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魔法使えるらしいんですけど
しおりを挟む「あ、それは私も聞きたいです」
隣の黒髪ゆるふわ女は、キャピって効果音がついてるかのように可愛らしく手を上げた。
男達を睨み付ける〈美優〉とは違い、上目遣いで困り顔の〈美香〉ちゃんとやら。
恐らく馬鹿な男ならすぐ騙される、典型的なぶりっ子だろう。
「おぉお、そうですよね……! いきなりこんな所で驚かれましたよね……!」
「さぁ、お手をどうぞ。 状況をご説明致しますので場所を変えましょう」
「あ、ありがとう」
(あ、りょーかいでーす、コイツら馬鹿でしたー、おつかれさまでーす)
ただ立ち上がるだけなのに、わらわらと美香に集まるクソよわくそダサおっさん共。
「此方へどうぞ」とニコニコ鼻の下を伸ばしているが、誰一人美優の元へは来ようとしない、そもそも見ようともしない。
(どー見ても人手余ってんだろー、女1人にそんな要らなくねー?? てか来られても拒否だけどー)
結局自力で立ち上がり、エスコートされる美香の後ろを独りで付いていく美優。
何処かの部屋に通され、ぶりっ子美香はソファーに案内されたが、ギャルな美優は特に何も指示されず空いていた固い椅子に座った。
座ると脚を組むのが癖の美優だが、ちらりとも見ようとしなかった男共は生脚にだけはエロい視線を向けている。
勿論、「おい、見てんじゃねーよ」と一喝した。
「で、では……まず、この国はオーランド王国、魔法を得意とする国です。」
そう説明しだした偉そうなおっさん。
『魔法とかっつって、頭沸いちゃってんの?』と思ってしまった美優だが、その掌に光が灯ったものだから、何となくそうなのかと理解した。
まぁ美優が理解する前に「は?それガチ? 嘘じゃねーの??」と睨みつけたのだが……。
「本当です……! 嘘じゃありません……! 神に誓って、嘘はつきません……! どうか信じて下さい……!」と蛇に睨まれた蛙のようにビビるので、仕方無しに信じた次第だ。
(つか、いい歳したおっさんのくせにビビリ過ぎて逆に引くんですけど)
因みに美香の反応は、「えーー!! すごぉーーい!」である。
さて、
このおっさん達がふたりに(主に美香に)説明した内容を美優なりに訳すと、
ここはオーランド王国で、何年かに一度訪れる国の混乱とやらに必要な人間を、別の世界から喚んだけど、
何か呪文間違えたっぽくて、創造と破壊どっちも喚んじゃった!
ま、たぶん必要なのは美香ちゃんだけど、お前も一応保護観察しなきゃだし、
国の事とか勉強してもらわなきゃだから、一緒に学校行って。
まぁ、たぶん美香ちゃんしか要らないけど。
あ、あと帰る方法は混乱終わらなきゃ教えないから。
ま、別にお前は帰しても良いけど、美香ちゃん可哀想だから。
どうせ美香ちゃんしか要らないし。
的な感じでした。
「そうなんですね……、わたし、そんなすごい事……できるかなぁ……」
「勿論ですとも! 美香様なら出来ます!」
「私共が精一杯お手伝いさせて頂きますのでご心配なさらずとも大丈夫です!」
「そうですとも!」
「美香様の為なら!」
「えぇ! 美香様の為なら!」
(え? ミカミカうるさくね?なに?ピカ◯ュウなの?)
目の前で繰り広げられる茶番に、ただ首を傾げるしかない美優。
そもそも(勝手に喚んだくせに帰れないとかツラくねー?)と思うのだが、魔法が使えると聞き『それも悪くない』とポジティブに考えた。
ギャルはだいたいポジティブだ。
いつか元の世界に帰ったとき、魔法が使えるとなると、きっと自慢できる。
「うける、くそポッターw」とか言われるのだろう。
みんなの反応を考えると、少し楽しみだ。
「まだ不安ですけど……、皆さんも、それに美優さんも居るから……、大丈夫です、頑張ります! ね! 美優さんっ!」
頭の中で少々考え事をしていたら、キャピっと可愛くガッツポーズする美香に突然話し掛けられ、思わず「は?」と言ってしまったが、向けられた笑顔をピクリとも崩さない美香に、少しだけ恐怖を覚えた。
完璧な作り物はなかなかの狂気だ。
この女、かなり強いぞ。
まぁ何やかんやのそんな訳で、異世界でも学校に行くこととなった。
(ちょーダルいんですけどー)
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