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都会に出る時は・・・知り合いがいれば心強いものですよね? 15
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第一章 十一話
王都オゥバーシュタイン。人口は約3万人。商業活動などで滞在している人数を含めると約4万5千人まで膨れ上がる。
トライセン王国の首都にして最大の都市である。
{まずは宿の確保だな。ミネルヴァ、いい宿の情報はあったかい?}
{王都の宿については周辺の行商人などから情報収集した結果、幾つか候補が見つかっております。条件はございますか?}
{そうだな、一泊大銅貨5枚迄で設備が整っている所をピックアップ、部屋の大きさは拘らない。食事がついていればなお良い}
{かしこまりました。情報を投影致します}
モノクルに幾つかの候補が投影される。
ちなみにこの世界の物価と貨幣価値は、そのまま地球のそれに当てはめることは出来ない。
まあ、かなり大まかな換算でいいなら、大銅貨1枚で1000円位と考えてもらえばいい。
{幾つかあるな。この中で18番地区に一番近いのは?}
{黒鉄の車輪亭です}
返答と同時に表示が点滅する。
{其処にしよう。取り敢えず今日はもう遅い。一泊だけしていい宿なら明日からも泊まればいいさ}
{了解致しました}
宿に向かう道すがら街を見物する。基本は15~16世紀のヨーロッパ風の街並みだが、ちらほらと街灯があったり、下水らしき設備が見受けられたり、と地球とは若干違う所もある。
実際の所、当時のヨーロッパでも地域によって文明の普及率はまちまちだったし、ましてやこの世界には“魔法”の概念が存在するのだ。文明の進み方に差異があるのは当然だろう。
「なかなか趣のある街並みだな。これで風呂が有れば最高なんだが...」
{風呂は公衆浴場が一般的ですが営業時間が日の出からになります}
{変わってるな。なんでまた朝からなんだ?}
{風呂を経営している母体にはパン屋が多いからです。朝食用のパンを焼く余熱で給湯設備を稼働する事が多いようです。また1日の始めに身嗜みを整える意味もあるようです}
{なるほど合理的だな。なら明日は優雅に朝風呂としゃれこもう}
明日の朝が楽しみだ。
{モーニングコールをセットします。日の出の時刻でよろしいですか?}
{頼むよ}
そうこうしている間に[黒鉄の車輪亭]に着いた。重厚な扉の上には黒く塗られた馬車の車輪らしきオブジェが吊られている。
扉の横に掲げられた木製のプレートには[黒鉄の車輪亭]の名前と一泊大銅貨5枚の文字のみ。なかなかシンプルな看板で僕としては好感度が高い。少しワクワクしながら扉を開ける。
[キンキンキンッ]
極薄のワイングラスを軽く合わせたような鋭く澄んだドアベルの音が響く、
「ようこそ。黒鉄の車輪亭へ」
落ち着いた男性の声に思わず目を見張る
「【神 様】?」
いや……別人だ。
暗い色調のスーツ風上下にネクタイの様な(結び方の想像がつかない。)布を首からかけた初老の男性がカウンターに立っていた。
「いらっしゃいませ。ご希望のお部屋と泊数をどうぞ」
(何だろう神様に似ている訳でもないのに...イメージが被るな。)
「お客様?」
「ああ、不躾で申し訳ありません。知人にとても似ていらしたもので……シングルを一泊お願いします。今からチェックインして夕食はいただけますか?」
初老の男性はニッコリ(という擬音が聞こえそうだ...)と微笑むと、
「ええ問題なくご用意できます。そちらの通路を右に進んでいただければ食堂です。左は宿泊棟となっております。こちらがルームキーです。すぐお食事になさいますか?」
「そうですね、すぐにいただきましょうか」
「それでは食堂のほうへどうぞ。係の者にルームキーをご提示頂ければ食事をご用意させていただきます。因みにそちら様はお食事なさいますか?」
ミネルヴァを見て尋ねてきた。
{残念ですがその機能は有りません}
「いえ必要ありません。お気遣いありがとうございます」
「承知いたしました。それではごゆっくりおくつろぎ下さい」
と言って腰を折る。……完璧な礼だ!まずこんな完璧な礼はなかなか見れない。たまたま入った宿だったが彼は何者なんだ?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
セバスチャン“仮”に(彼をそう言わずして誰をそう呼べというのか?)見送られて食堂に入る。
広さは30畳程、ウッドテーブルが並んだ落ち着いたスペースにまばらに人が座っていた。
「宿泊のお客様でしょうか?お食事のお客様でしょうか?」
グレーのワンピースにエプロンをした少女が声を掛けて来た。
「宿泊です。食事をお願いします」
「かしこまりました。ルームキーをお預かり致します」
「よろしくお願いします。彼女は一緒でも構いませんか?」
ミネルヴァに視線を向けて質問する。
「鳴いたり騒いだりしませんよね?なら問題ありません。それにとってもお利口そうなお顔です!」
{…}
苦笑しつつ…
「ええ、彼女はとても大人しいんです。誰にもご迷惑はお掛けしません」
会話しつつ彼女はルームキーのナンバープレートから何かを外した。恐らくは食堂の使用済みを表す何かだろう。
「キーをお返しいたします。彼女のお名前は何と仰るんですか?」
「ミネルヴァです」
「よろしく、ミネルヴァちゃん」
「ホウッ」
「答えてくれました!そちらの席にお座り下さい。すぐにお食事をお持ちします!」
なるほど、看板娘ってやつだな。……程なくして美味そうな料理が運ばれて来る。と、同時にミネルヴァから...
{お食事中に申し訳ありません。警戒範囲内で特定行動規範に抵触した者がいます}
食後では駄目ですかね
王都オゥバーシュタイン。人口は約3万人。商業活動などで滞在している人数を含めると約4万5千人まで膨れ上がる。
トライセン王国の首都にして最大の都市である。
{まずは宿の確保だな。ミネルヴァ、いい宿の情報はあったかい?}
{王都の宿については周辺の行商人などから情報収集した結果、幾つか候補が見つかっております。条件はございますか?}
{そうだな、一泊大銅貨5枚迄で設備が整っている所をピックアップ、部屋の大きさは拘らない。食事がついていればなお良い}
{かしこまりました。情報を投影致します}
モノクルに幾つかの候補が投影される。
ちなみにこの世界の物価と貨幣価値は、そのまま地球のそれに当てはめることは出来ない。
まあ、かなり大まかな換算でいいなら、大銅貨1枚で1000円位と考えてもらえばいい。
{幾つかあるな。この中で18番地区に一番近いのは?}
{黒鉄の車輪亭です}
返答と同時に表示が点滅する。
{其処にしよう。取り敢えず今日はもう遅い。一泊だけしていい宿なら明日からも泊まればいいさ}
{了解致しました}
宿に向かう道すがら街を見物する。基本は15~16世紀のヨーロッパ風の街並みだが、ちらほらと街灯があったり、下水らしき設備が見受けられたり、と地球とは若干違う所もある。
実際の所、当時のヨーロッパでも地域によって文明の普及率はまちまちだったし、ましてやこの世界には“魔法”の概念が存在するのだ。文明の進み方に差異があるのは当然だろう。
「なかなか趣のある街並みだな。これで風呂が有れば最高なんだが...」
{風呂は公衆浴場が一般的ですが営業時間が日の出からになります}
{変わってるな。なんでまた朝からなんだ?}
{風呂を経営している母体にはパン屋が多いからです。朝食用のパンを焼く余熱で給湯設備を稼働する事が多いようです。また1日の始めに身嗜みを整える意味もあるようです}
{なるほど合理的だな。なら明日は優雅に朝風呂としゃれこもう}
明日の朝が楽しみだ。
{モーニングコールをセットします。日の出の時刻でよろしいですか?}
{頼むよ}
そうこうしている間に[黒鉄の車輪亭]に着いた。重厚な扉の上には黒く塗られた馬車の車輪らしきオブジェが吊られている。
扉の横に掲げられた木製のプレートには[黒鉄の車輪亭]の名前と一泊大銅貨5枚の文字のみ。なかなかシンプルな看板で僕としては好感度が高い。少しワクワクしながら扉を開ける。
[キンキンキンッ]
極薄のワイングラスを軽く合わせたような鋭く澄んだドアベルの音が響く、
「ようこそ。黒鉄の車輪亭へ」
落ち着いた男性の声に思わず目を見張る
「【神 様】?」
いや……別人だ。
暗い色調のスーツ風上下にネクタイの様な(結び方の想像がつかない。)布を首からかけた初老の男性がカウンターに立っていた。
「いらっしゃいませ。ご希望のお部屋と泊数をどうぞ」
(何だろう神様に似ている訳でもないのに...イメージが被るな。)
「お客様?」
「ああ、不躾で申し訳ありません。知人にとても似ていらしたもので……シングルを一泊お願いします。今からチェックインして夕食はいただけますか?」
初老の男性はニッコリ(という擬音が聞こえそうだ...)と微笑むと、
「ええ問題なくご用意できます。そちらの通路を右に進んでいただければ食堂です。左は宿泊棟となっております。こちらがルームキーです。すぐお食事になさいますか?」
「そうですね、すぐにいただきましょうか」
「それでは食堂のほうへどうぞ。係の者にルームキーをご提示頂ければ食事をご用意させていただきます。因みにそちら様はお食事なさいますか?」
ミネルヴァを見て尋ねてきた。
{残念ですがその機能は有りません}
「いえ必要ありません。お気遣いありがとうございます」
「承知いたしました。それではごゆっくりおくつろぎ下さい」
と言って腰を折る。……完璧な礼だ!まずこんな完璧な礼はなかなか見れない。たまたま入った宿だったが彼は何者なんだ?
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セバスチャン“仮”に(彼をそう言わずして誰をそう呼べというのか?)見送られて食堂に入る。
広さは30畳程、ウッドテーブルが並んだ落ち着いたスペースにまばらに人が座っていた。
「宿泊のお客様でしょうか?お食事のお客様でしょうか?」
グレーのワンピースにエプロンをした少女が声を掛けて来た。
「宿泊です。食事をお願いします」
「かしこまりました。ルームキーをお預かり致します」
「よろしくお願いします。彼女は一緒でも構いませんか?」
ミネルヴァに視線を向けて質問する。
「鳴いたり騒いだりしませんよね?なら問題ありません。それにとってもお利口そうなお顔です!」
{…}
苦笑しつつ…
「ええ、彼女はとても大人しいんです。誰にもご迷惑はお掛けしません」
会話しつつ彼女はルームキーのナンバープレートから何かを外した。恐らくは食堂の使用済みを表す何かだろう。
「キーをお返しいたします。彼女のお名前は何と仰るんですか?」
「ミネルヴァです」
「よろしく、ミネルヴァちゃん」
「ホウッ」
「答えてくれました!そちらの席にお座り下さい。すぐにお食事をお持ちします!」
なるほど、看板娘ってやつだな。……程なくして美味そうな料理が運ばれて来る。と、同時にミネルヴァから...
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