75 / 100
仕事の準備を怠らないのは・・・大人として当然ですよね? 75
しおりを挟む
第一章 七一話
ライモンドが説教台に登る。集音機には見覚えがない様だが拡声器になっているのは伝えてある。
「みんな、聞いてくれ。俺は自由業組合、組合長のライモンド・ブレナンだ」
大聖堂にいた領民達が一斉に彼に注目する。後ろの方にいた者達は多少声が届いて居ることを訝しんでいるが....殆どの者達が彼に注視している。
「このアルブレヒト大公領がアルバ地方と名を変えて随分経つ....その間、ここにいる皆があらゆる苦難を耐え忍んで来た事は....わざわざ俺に言われなくとも分かっているよな....」
そう言って彼は....一瞬目をつむり、目前の領民達にもう一度視線を向けた。
「....今更言っても詮無い事だが....大公殿下の次にここに来たジェロームのヤツは....ロクに領地を治めもせず、ギルムガンが攻めてきたらあっさり逃げ出しやがった!」
静かに話を聞いていた領民達はにわかにざわつく。どうも領主が逃げ出した事すら知らなかった領民もいた様子だ。確かに....情報伝達については、殆どが“口コミ”のこの世界ではムリもない。
「今回ギルムガンが来たのは....向こうに逃げ出せたアルバの民がギルムガンに働きかけてくれたからだ! 勿論ギルムガンにだって思惑はあるだろう! だからと言って俺たちの同朋を保護してくれた事には変わりないし、曲がりなりにもグラムを追い払ってくれた!」
そこで領民たちからヤジがとんだ。
「じゃあなんでギルムガンのヤツら国に帰っちまったんだ? 最後まで責任持ってくれよう!」
ライモンドがジロリとそちらに視線を向けたあと....更に大きな声をあげる!
「....いいのか? みんな! 本当にそれでいいのか? グラムのヤツらは庇護者を名乗るに値しない事を自ら証明した! ギルムガンは一時的に助けてはくれたがよその国の事に介入し続ける事は出来ない!! そして....俺達の敬愛していたアルブレヒト大公は俺達と俺達の子供達を守ろうとして命まで投げだされた!!!!! 」
ライモンドの叫びが大聖堂にこだまする。いつの間にか、ヤジを投げていた男達も息を飲んでライモンドの言葉に聞き入っていた。
「俺達は何をした? 俺達の....一人一人が非力な事は認めよう。だが! 俺達は俺達に出来る事を全てやったか? 違う筈だ!! 俺達には....まだやれる事が残ってるはずだ!」
ここまで殆ど何も口を挟まないで聞いていたが....ライモンドさんにはどうも“先導者”としての資質があるみたいだ。本人曰わく「トラブル処理係」などと宣っていたが、ギルドマスターを務めるだけはある。その証拠に....聞き入っていた領民達の中から少なからず賛同の声が上がり始めている。
「いいか! 俺は....何も無謀な戦いをしようってんじゃないんだ! 今が俺達に訪れた最初で最後の好機なんだ!! ギルムガンは何も全員が帰っちまった訳じゃない、俺達に賛同してギドルガモンを討伐した凄腕が残ってくれた!!」
ギドルガモン討伐の話が出た瞬間....驚きが領民達に広がって....アローナとグラブフットが講壇に上がると更にどよめく。まずアローナがマイクに進み出て....
「....私の母はグラム神聖国を追われて、ギルムガンに流れついたわ。それだけが理由じゃないけど落ち着ける故郷が脅かされる気持ちは....よーく知ってる!」
間髪入れずにグラブフットが、
「みんな後ろを見てくれ」
そう言ったのを合図に、大聖堂の入り口付近にギドルガモンの頭蓋骨を出現させる。後ろを振り向いた領民達は....もう、単純に驚愕する以外の事が出来なくなっている。
「見てくれれば分かると思うが....ギドルガモンは俺達が狩った。だが....これは俺達だけの力じゃぁない! ギドルガモンを打ち倒した力を出すにはここにいる皆の力を合わせなければならん! だが! ここにいる皆の魔力を合わせれば伝説の神獣を打ち倒す程の力を出すことが出来るという事だ! その証拠は....既に領都を囲む城壁を見れば分かるだろう!!」
ここで....グラブフットの頭上にスキルの応用で作った巨大スクリーンを展開して....瞬間的に城壁が出現する“動画”を流した。
正直....畳みかける『情報の洪水』に領民達はパンク寸前だろう....だが....素面の人間を“戦に駆り立てる”のは不可能だ....手段としては誉められた代物ではないが....可能な限り“士気”を高めて“その気”にさせなければならない....
動画が終わったタイミングで、再びライモンドがマイクの前に立ち....
「....俺が“今しかない!”と言った理由を分かって貰えたろうか? 俺は....このままゆっくりと死んでいく故郷をただ見ているのは我慢出来ないだけなんだ! 皆に無理を言っているのは分かってる。突然戦が始まって訳も分からず力を貸せと言われて戸惑っているだろう!! だが!! これは子供達に平穏な故郷を残す最後の機会なんだ!!」
そこで....最後に領民達の中から進み出た女性が、静かに向き直って領民達に素顔を晒した....
ライモンドが説教台に登る。集音機には見覚えがない様だが拡声器になっているのは伝えてある。
「みんな、聞いてくれ。俺は自由業組合、組合長のライモンド・ブレナンだ」
大聖堂にいた領民達が一斉に彼に注目する。後ろの方にいた者達は多少声が届いて居ることを訝しんでいるが....殆どの者達が彼に注視している。
「このアルブレヒト大公領がアルバ地方と名を変えて随分経つ....その間、ここにいる皆があらゆる苦難を耐え忍んで来た事は....わざわざ俺に言われなくとも分かっているよな....」
そう言って彼は....一瞬目をつむり、目前の領民達にもう一度視線を向けた。
「....今更言っても詮無い事だが....大公殿下の次にここに来たジェロームのヤツは....ロクに領地を治めもせず、ギルムガンが攻めてきたらあっさり逃げ出しやがった!」
静かに話を聞いていた領民達はにわかにざわつく。どうも領主が逃げ出した事すら知らなかった領民もいた様子だ。確かに....情報伝達については、殆どが“口コミ”のこの世界ではムリもない。
「今回ギルムガンが来たのは....向こうに逃げ出せたアルバの民がギルムガンに働きかけてくれたからだ! 勿論ギルムガンにだって思惑はあるだろう! だからと言って俺たちの同朋を保護してくれた事には変わりないし、曲がりなりにもグラムを追い払ってくれた!」
そこで領民たちからヤジがとんだ。
「じゃあなんでギルムガンのヤツら国に帰っちまったんだ? 最後まで責任持ってくれよう!」
ライモンドがジロリとそちらに視線を向けたあと....更に大きな声をあげる!
「....いいのか? みんな! 本当にそれでいいのか? グラムのヤツらは庇護者を名乗るに値しない事を自ら証明した! ギルムガンは一時的に助けてはくれたがよその国の事に介入し続ける事は出来ない!! そして....俺達の敬愛していたアルブレヒト大公は俺達と俺達の子供達を守ろうとして命まで投げだされた!!!!! 」
ライモンドの叫びが大聖堂にこだまする。いつの間にか、ヤジを投げていた男達も息を飲んでライモンドの言葉に聞き入っていた。
「俺達は何をした? 俺達の....一人一人が非力な事は認めよう。だが! 俺達は俺達に出来る事を全てやったか? 違う筈だ!! 俺達には....まだやれる事が残ってるはずだ!」
ここまで殆ど何も口を挟まないで聞いていたが....ライモンドさんにはどうも“先導者”としての資質があるみたいだ。本人曰わく「トラブル処理係」などと宣っていたが、ギルドマスターを務めるだけはある。その証拠に....聞き入っていた領民達の中から少なからず賛同の声が上がり始めている。
「いいか! 俺は....何も無謀な戦いをしようってんじゃないんだ! 今が俺達に訪れた最初で最後の好機なんだ!! ギルムガンは何も全員が帰っちまった訳じゃない、俺達に賛同してギドルガモンを討伐した凄腕が残ってくれた!!」
ギドルガモン討伐の話が出た瞬間....驚きが領民達に広がって....アローナとグラブフットが講壇に上がると更にどよめく。まずアローナがマイクに進み出て....
「....私の母はグラム神聖国を追われて、ギルムガンに流れついたわ。それだけが理由じゃないけど落ち着ける故郷が脅かされる気持ちは....よーく知ってる!」
間髪入れずにグラブフットが、
「みんな後ろを見てくれ」
そう言ったのを合図に、大聖堂の入り口付近にギドルガモンの頭蓋骨を出現させる。後ろを振り向いた領民達は....もう、単純に驚愕する以外の事が出来なくなっている。
「見てくれれば分かると思うが....ギドルガモンは俺達が狩った。だが....これは俺達だけの力じゃぁない! ギドルガモンを打ち倒した力を出すにはここにいる皆の力を合わせなければならん! だが! ここにいる皆の魔力を合わせれば伝説の神獣を打ち倒す程の力を出すことが出来るという事だ! その証拠は....既に領都を囲む城壁を見れば分かるだろう!!」
ここで....グラブフットの頭上にスキルの応用で作った巨大スクリーンを展開して....瞬間的に城壁が出現する“動画”を流した。
正直....畳みかける『情報の洪水』に領民達はパンク寸前だろう....だが....素面の人間を“戦に駆り立てる”のは不可能だ....手段としては誉められた代物ではないが....可能な限り“士気”を高めて“その気”にさせなければならない....
動画が終わったタイミングで、再びライモンドがマイクの前に立ち....
「....俺が“今しかない!”と言った理由を分かって貰えたろうか? 俺は....このままゆっくりと死んでいく故郷をただ見ているのは我慢出来ないだけなんだ! 皆に無理を言っているのは分かってる。突然戦が始まって訳も分からず力を貸せと言われて戸惑っているだろう!! だが!! これは子供達に平穏な故郷を残す最後の機会なんだ!!」
そこで....最後に領民達の中から進み出た女性が、静かに向き直って領民達に素顔を晒した....
0
あなたにおすすめの小説
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活
シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる