トランスファー “空間とか異次元とかってそんなに簡単なんですか?”

ajakaty

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仕事の準備を怠らないのは・・・大人として当然ですよね? 76

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     第一章  七二話

 静かに領民達の中から歩み出てきたマレーネ....いやマルグリットは、静かにその場を退いたライモンドに代わって説教台に立つと、おもむろにフードを下ろした。

「....?! えっ?」

「そんな...! でも? 確かに面影が?」

 説教台に近い領民達から....静かに、だが確実に波紋が広がっていく。彼女がということに気付いたのだろう。おそらく、当時の姿はまだあどけない少女であった筈だが、自然とその面影に亡きを見て取れれば....その素性に思い至るのも頷ける。

「皆様、私の事を既に承知している方も、そうでない方も、少しだけ話を聞いて下さい」

 マルグリットは、その佇まいと同様に静かに言葉を紡ぎ始めた....

「本来、。ですが....と思い至り、ここに立たせて頂きました」

 正直なところマルグリットが領民達の前に出る必要はない。もっとに言えば忘れている者の方が多いかも知れない。だが....この話し合いをすると決めた時、彼女は領民達に覚悟を促すのならば、には居られないと決めたのだ。

「皆さん、まずは謝罪させて頂きたく思います。わたくしと....そして父が不甲斐ないばかりに皆さんにはとてつもない苦労を背負わせてしまいました....本当に申し訳ありません」

 謝罪の言葉と同時に深々と頭を下げるマルグリットを見て....領民達は水を打ったように静まり返っている。

「本来ならば父が亡くなった時、私は皆さんのに立ち、。年若く、力無き事は理由になりません。私はを放棄してしまいました....」

 顔を上げたマルグリットは、眼前の領民達を真っ直ぐに見据えて....少し肩を震わせつつ言葉を続ける。

「事ここに至り、私には既に皆さんの盾となる力もありません。ですが、様々な巡り合わせを経て....“この時に領に居る事が叶った”以上は、。」

 静かにを語るマルグリットを前にして....領の中でもアルブレヒト大公に縁のあった者達だろうか....声も上げず、まばたきすら忘れて静かに涙する者達がそこかしこに現れた。

「“今ごろになって何を言ってる!”と思われる事は承知致しております。ですが....何卒、何卒お願い申し上げます!! どうか、私が共に在ることを許して下さい!!!」

 出来る限り抑揚を抑えて、静かに話していたマルグリットだったが、最後にはどうしても感情を押さえきれず少し声を震わせていた。

 マルグリットの言葉が途切れて....一分程も双方が沈黙していたが....その沈黙を破って一人の老人がマルグリットの前に進み出る。

「お嬢さん、。....だが、かつてこの領を治めておられたアルブレヒト大公は仰いました。『この土地は貧しい、だが土地が貧しいからといって、人が貧しいとは限らん。人の心、豊かなればこそまた土地も栄えん』と。あなたがならば....あなたは何ものにも代え難い我々の同朋です」

「....うっ うううっ あっ...りがとう..」

 一人の老人の言葉を受けて....それにマルグリットが答えた時、一瞬にして領民達に歓喜が広がっていった.....

ーーーーーーーーーー

 領民達の歓喜の姿を....後ろから眺めていた奏多の横に....静かにヴィルヘルムが話しかけてきた。珍しく、ほんの少しだけ目許が暖かくなっている。

「コーサカよ....改めて礼をいう。、アルブレヒト大公領は。この後、何が起きてもその誇りを失う事は無いだろう....」

「....らしくありませんね、ヴィルヘルムさん。なのはこれからだと、お分かりでしょう?」

 ヴィルヘルムがジロリと視線を奏多に向ける。

「ふん! 分かっている。だが我が言った事は

 ヴィルヘルムはそう言って.....その表情をいつもの顰めっ面に戻した。そして....やっと全てのお膳立てはそろった。

「さあ、後はグラムに

ーーーーーーーーーー

  

 一体何事なのだろう? 急にもの凄い変わり様だ。

〔又ちゃん? これってどういう事かしら?〕

〔俺にも初代以降、彼等に“原初の守護者ファーストブレイカー”が、どういう存在として伝わってるかまでは分からないよ。見たところ雷撃魔法、すなわちの操作が出来るという事で対象を認識する“”っぽいね〕

〔ええー....なんかイメージ的に“雷の魔法”くらいみんな使えそうなのに....〕

〔こちらの世界じゃ“電気”の概念が一般的じゃないからね。それよりの事、ほったらかしじゃ可哀想だよ〕

 あっ! そうだった....

「えっと...すいません。頭を上げて下さい。さっきの事はもういいですから」

 そう言った途端、“ガバッ”という音が聞こえてきそうなくらいの勢いで男が頭をあげる。

「有り難きお言葉! この老骨の首ならば後ほど如何様にも!」

「いえ!!! そんな物いりません!!! 」

 反射的に手を振って拒否する....なんで残念そうな顔するんだ? この人....

「はっ、誠に不調法でありました! してそれがしの前に現れて下さったのは何用でございましょうか? 某は....が初代の直系に当たる方とお見受けしましたが?」

「....えーと....まあその認識でけど、えっとあなた達は今からアルバ地方の反乱を鎮圧しようとしてるのよね?」

「はっ! 左様でございます!」

 なんかいちいち大仰ね....

「えっと....簡単に言うと....コッソリ付いていってもいいかしら?」

「はっ?」

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