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不測の事態への対処で仕事の出来は変わるってもんですよね? 99
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第一章 九五話
「あいつの個人的な能力は、基本的に物理攻撃のみでな。そもそも“魔法主体の対空攻撃手段”なんぞ持ち合わせちゃいないんだが...まぁ見てろ、あいつがあれをやるのは、サルバシオン首長連邦で八脚の神獣と対峙したとき以来だが...奴が“12枢機卿家筆頭”を務める理由が良く分かるぜ!」
ひざまついて両手を合わせるその姿は、敬虔で思慮深い信徒そのもので...これが聖堂の中ならばその姿は一枚の宗教画のごとき世界を醸し出したかもしれない。
だが...実際は巨大な怪獣が睥睨する傍なのだ。ともすれば状況に絶望した人間が神に縋りつく姿に見える。勿論“絶対の光を纏う者”とまで言われる男がそんな事は有り得ないだろうが...
「ヴィルヘルムさんがリンドブルムを召喚したので、メギラガロンの注意がそれていますが...あれではいつ踏みつぶされても...って、え?」
自分でも随分間の抜けた反応だったと思う。最初は見間違いかと思った。だが、次の瞬間にはハッキリと変化がモノクルに表示される。
クレオール卿の姿形は何も変わっていない。そう、姿形はだ...だが、明らかに先ほどとは違う。フルプレートアーマーを身に着けて跪いていたクレオール卿の姿が...じわじわと大きくなっているのだ。
最初は見分けがつかない程度に、大きくなるにつれてそのスピードは加速度的に増して...最後には、おそらくメギラガロンとのスケール差がほぼない程度まで巨大化してしまった!
「...僕は自分自身をこの世界の異物だと認識しているつもりでしたが...クレオール卿に比べれば、自分が随分と普通の人間だと実感しますね」
僕の反応を面白そうに眺めていたグラブフットを半目でにらみつける。
「出来れば、先ほどクレオール卿と対峙する前に教えておいて欲しかった能力ですよ...まったく」
「そう怒るなよ。あれはヤツの能力の中でも“既知者秘匿事項”に属する物でな、俺でも簡単に口にする訳にはいかねぇ類いのもんなんだよ。それにあの能力は基本的には“三柱の神獣”に関する戦闘以外じゃあ聖印が発動する。つまり、お前やグランヴィアとの件では発動しないのが解ってたのさ」
「...」
まぁグラブフットの立ち位置からすれば...知っている事を全て話す方がおかしいのか。
そしてこの場にはもう一人...グラブフット以上に立ち位置がよく分からない人物が居る。
「本当は私の仕事は、怪獣と戦う事じゃないんだけどなあ...」
そこには黒猫をつれた少女がいた。見た目は刀を一振り差している以外、この世界の標準的な旅装を纏った13~14歳に見える少女だが...この娘もまた捕らえたエルフとは別の意味で得体が知れない...
「もちろん無理強いはできませんが...」
「まぁ...とりあえず様子見だね。あの二人ならメギラガロンをかたづけちゃうかもしれないし」
カズミがそう言った時、今までこれといった動きを見せなかったメギラガロンが動いた。
今までは、揺らめく程度にしか動かしていなかった三対六枚の翼を広げ、大きく一つ...力強い羽ばたきを見せるとその巨体をふわりと浮かせた。
「な、まさか...」
完全に予想外だった。ヤツはこの場に居る者達すべてを無視して飛び去ろうとしている!
『させるか!』
既にメギラガロンよりも高所に位置していたヴィルヘルムとリンドヴルムが、背後に纏う竜巻を打ち放って牽制をかけるが...メギラガロンは巧みに三対の翼を羽ばたかせて迫り来る竜巻を全て避け、更に上昇しようと一際大きく翼を広げた...が、
『ふん!!』
僅かに動きを止めた隙を逃さずクレオール枢機卿がメギラガロンの両脚を掴み動きを封じようとする。
「なっ??!」
巨大化したクレオール卿の質量がどうなっているかは知らない...だが、その場で起こった事は、僕を含めたこの場に居る全員が理解出来なかった。いや、以前メギラガロンとの闘争において生き残ったランスロットは、その現象を把握したのかも知れないが...説明してくれるとはとても思えない。
メギラガロンはその場から更に上昇し、クレオール卿が掴んだ筈の脚はまるで幻の様にすり抜けてしまった。
{ミネルヴァ! 今の現象は? もしかしたら奴の姿は幻影なのか?}
{現在、急ピッチで映像を解析中です!}
{解析が終わり次第報告を頼む!}
{了解!}
流石ミネルヴァだが、解析が完了するまでヤツを放っておく訳にはいかない。
「グラブフットさん!! あなたの魔法なら...」
「まぁ、まてよ。あそこに居るのは世界中を見てもめったに居ない猛者達だぞ? そんな簡単に...ホレ見てみろ! やつら何か仕掛けるようだぞ!!」
そう言われて、飛び立とうとしているメギラガロンに慌てて視線を戻す...と、
『フランソワーズ!! やるぞ!!』
『了解いたしましたわ!』
二人の会話がモノクルを通して聞こえてくる。ちなみに、この音声はミネルヴァの能力で“こちらの陣営”の主要な人間全てに中継している。
指示をうけたフランソワーズ女史はクレオール枢機卿が差し伸べた右掌に飛び乗る。
その間、メギラガロンを挟んだ逆位置上空から、ヴィルヘルムが動いていた。彼からは直接見えては居ないだろうがドローンオウルを通してヤツの脚を捉え損なった事は伝わっている筈だ。
「どうやったかは知らんが...簡単に逃げられると思うなよ?!」
ヴィルヘルムが魔法の詠唱を始めると彼自身の内包する魔力に加え、竜巻となって蓄えられたリンドブルムの魔力が、混じりあい一つの巨大な積層型魔法陣を形成してゆく...
「...いと貴き者の理を宿さん!」
そして詠唱が終わった時...メギラガロンの周囲には、360°に渡ってドリルの如き形で回転しながら唸りをあげる竜巻が無数に浮遊していた。
「全方位同時に迫る瓦礫と竜巻の複合魔法だ! さあ、こいつをどうさばく? 伝説の神鳥の力を見せて貰おうか!」
その言葉と同時に周囲に浮遊していた竜巻が一斉にメギラガロンに殺到した。
「あいつの個人的な能力は、基本的に物理攻撃のみでな。そもそも“魔法主体の対空攻撃手段”なんぞ持ち合わせちゃいないんだが...まぁ見てろ、あいつがあれをやるのは、サルバシオン首長連邦で八脚の神獣と対峙したとき以来だが...奴が“12枢機卿家筆頭”を務める理由が良く分かるぜ!」
ひざまついて両手を合わせるその姿は、敬虔で思慮深い信徒そのもので...これが聖堂の中ならばその姿は一枚の宗教画のごとき世界を醸し出したかもしれない。
だが...実際は巨大な怪獣が睥睨する傍なのだ。ともすれば状況に絶望した人間が神に縋りつく姿に見える。勿論“絶対の光を纏う者”とまで言われる男がそんな事は有り得ないだろうが...
「ヴィルヘルムさんがリンドブルムを召喚したので、メギラガロンの注意がそれていますが...あれではいつ踏みつぶされても...って、え?」
自分でも随分間の抜けた反応だったと思う。最初は見間違いかと思った。だが、次の瞬間にはハッキリと変化がモノクルに表示される。
クレオール卿の姿形は何も変わっていない。そう、姿形はだ...だが、明らかに先ほどとは違う。フルプレートアーマーを身に着けて跪いていたクレオール卿の姿が...じわじわと大きくなっているのだ。
最初は見分けがつかない程度に、大きくなるにつれてそのスピードは加速度的に増して...最後には、おそらくメギラガロンとのスケール差がほぼない程度まで巨大化してしまった!
「...僕は自分自身をこの世界の異物だと認識しているつもりでしたが...クレオール卿に比べれば、自分が随分と普通の人間だと実感しますね」
僕の反応を面白そうに眺めていたグラブフットを半目でにらみつける。
「出来れば、先ほどクレオール卿と対峙する前に教えておいて欲しかった能力ですよ...まったく」
「そう怒るなよ。あれはヤツの能力の中でも“既知者秘匿事項”に属する物でな、俺でも簡単に口にする訳にはいかねぇ類いのもんなんだよ。それにあの能力は基本的には“三柱の神獣”に関する戦闘以外じゃあ聖印が発動する。つまり、お前やグランヴィアとの件では発動しないのが解ってたのさ」
「...」
まぁグラブフットの立ち位置からすれば...知っている事を全て話す方がおかしいのか。
そしてこの場にはもう一人...グラブフット以上に立ち位置がよく分からない人物が居る。
「本当は私の仕事は、怪獣と戦う事じゃないんだけどなあ...」
そこには黒猫をつれた少女がいた。見た目は刀を一振り差している以外、この世界の標準的な旅装を纏った13~14歳に見える少女だが...この娘もまた捕らえたエルフとは別の意味で得体が知れない...
「もちろん無理強いはできませんが...」
「まぁ...とりあえず様子見だね。あの二人ならメギラガロンをかたづけちゃうかもしれないし」
カズミがそう言った時、今までこれといった動きを見せなかったメギラガロンが動いた。
今までは、揺らめく程度にしか動かしていなかった三対六枚の翼を広げ、大きく一つ...力強い羽ばたきを見せるとその巨体をふわりと浮かせた。
「な、まさか...」
完全に予想外だった。ヤツはこの場に居る者達すべてを無視して飛び去ろうとしている!
『させるか!』
既にメギラガロンよりも高所に位置していたヴィルヘルムとリンドヴルムが、背後に纏う竜巻を打ち放って牽制をかけるが...メギラガロンは巧みに三対の翼を羽ばたかせて迫り来る竜巻を全て避け、更に上昇しようと一際大きく翼を広げた...が、
『ふん!!』
僅かに動きを止めた隙を逃さずクレオール枢機卿がメギラガロンの両脚を掴み動きを封じようとする。
「なっ??!」
巨大化したクレオール卿の質量がどうなっているかは知らない...だが、その場で起こった事は、僕を含めたこの場に居る全員が理解出来なかった。いや、以前メギラガロンとの闘争において生き残ったランスロットは、その現象を把握したのかも知れないが...説明してくれるとはとても思えない。
メギラガロンはその場から更に上昇し、クレオール卿が掴んだ筈の脚はまるで幻の様にすり抜けてしまった。
{ミネルヴァ! 今の現象は? もしかしたら奴の姿は幻影なのか?}
{現在、急ピッチで映像を解析中です!}
{解析が終わり次第報告を頼む!}
{了解!}
流石ミネルヴァだが、解析が完了するまでヤツを放っておく訳にはいかない。
「グラブフットさん!! あなたの魔法なら...」
「まぁ、まてよ。あそこに居るのは世界中を見てもめったに居ない猛者達だぞ? そんな簡単に...ホレ見てみろ! やつら何か仕掛けるようだぞ!!」
そう言われて、飛び立とうとしているメギラガロンに慌てて視線を戻す...と、
『フランソワーズ!! やるぞ!!』
『了解いたしましたわ!』
二人の会話がモノクルを通して聞こえてくる。ちなみに、この音声はミネルヴァの能力で“こちらの陣営”の主要な人間全てに中継している。
指示をうけたフランソワーズ女史はクレオール枢機卿が差し伸べた右掌に飛び乗る。
その間、メギラガロンを挟んだ逆位置上空から、ヴィルヘルムが動いていた。彼からは直接見えては居ないだろうがドローンオウルを通してヤツの脚を捉え損なった事は伝わっている筈だ。
「どうやったかは知らんが...簡単に逃げられると思うなよ?!」
ヴィルヘルムが魔法の詠唱を始めると彼自身の内包する魔力に加え、竜巻となって蓄えられたリンドブルムの魔力が、混じりあい一つの巨大な積層型魔法陣を形成してゆく...
「...いと貴き者の理を宿さん!」
そして詠唱が終わった時...メギラガロンの周囲には、360°に渡ってドリルの如き形で回転しながら唸りをあげる竜巻が無数に浮遊していた。
「全方位同時に迫る瓦礫と竜巻の複合魔法だ! さあ、こいつをどうさばく? 伝説の神鳥の力を見せて貰おうか!」
その言葉と同時に周囲に浮遊していた竜巻が一斉にメギラガロンに殺到した。
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