だったりする。だから、鞭を頼むことになるだろう。
コツコツと聞こえる音で現実に引き戻された。どうやら、店主が近づいてきたらしい。
「…………手を。」
そういわれておとなしく素手を差し出すと、ヒュッと息を吸う音が聞こえた。
言葉を待つ沈黙が支配する中、次に聞こえてきたのは予想外の声。
「すまない。あんたに合う武器は俺には作れねぇ。他をあたってくれ。紹介状が必要なら渡そう。」
あらら、どうしよう。
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