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【閑話】未亡の公爵夫人、若い男を婿に取る。
しおりを挟むカミラ・ベルゼット。
夫を五年前に亡くして、この広い公爵家にただ独り。
けれど今日から、若い男が住むこととなった。
ジャン・ロズワール、私の新しい夫。
公爵家に婿入りし、本日付でジャン・ベルゼットとなった。ハンサムで歳は二十も離れている。
これは契約結婚。私達の間に愛は無いし、彼を金で買ったようなもの。前の婚約者とは痴情の縺れで捨てられたらしい。
この国の宰相である小生意気なアイザックからの提案だった。
とある夜会で呼び出され、「可哀想な男をひとりもらってほしい」と提案されたときはついに、アイザックが私を選んだんだわ、なんて……馬鹿ね。
遊びはするが慎重で結婚しない男アイザック。歳も近いしお互いキチンとした大人だから、私の隣で落ち着いてくれると思ったのに。
アイザックならこんな私でも優しく接してくれて、それなりの夫婦関係を築けたでしょう。
なのにアイザックったら。腹が立つ男ね。自分も若い娘を捕まえて。
それになあに?
ジャンの婚約者だった女じゃない。それで浮気するヒモ男を私に貰えって?
普通なら怒るでしょうね。
……けれど。こんなオバさんがジャンみたいな二枚目と結婚出来ること自体、奇跡なのよ。誰も私なんかと結婚したくないでしょうから。
こんな……秩序に五月蝿いオバさんなんて。
金の為とはいえ嫌がらずに結婚してくれたんだもの。有難いと思わなくちゃ。
そう。
例え、身体でも心でも、愛し合うことはなくても。
「さあ着いたわよ。今日から貴方も公爵家の一員」
「わぁ……とても大きい屋敷ですね……」
「……本当に良かったの? もう戻れないけれど。貴方の住んでいた思い出の家だって使用人ごと私の弟に渡してしまって……」
「いいんです。どうせ、俺が持っていたってどうしようもないですから」
「そう……。あと畏まった喋り方ももう止めて。一応夫婦なのだから」
「はい、あ、えっと、うん……そうするよ」
聞いた通りに馬鹿で素直な男だわ。顔だけでも毎日眺められるのだからそれで十分かしら。大丈夫。それ以上は望まない。
「式も無事終わって挨拶もして、今日は疲れたでしょう。よくやってくれたわ」
「本当? 俺、社交ぐらいしか出来ないから……」
「そんなことないわよ。さ、お風呂に入って今夜はゆっくりおやすみなさい。分からない事があれば聞きに来ればいいわ。隣の部屋だから」
「ありがとう」
駄目な男なのに社交界で人気が落ちないのは顔もあるけどこうやってちゃんと御礼が言えるのよね。挨拶もきちんとするし、どこか憎めない。
本当なら、結婚して初めての夜は、身体を重ね男女の営みをするのだけど。重力に負けた身体になんて反応しないでしょう。ハッキリ言ってしまえば抱きたくないでしょうね。
プライドが高い、お高くとまって五月蝿い女だと陰で言われていることは知っている。
その通りよ。
私はプライドが高くてお高くとまって五月蝿い女。
当たり前じゃない。公爵家を背負った女がこの歳で安物なんて身につけられるものですか。汚く廃れた街で暮らせないし、いくら性的欲求が溜まっても男を買わない。私は性処理のためにお金を出すような卑しい人間ではないの。
今夜だってそうよ。
私のプライドの為に「疲れたでしょ」と理由を作って、ジャンを安心させ使用人は全員下がらせた。
初夜に何があったか知り得ない状況。
大丈夫。ジャンはセックスが好きな男。いつかメイドと何かあったって覚悟は出来てる。私は大人なの。それをサラリと流せるぐらい寛大なのよ。
だから大丈夫。
今夜も独り淋しく横になる。
若い男根は一体どんなだろうか。そう考えるだけで疼いてしまうけど、今夜は駄目よ。隣の部屋には彼が居るのだから。
ひとりで欲求を満たしているなんて知られたら、私のプライドが許さない。
我慢して我慢して、それでも想像してしまって。一時間は経った頃かしら。
──コンコン、と部屋にノックが響く。
使用人はもう下がらせたからジャンに違いない。何か困ったことでもあったかしら。
「どうしたの? 何か分からない事でも?」
「えっ、と……その…………。まだかなって……」
「何が?」
「何って、初夜だよ。いくら待っても来ないし呼ばれないから」
「え……?」
ネグリジェから覗く美しい体躯。お願いだからそんなもの私に見せないでよ。
本当に馬鹿な男ね。
遠回しに言ってあげたのに。ハッキリ言わなきゃ解らないのかしら。
「はぁ……別に無理して体を重ねる必要もないでしょ。私たち二十も離れてるのよ? 女を作るのも自由だって伝えたでしょう? それに今夜はゆっくりおやすみなさいって言ったでしょうに」
「そっ、そんな! ちゃんと我慢したのに!」
「っ、え、え……? 我慢、って……?」
「俺、アイビーに愛想尽かされちゃったから……俺だって学んだよ? だから我慢したのに。っ、ねぇ……! 本当にもう限界なんだよ……! お願い……!」
「な、なに、何言って……?」
両腕を強く掴まれググ、と押し付けられたモノ。久し振りに感じた熱と厭らしくそそる硬さ。
まさか彼は私を求めてるの?
金髪碧眼のハンサムな夫。下がった眉と押し付けられる下半身。
駄目……頭がおかしくなりそう。
「ね、お願い。エッチしよ? ね?」
「ッ……! そ、そこまで言うなら……っ、仕方ないわね……!」
可愛いお願いとは真逆の可愛げの無い了承を聞くなり、子供のようにニコリと笑って私をベッドに追いやる。
突き飛ばされる形で身体を投げると、荒っぽくネグリジェを脱いだジャン。そそり立つ男根に思わずゴクリと唾を飲む。
私の着ていたローブも雑に脱がされて、必死な様子が伺える。
違う。彼は私に反応しているんじゃないのよ。ただ我慢していたから発散したいだけ。勘違いしたら駄目。
それから少々乱暴にうつ伏せにされると愛撫もなしに腰を掴まれ、挿れられた。
「あああああっ……!?」
「ッあーー、そう、これだぁ……気持ちい……温かい……」
その瞬間──、強烈な電気が走る。
恥ずかしい。私ったら愛撫もなしに濡れてるの?
でも……ずっと、我慢して欲しかったもの。
「あああッ……!」
「ぐッ、ふ、ん……っ!」
激しく腰を揺らし欲望のままに突き上げる若い男。
勢いは衰えずものの数分で白濁の液が周囲に散らされた。訳が分からないまま兎に角息を整えていると、また硬くなった男根がグ、と押し込まれる。
「え!? あ!? なにッ……!? 今っ!」
「まだッ、足りない……!」
これが若さというものなのか。勢いは更に増し、五年以上振りの快感に身をよじらせてもまだ終わらない。
「ちょっと待っ……! 激しッ……!」
「むりっ、止まんない!!」
まるで狂った獣だわ。
二度目の絶頂は子宮の奥に注がれた。脈打つ感覚に震え、長らく愛の注がれなかった子宮で良かったと思う。閉経しかけたこんなものじゃあ妊娠なんてしないでしょう。そもそもそんな準備さえしてもいない。
はぁはぁ、と互いの荒い息が静まり返った深夜の屋敷に響いている。
続けて二度なんて初めてのことだった。
──なのに、まだムクムクと中で膨れ上がる彼。
「何で……ッ!? んあああッ!」
「あぁあ……中で出しちゃった……。あっ、んん……無理、お尻も太腿も大きい……気持ち良すぎて、俺っ、興奮してっ……収まんない……! どうしよう……!」
「えっ」
まさかこの子、私に、私の身体に興奮しているの……?
こんな、オバさんの身体に?
そう思うと、じわりと溢れてしまう。
「ね、これ、濡れてるの? 本当に? ローションも塗らず?」
「っ、そうよ……! 悪い!? 久し振りなんだから仕方ないでしょ!?」
「まさか! すごく嬉しい! ……アイビーは、いつも無理に濡らしてたから…………。分かってたけど俺のためにしてくれてると思うと、嬉しくてさ……っ、く、んッ!」
「ああんッ! ジャン……! 待ちなさいっ……! ちょっと……!」
アイビーさんはセックスに無理矢理付き合っていたのだろうか。
贅沢ねと思う反面、そりゃあアイザックも寝取りやすかったでしょう。
こんな風に腰を振るだけのセックスは、セックスとは言えないもの。
「待てないっ! 腰が勝手に動いちゃうんだ……!」
「あん! あん! ッ、ああっ! 分かったわ……! 今夜はもうっ、気が済むまで出しなさいッ……!」
「うん、うん……! ふ、うぅううっ! 気持ちいいよぉおお! カミラのナカ気持ちいぃい!」
「全く……! 仕方のない子ね……! ッ、あん、あ、あ……! はあぁあああん……ッ!!」
ああもう。
教えることが沢山あるわね。
アイザックには「貸し」が出来たと思ったけれど、「借り」だったかしら。
まあ御礼ぐらいは言ってあげてもいいかもね。
「はぁ……はぁ…………ああ、まだ収まんないよぉお」
「ええ!?」
こんなのは今夜だけよ。
明日からは、オバさんが優しく丁寧に教えてあげる。
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