本気で死のうとはしてないのでそんなに心配しないで下さい。ちょっ、近い! もっと離れてっ!

ぱっつんぱつお

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サプライズ?【アンドリュー視点】

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「ん! こっちもおいしい!」

 イーサンの“妻”が素直に溢す。
 にこにこケーキを頬張るエミリー嬢を、親友の私でさえ見たこと無いだらしない顔で眺めているイーサン。
 その様子を居心地悪そうに見ながら「なんで私まで……?」と小声で問うてくるリチャード。

 確かにリチャードにも付き合わせてしまって申し訳ないとは思うが、彼が居ることによってもっと面白くなるはずなのでもう暫し我慢してもらおうかな。

「そうだリチャード。お子さんは今いくつになったんだい?」
「へ? 娘ですか……? 娘はこの間3歳になりました」
「そうか、もう3歳かぁ。そりゃあもう言葉を喋る頃だよね。ついこの間会ったときは“おーじさまおーじさま”って私のことを覚えててさ」
「あはは、いやぁお恥ずかしい話で……娘は殿下のファンですからね。やっぱり幼くても王子様に憧れちゃうんですかね」
「へー! そうなんですか? 微笑ましぃ~~。私の妹もちっちゃいときは“おねーちゃんおねーちゃん”って可愛かったのになぁ」
「エミリー嬢の妹だってまだ中等部だろう? これから有り難さが分かるはずさ。だって君の妹だもの」
「そ、そうですかね……、そうだと良いんですけど」

 一国の王子である私に褒められ励まされるエミリー嬢に、複雑な表情で見守るイーサン。
 全く君ってば本当にいつからそんな男になったんだい。
 伯爵家の次男なんて大した責任も負わない立場だろうからって、昔はあんなにプレイボーイだったのに。
 のらりくらり女の子と遊んでばかりで。羨ましい青春時代だったよな。
 まさかそんな君が惹かれるが現れるなんて当時は思ってもみなかったよ。

「だけどエミリーさんだって最近結婚したんだから子供もあっという間じゃないのかい? 君たちの子ならきっと可愛いだろうねぇ」
「…………はい?」

 過去に思いを馳せているとリチャードが思惑通りに良き質問を投げ掛けている。
 危ない危ない。こんな面白い話、聞き逃すわけにはいかぬのだ。それで事が終われば直ぐにルイーザに自慢してやろう。
 昨日、彼女がエミリー嬢とお友達になったのよと報告してきたぐらいだからよっぽど気に入ったんだな。それも随分と珍しいもんだ。

 リチャードが発した言葉に、予想通りエミリー嬢は首を傾げている。
 イーサンやあのルイーザが夢中になるだけあって、魅力的なだと思う。商人気質で努力家で根気強くて、でも純朴で天然で、愛らしい人。

「え……っと? 結婚?? って、どなたのお話でしょうか??」
「いやいやエミリーさん、君達のことでしょう。他に居ないでしょ」
「…………は?」
「あーー! ゲッフンゴッフン! エミリー……! このマカロンも最高に美味しいなァ! 一つと言わず三つも四つもどうだい……!!?」
「…………ちょっと待ってイーサン。怪しすぎない? 何なのその態度。一体どういう話なの?」
「え、えーー??? 俺もヨクワカラナイんだけど……!?」

 惚け倒すイーサンに、リチャードも混乱している。
 それもそうだ。誰がいつこんな時代でキチンとした同意も無しで結婚するっていうんだ。まぁ婚約しているから同意してるようなものだけど。
 しかし口のうまさをイーサンは昔からこういうことに活かすんだから。もっと国のために活かしてほしいものだよ。

 ま、そんな責任感ある男だったらエミリー嬢と上手くいくわけ無いか。

「イーサンじゃ話になんないわ、リチャードさん!? 一体どういう意味なんですか!?」
「え、えぇ~? ど、どういう話も何も……君たち結婚したじゃないか……?」
「結婚なんてしてないですよ!!」
「あ、あー、エミリー、一回ちょっと、」
「イーサンは黙ってて!」
「け、結婚してないって言っても、役所にもサイン書いて出しただろう? 婚姻届……」
「サイン!? 婚姻届!?」
「指輪だってきちんとはめてるし……」
「指輪!!?」
「エミリー……あの……エミリー……」

 わなわな震えだすエミリー嬢と、冷や汗をダラダラ流すイーサン、それから頭が混乱しまくっているリチャードに、とうとう王子ともあろう私は我慢出来ずに吹き出してしまったのだった。
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